ナタリー PowerPush - 曽我部恵一
パンクが教えてくれたこと
自分の中からこぼれ落ちた曲を歌う
──今、自分には才能がないと言いましたが、曽我部さんは膨大な数の名曲を作り出しているわけで、それはやっぱり才能あってこそなんじゃないですか。
いや、それは関係ないと思うよ。さっきも言ったけどみんな本当は多作なの。
──曲ができないとか詞が書けないとかそういうことは?
あるある、それはあるよ。スランプっていうか、ダメだなって感じのときもある。ただ俺は本当なんつうのかな、要するにフィルターがないから、例えばこれは今出すには早いでしょとか、これじゃ売れないでしょとか、そういうものも出してくからさ。ただそれだけな気がするんだよね。あとはやっぱり音楽が好きだし音楽しか社会との接点がないから、どんどん接点を持ちたいわけ。だから本当に歴史に残るような名曲ばかりを毎月出すってことだったらそれはすごいけど、俺の場合は本当にただこぼれ落ちてるだけっていうか……。
──名曲じゃない、普通の曲も発表してるということ?
全然出すよ。これ人が聴いてもいいと思わないでしょって思っても、でも自分から生まれた曲だよなって思って出すこともあるし歌うこともある。川の水が毎日流れていくように、自分の中から自然に歌が出てくる。そういうふうにしていきたいんだよね。
いい音楽ってなんなんだろう
──でも実際に曽我部さんはいいメロディを書くしいい歌詞を書きますよね。だからこんな多くのファンに支持されているんだと思います。その、自分の才能というものを曽我部さん自身はどういうふうに捉えてるんでしょうか?
あの、そこは正直ちょっとわかんなくて。いいメロディ、いい歌詞、いい歌、いい音楽ってなんなんだろうっていうのがもう本当に大きなテーマ。それがどんどんわかんなくなってる。
──難しいですね。
結局はその人がそこにいるかどうかだけだと思うんだ。例えば俺はDAFT PUNKの新しいアルバムを聴いて、すごくよくできたいい作品だと思ったの。でも自分にとってはそれ以上のものではない。よくできた音楽は探せばたぶんいっぱいあるけど、おれはその先にあるものしか求めてないんだよね。それはどうしようもなく自分に訴えてくるものっていうか、その人の存在っていうか。
──音楽に人間が出るということですか?
うん、音楽でも文章でもなんでもそうだと思うけど。
──それはミュージシャンとしての才能以前に、人間としての自分が試されてるということですよね。
そうかもね。その人が持ってるエネルギーみたいなものが大事なんだと思う。
──曽我部さんは自分のエネルギーを信じてますか?
信じてる。自分が生きてる証を音楽で残したい、それをなんとか出したいなって思ってやってるよ。だから「いい曲ですね」って言われても「いや、そういうことじゃないんだよ」っていうのはあってさ。なんなんだろうね。
技術が邪魔になる
──「よくできたいい曲」というだけじゃ満足できないということですか?
ライブとかもそうだけどさ、いい演奏ができて盛り上がればOKかっていうと、そういうんでもなくて、どうしようもなく頭にこびりついてるシーンとか言葉とか、そういうものが大事なんだと思ってる。
──それは一般的な商業音楽の基準とは違うものですよね。破綻していたとしても人の心を動かすもののほうがいいということ?
うん、その人の中からどうしようもなく出てきちゃったもの。そういう音楽を聴きたいなと思うし、そういうものを作りたいと思う。だから手とか頭で作れるものはとりあえずもういいから、その先をやりたいんだよね。
──手や頭を使う技術自体はやっているうちに向上していきますよね。
そう、やればやるほど磨かれてくる。でもそれはすごく邪魔になるね。ときどきね。
──あ、そういうものなんですね。そうなったときはどうするんですか?
そうなったらできないことをやる。ラップやってみたりとか。できないことをやるのが大事。できるようになったらもうつまんないね。そこには「よくできました」しかないじゃん。
──そもそも100点満点を求めているわけじゃないと。
そうそう。100点満点なんてとらなくていいの。だからこないだも子供の運動会に行ったんだけどさ、リレーとか見ててもビリのやつが一生懸命走ってるときのエネルギーっていうか、あの凝縮された感情とか生きる力っていうか、とにかくその力っていうのが大事なんだよね。別に一番だろうがビリだろうが関係ない。ビリのほうが輝いてたりするからね。速く走れたかどうかはどうでもよくて、自分はああいう顔で毎日生きられてるかなって思った。
──そういう考え方は昔からですか?
昔とはちょっと違うな。昔はもっとピュアに「いい音楽を作りたい」って思ってた。狭い考え方をしてたというか。それがずっとやってるうちに「じゃあいい音楽ってなんなの?」とか、そういうのを考えるようになってきて。考えずにやってた若い頃も、それはそれでよかったんだけどね。だってそのリレー走ってる小学生だって、別に自分が輝いてると思ってやってるわけじゃない。ただやってるだけだしね。
- 曽我部恵一 ベストアルバム「曽我部恵一 BEST 2001-2013」 / 2013年6月26日発売 / 3000円 / ROSE Records / ROSE 155
 - 曽我部恵一 ベストアルバム「曽我部恵一 BEST 2001-2013」
 
