ナタリー PowerPush - 曽我部恵一
パンクが教えてくれたこと
パンクかどうか、自由かどうか
──曽我部さんが活動していく上での指針とかポリシーみたいなものはありますか?
ああ、それで言うと自分にとってパンクかどうかっていうのはすごく大きくて。
──ロックじゃなくてパンク?
うん。パンクかどうか。そこはもう変わらずにあるね。俺にとってはピストルズが絶対で。仕事場にも自宅にもピストルズのポスター貼ってあるし(笑)、ピストルズが教えてくれたことが全部だね。
──パンクのどこに共鳴したんですか?
パンクもそうだし、ピカソとか岡本太郎とかも清志郎さんもそうなんだけど、とにかく自由だっていうこと。誰だって自由だ、お前はお前だっていうことをピストルズは言ってたと思うんだ。だから誰かが気に入ってくれるから歌うとかじゃない。100人いたら100人に反対されてもお前の意見を言え、お前の歌を歌えっていうことだよね。それしかない。だからみんなが揃って「いい曲ですね。泣けました」なんて言うのは、俺はもし自分がそう言われたら「ちょっと勘弁してよ」ってなるわけ。
──「歌うまいですね」とか?
うん、それもそう。昔、地元にいたときにTHE BLUE HEARTSのライブに行って、田舎のパンクスだった俺らが市民会館の後ろで暴れてたらさ、ヒロトがMCで「お前ら踊るんだったら自分のダンスをやれ」って言ったんだよね。パンクってそういうことだと思うんだよ。
──その感覚が一貫して曽我部さんの中にあるんですね。
だから今の時代は自由がなくなってきてる気がして、俺はすごい閉塞感があるんだよね。ヌケが悪いというか、音楽がある基準にとらわれて、この範疇の中でやっていきましょうっていう暗黙の了解ができてる気がして。でも本当は何を歌ってもいいわけ。こないだ清志郎さんのイベントがあって、また清志郎さんの歌を聴きなおしてたんだけど、やっぱり悲しくなるぐらいに自由なんだよね。とにかく自分が思ったことを歌う。それが爆発するエネルギーとなってこっちに伝わってくる。
──なるほど。ただ曽我部さんの根っこにそういう姿勢があるのはよくわかるんですが、活動の中では“いい歌を歌い上げる”場面もありますよね。弾き語りやランデヴーバンドで、それこそ「いい歌ですね」と言われるようなしっとりした面も見せているわけで。
うーん、そうかなあ? たとえいい歌を歌い上げるときでも、やっぱりもうなんか心が裏返しになってるみたいなところを見せたいと思ってやってるけどね。俺がやりたいのはそういうもの。この人危ないなって思われるくらいのがいい。だからいわゆる上手な歌い手さんとは全然違うと思うよ。ずっとやってると自分なりの歌い方みたいなのはできてきちゃうから、そういうのも壊していきたいなって思うしね。
自分のことを一生懸命やるだけ
──最後に今後のことについても聞きたいんですが、展望とか目標とかそういったものは?
ないね。全然。
──なさそうですよね(笑)。
わかんないよね。例えば自分の個人的な、夏休みまでに身体焼きたいとかそういう目標はあるかもしれないけど、音楽とか人生の展望っていうのはまあ無理だよね。
──はい(笑)。
やっぱり自分らしくやって、ヘンに目標を課したり大きく見せたりとかはしないほうがいいよね。でも世の中には勝ち組負け組みたいな言葉もあるし、普通にその感覚が定着してるじゃん。そこに入っちゃわないようにしたい。あ、でも長生きしたいなっていうのはあるかな。いつ死んでもいいって思うような時期もあったけど、最近は死にたくないって思ってる。楽しいこともあるだろうし。
──先輩ロッカーたちもまだまだ現役ですしね。
エンケン(遠藤賢司)さんとか見てると、絶対負けたくないなって思うからね。でも年に1回くらい一緒にライブやらせてもらうんだけど、絶対負けるわけ(笑)。もう悔しくてね。ああいうお手本になる先輩がいるっていうのは本当にありがたいと思う。(鈴木)慶一さんとかもそうだしね。どこまでいっても追いつけないけど、大先輩に負けたくねえな、ちくしょうっていう気持ちはあります。そのためには自分のことを一生懸命やるだけだなって思ってる。
──じゃあまだまだやり続ける?
