ナタリー PowerPush - 曽我部恵一
パンクが教えてくれたこと
今日作った曲を今日歌いたい
──このタイミングで改めて曽我部恵一関連作品のディスコグラフィを眺めてみたんですけど、アイテム数がものすごく多いですよね。
多いよね。
──サニーデイ、ソロ、ソカバン、ランデヴーバンド。そのほかにトリビュートアルバムやコンピレーションへの参加、ライブ作品も弾き語りやバンドなどさまざまな形態があって。これほど幅広いカタログを持っているアーティストは今の日本でほかにあんまり例がないと思うんです。どうしてそんなに作るのか。こんなに作ってどうしたいのか……。
いや、まあどうしたいってこともなくてさ。
──はい(笑)。
俺は正直ほかの人たちが少なすぎると思うの。で、それはなぜかというと、いろんなしがらみがあるからなのよ。歌い手は本当だったら今日作った曲は今日歌いたいと思うはずなんだよね。普通はそれを周りの大人が整理してくれる。でもそういう環境とかシステムとかが俺にはないから結果としてこうなってて、でも俺はそれでいいんじゃないかと思うわけ。
──その結果、曽我部恵一かフランク・ザッパかぐらいの膨大な楽曲が世に出ることになると。
90年代頃まではミュージシャンの活動の指標としてアルバムっていうものがあって、それに向けてビジネスとして整理するっていうのがあったと思うんだよね。そういうのは今ないじゃん。「SoundCloudに上げました」とかそういう感じでもやれるし。それと一緒じゃないかな。
思いっきり自由にわがままに
──曽我部さんの場合はネットを使う一方で、アナログをたくさん出したりもしてますよね。
アナログはけっこう大変なんだけどね。作るのに時間かかるし、儲からないし。でもまあやっぱり自分が欲しいもの、「俺これ聴きたい」ってものをとりあえず出しておきたくて。
──それは限りなく趣味に近い話ですよね。
うん(笑)。まあ趣味だよ、趣味。
──音楽は趣味?
趣味だけど……でもこれでメシ食ってるし、常にお客さんと勝負してるっていう気持ちはある。プロとしての意地っていうか。だから俺がちょっとでもお客さんにおもねって「これどうですか? こういうの好きですよね、皆さん」って言ったら「お前違うだろ」って言われると思うの。だから思いっきり自由にやってたいし、わがままにやっていきたい。
──自分がやりたいことをひたすらにやる?
うん、楽しいからやるとか喜ばれるからやるとかじゃなくて、俺は自分が本当にやりたいことをやりたいだけなんだよね。
──でも本当にやりたいことをやったらそれがまったく受け入れられず、全然売れない人もいると思うんです。でも曽我部さんはそうじゃない。
ラッキーだよね。俺は自分の能力以上にお客さんがいてくれるって思ってる。ほかの人の曲とか聴くと、やっぱりすごいなって思うことがいっぱいあるし、自分はまだまだだなって感じが強い。とにかくがんばんなきゃっていうのはいつも思ってるよ。
ただ数をこなしていくことの意味
──曽我部さんは音源制作と同時に、ものすごい数のライブもやっていますよね。
今は家のこととかもあるから、これでもけっこう断ってるんだけどね。あの頃、年に100本、150本とかやってたのはさ、やっぱり体力つけるためっていうのがまず1つあって。
──体力?
歌に対する体力っていうか。とにかく歌わないとしょうがないでしょみたいな思いでやってた。今みたいに本数少なくして1本の濃度を上げるっていうのもすごく大事だけど、ただ数をこなしていくっていうのも意味がある気がするんだよね。そこで得られるものってやっぱあるんだよ。
──場数を踏むことによって?
そう、自分としてはあんまり自分に才能を感じないから、とにかくなんか上げたいわけ。自分の体力というか、その力を磨きたいわけ。それにはやっぱりまず場数でしょうって。で、そこでなんか得たような気はする。何を?って言われてもわかんないけど何かがある。
──身体面だけの話じゃないんですね。
うん。毎日お客の顔見て歌ってたら、お客ってなんだろう、歌うってなんだろうって考えるから。そういうところから自分が見えてくるっていうかさ、自分のやり方ができてくるんだろうね。毎日やるっていうのが本当に大事なことだと思う。
- 曽我部恵一 ベストアルバム「曽我部恵一 BEST 2001-2013」 / 2013年6月26日発売 / 3000円 / ROSE Records / ROSE 155
 - 曽我部恵一 ベストアルバム「曽我部恵一 BEST 2001-2013」
 