DISC 1
- ギター
 - 瞬間と永遠
 - 恋人たちのロック
 - おとなになんかならないで
 - 女たち
 - キラキラ!
 - 抱きしめられたい
 - 浜辺
 - シモーヌ
 - 満員電車は走る
 - 魔法のバスに乗って
 - 東京 2006 冬
 - 春の嵐
 - LOVE-SICK
 - おかえり
 
DISC 2
- サマー・シンフォニー Ver.2 feat. PSG
 - テレフォン・ラブ Single version
 - ほし TRAKS BOYS remix
 - ロックンロール TOFUBEATS remix
 - 世界のニュース -light of the world!!-
 - カフェインの女王(TSUCHIE feat. 曽我部恵一)
 - イパネマの娘
 - ぼくたちの夏休み
 - スウィング時代 DJ YOGURT & KOYAS remix
 - White Tipi SUGIURUMN house mission mix
 - クリスマスにほしいもの
 - トーキョー・コーリング Studio live version
 - STARS
 - ジムノペディ
 - サマー・シンフォニー
 
- サニーデイ・サービス ベストアルバム「サニーデイ・サービス BEST 1995-2000」/ 2013年6月26日発売 / 3500円 / MIDI / MDCL-1538~39
 - サニーデイ・サービス ベストアルバム「サニーデイ・サービス BEST 1995-2000」
 
DISC 1
- 恋におちたら
 - 雨の土曜日
 - 恋はいつも
 - スロウライダー
 - あじさい
 - 青春狂走曲
 - いつもだれかに
 - シルバー・スター
 - baby blue
 - さよなら!街の恋人たち
 - サマー・ソルジャー
 - 白い恋人
 - 夜のメロディ
 - NOW
 - 若者たち
 
DISC 2
- サマー・ソルジャー(2000.12.14 @新宿リキッドルーム 解散ライブ)
 - 花咲くころ
 - 恋人の部屋
 - あの花と太陽と
 - 魔法(Carnival mix)
 - 真昼のできごと(Unreleased version)
 - 96粒の涙(Alt. version)
 - 何処へ?
 - Somebody's watching you
 - ここで逢いましょう
 - 成長するってこと
 - からっぽの朝のブルース
 - 土曜日と日曜日
 - 恋におちたら(AG version)
 - いつもだれかに(1996.4.24 @渋谷クラブクアトロ 公式デビューライブ)
 
曽我部恵一(そかべけいいち)

1971年生まれ、香川県出身のシンガーソングライター。1990年代からサニーデイ・サービスの中心人物として活躍し、バンド解散後の2001年からソロアーティストとしての活動を開始する。精力的なライブ活動と作品リリースを続け、客演やプロデュースワークなども多数。現在は曽我部恵一BAND、および再結成したサニーデイ・サービスのメンバーとしても活動しており、フォーキーでポップなサウンドとパワフルなロックナンバーが多くの音楽ファンから愛され続けている。2004年からは自主レーベル「ROSE RECORDS」を設立し、自身の作品を含むさまざまなアイテムをリリースしている。3児の父。
サニーデイ・サービス

曽我部恵一(Vo, G)、田中貴(B)、丸山晴茂(Dr)からなるロックバンド。1994年にミニアルバム「星空のドライブep」でデビューし、1995年には1stアルバム「若者たち」をリリース。フォーキーなロックサウンドと文学的な世界観が音楽ファンの間で好評を博す。その後も「東京」「愛と笑いの夜」「サニーデイ・サービス」「24時」「MUGEN」など名作を連発。2000年のシングル「魔法」ではSUGIURUMNを共同プロデューサーに迎えるなど新たな挑戦にも積極的だったが、同年12月に解散。その後メンバーはそれぞれの道を歩んでいたが、2008年8月に「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2008 in EZO」で再結成を果たす。2010年4月には、9年ぶりのオリジナルアルバム「本日は晴天なり」をリリースし、多くのリスナーを喜ばせた。