やっぱり歳をとると知識も経験も増えて、いつまでもガキだぜみたいな態度はできなくなるでしょ。疲れちゃってやることもなくなっちゃって、でも燃やすものがなんかある。命があるからね。それだけあれば今もやれるし、これからもやっていけると思ってます。
- 曽我部恵一 ベストアルバム「曽我部恵一 BEST 2001-2013」 / 2013年6月26日発売 / 3000円 / ROSE Records / ROSE 155
- 曽我部恵一 ベストアルバム「曽我部恵一 BEST 2001-2013」
DISC 1
- ギター
- 瞬間と永遠
- 恋人たちのロック
- おとなになんかならないで
- 女たち
- キラキラ!
- 抱きしめられたい
- 浜辺
- シモーヌ
- 満員電車は走る
- 魔法のバスに乗って
- 東京 2006 冬
- 春の嵐
- LOVE-SICK
- おかえり
DISC 2
- サマー・シンフォニー Ver.2 feat. PSG
- テレフォン・ラブ Single version
- ほし TRAKS BOYS remix
- ロックンロール TOFUBEATS remix
- 世界のニュース -light of the world!!-
- カフェインの女王(TSUCHIE feat. 曽我部恵一)
- イパネマの娘
- ぼくたちの夏休み
- スウィング時代 DJ YOGURT & KOYAS remix
- White Tipi SUGIURUMN house mission mix
- クリスマスにほしいもの
- トーキョー・コーリング Studio live version
- STARS
- ジムノペディ
- サマー・シンフォニー
- サニーデイ・サービス ベストアルバム「サニーデイ・サービス BEST 1995-2000」/ 2013年6月26日発売 / 3500円 / MIDI / MDCL-1538~39
- サニーデイ・サービス ベストアルバム「サニーデイ・サービス BEST 1995-2000」
DISC 1
- 恋におちたら
- 雨の土曜日
- 恋はいつも
- スロウライダー
- あじさい
- 青春狂走曲
- いつもだれかに
- シルバー・スター
- baby blue
- さよなら!街の恋人たち
- サマー・ソルジャー
- 白い恋人
- 夜のメロディ
- NOW
- 若者たち
DISC 2
- サマー・ソルジャー(2000.12.14 @新宿リキッドルーム 解散ライブ)
- 花咲くころ
- 恋人の部屋
- あの花と太陽と
- 魔法(Carnival mix)
- 真昼のできごと(Unreleased version)
- 96粒の涙(Alt. version)
- 何処へ?
- Somebody's watching you
- ここで逢いましょう
- 成長するってこと
- からっぽの朝のブルース
- 土曜日と日曜日
- 恋におちたら(AG version)
- いつもだれかに(1996.4.24 @渋谷クラブクアトロ 公式デビューライブ)
曽我部恵一(そかべけいいち)
1971年生まれ、香川県出身のシンガーソングライター。1990年代からサニーデイ・サービスの中心人物として活躍し、バンド解散後の2001年からソロアーティストとしての活動を開始する。精力的なライブ活動と作品リリースを続け、客演やプロデュースワークなども多数。現在は曽我部恵一BAND、および再結成したサニーデイ・サービスのメンバーとしても活動しており、フォーキーでポップなサウンドとパワフルなロックナンバーが多くの音楽ファンから愛され続けている。2004年からは自主レーベル「ROSE RECORDS」を設立し、自身の作品を含むさまざまなアイテムをリリースしている。3児の父。
サニーデイ・サービス
曽我部恵一(Vo, G)、田中貴(B)、丸山晴茂(Dr)からなるロックバンド。1994年にミニアルバム「星空のドライブep」でデビューし、1995年には1stアルバム「若者たち」をリリース。フォーキーなロックサウンドと文学的な世界観が音楽ファンの間で好評を博す。その後も「東京」「愛と笑いの夜」「サニーデイ・サービス」「24時」「MUGEN」など名作を連発。2000年のシングル「魔法」ではSUGIURUMNを共同プロデューサーに迎えるなど新たな挑戦にも積極的だったが、同年12月に解散。その後メンバーはそれぞれの道を歩んでいたが、2008年8月に「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2008 in EZO」で再結成を果たす。2010年4月には、9年ぶりのオリジナルアルバム「本日は晴天なり」をリリースし、多くのリスナーを喜ばせた。