DISC 1
- ギター
 - 瞬間と永遠
 - 恋人たちのロック
 - おとなになんかならないで
 - 女たち
 - キラキラ!
 - 抱きしめられたい
 - 浜辺
 - シモーヌ
 - 満員電車は走る
 - 魔法のバスに乗って
 - 東京 2006 冬
 - 春の嵐
 - LOVE-SICK
 - おかえり
 
DISC 2
- サマー・シンフォニー Ver.2 feat. PSG
 - テレフォン・ラブ Single version
 - ほし TRAKS BOYS remix
 - ロックンロール TOFUBEATS remix
 - 世界のニュース -light of the world!!-
 - カフェインの女王(TSUCHIE feat. 曽我部恵一)
 - イパネマの娘
 - ぼくたちの夏休み
 - スウィング時代 DJ YOGURT & KOYAS remix
 - White Tipi SUGIURUMN house mission mix
 - クリスマスにほしいもの
 - トーキョー・コーリング Studio live version
 - STARS
 - ジムノペディ
 - サマー・シンフォニー
 
- サニーデイ・サービス ベストアルバム「サニーデイ・サービス BEST 1995-2000」/ 2013年6月26日発売 / 3500円 / MIDI / MDCL-1538~39
 - サニーデイ・サービス ベストアルバム「サニーデイ・サービス BEST 1995-2000」
 
DISC 1
- 恋におちたら
 - 雨の土曜日
 - 恋はいつも
 - スロウライダー
 - あじさい
 - 青春狂走曲
 - いつもだれかに
 - シルバー・スター
 - baby blue
 - さよなら!街の恋人たち
 - サマー・ソルジャー
 - 白い恋人
 - 夜のメロディ
 - NOW
 - 若者たち
 
DISC 2
- サマー・ソルジャー(2000.12.14 @新宿リキッドルーム 解散ライブ)
 - 花咲くころ
 - 恋人の部屋
 - あの花と太陽と
 - 魔法(Carnival mix)
 - 真昼のできごと(Unreleased version)
 - 96粒の涙(Alt. version)
 - 何処へ?
 - Somebody's watching you
 - ここで逢いましょう
 - 成長するってこと
 - からっぽの朝のブルース
 - 土曜日と日曜日
 - 恋におちたら(AG version)
 - いつもだれかに(1996.4.24 @渋谷クラブクアトロ 公式デビューライブ)
 
曽我部恵一(そかべけいいち)

1971年生まれ、香川県出身のシンガーソングライター。1990年代からサニーデイ・サービスの中心人物として活躍し、バンド解散後の2001年からソロアーティストとしての活動を開始する。精力的なライブ活動と作品リリースを続け、客演やプロデュースワークなども多数。現在は曽我部恵一BAND、および再結成したサニーデイ・サービスのメンバーとしても活動しており、フォーキーでポップなサウンドとパワフルなロックナンバーが多くの音楽ファンから愛され続けている。2004年からは自主レーベル「ROSE RECORDS」を設立し、自身の作品を含むさまざまなアイテムをリリースしている。3児の父。
サニーデイ・サービス

曽我部恵一(Vo, G)、田中貴(B)、丸山晴茂(Dr)からなるロックバンド。1994年にミニアルバム「星空のドライブep」でデビューし、1995年には1stアルバム「若者たち」をリリース。フォーキーなロックサウンドと文学的な世界観が音楽ファンの間で好評を博す。その後も「東京」「愛と笑いの夜」「サニーデイ・サービス」「24時」「MUGEN」など名作を連発。2000年のシングル「魔法」ではSUGIURUMNを共同プロデューサーに迎えるなど新たな挑戦にも積極的だったが、同年12月に解散。その後メンバーはそれぞれの道を歩んでいたが、2008年8月に「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2008 in EZO」で再結成を果たす。2010年4月には、9年ぶりのオリジナルアルバム「本日は晴天なり」をリリースし、多くのリスナーを喜ばせた。





