モーニング娘。譜久村聖×スカパー!|卒業記念特集、13年間ハロプロと歩み続けた軌跡を振り返る (2/2)

“体力おばけ”の凄味を見せたフェス出演

2017年以降は、工藤遥、尾形春水、飯窪春菜……と後輩の卒業を次々に経験。20代に突入した譜久村も、2017年頃から自分の将来について考え始めるようになったという。しかし同時に、リーダーとしての立場にもやっと余裕が生まれ始め、彼女の中にグループとしてやってみたいことがどんどん湧き上がっていった。

「後輩に託すことも大事だと思いながら、まだまだみんなといろんなことを経験したいと思っていました。2016年頃はまだスキル面に関して不安があって、『全体のパフォーマンス力を上げていかないと』って常にメンバーと話していたんですが、17、18、19あたりで、自信が持てるようになってきたんです。自分のこともそんなに嫌いじゃなくなった。(モーニング娘。が2017年に)20周年を迎えたぐらいから、ポジティブになれましたね」

「モーニング娘。‘23譜久村聖卒業特番~人生(モーニング娘。)って素晴らしい~」より。

「モーニング娘。‘23譜久村聖卒業特番~人生(モーニング娘。)って素晴らしい~」より。

この頃の大きなトピックと言えば、グループの名前が“体力おばけ”という異名とともに広まったことだろう。モーニング娘。は2018年に「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」に初出演すると、炎天下でMCをほぼ挟まずに40分間にわたり圧倒的なスタミナで激しいパフォーマンスを披露。ハロプロファン以外から大きな注目を浴びたのだ。モーニング娘。のツアーにおいては2013年から、冒頭の7、8曲をぶっ通しでパフォーマンスする流れが生まれていたため、本人たちにとってはあくまで“いつも通り”のステージであったのだが、彼女たちの真価がライブにあることを広く知らしめた瞬間だった。

譜久村にとっても夏フェスは大きな出来事だったようで、「リーダーとしてではなく、パフォーマンスする立場として印象的だったライブやイベント」を尋ねると、翌2019年の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」をピックアップ。「私はステージ上ではいつも、リーダーとしてというよりは、譜久村聖として立っている気持ちなんです」と前置きしたうえで、こう語ってくれた。

「唯一自分を何も隠さずアピールできる場所がライブなんですが、2019年のロッキンのステージは、すごくはっちゃけていたと思います。2018年に初めて出演させてもらったときは体力が追いつかなくて、熱中症みたいな状態になっちゃったんですね。それが悔しくて、1年間筋トレをやり続けて。体力もついてバテなくなった状態で迎えた2019年は、ベストパフォーマンスだったと思います!」

しかし2020年にコロナ禍に突入すると、そんなモーニング娘。の活動の核であるライブが思うように行えない状況に。春のツアー「モーニング娘。'20コンサートツアー春~MOMM~」は開催中止となり、3月のハロプロ合同イベント「Hello! Project ひなフェス 2020」は無観客の生中継イベントとして開催された。譜久村はこの「ひなフェス」を「中継になってしまったんですけど、楽しみにしてくれる人がいるからこそいつも通りの『ひなフェス』を見せないといけないと思っていたんです。そのときに自分なりに届けられた感触があって。私の中ではすごく気に入っているライブです」と振り返っている。

2020年はエンタメ業界全体において多くの有観客ライブの開催が見送られたが、ハロー!プロジェクトは一切の発声を禁止するなど対策を徹底し、総勢52名がJ-POPのバラード曲を披露する全国ツアー「Hello! Project 2020 Summer COVERS ~The Ballad~」全36公演を成功させた。アンジュルムを卒業した和田彩花の後を継ぎ、2019年からハロー!プロジェクト全体のリーダーも担っていた譜久村は、初日のステージで「人生で一番!?ってぐらい緊張しました。ですが、開演してホールに出て行ったときは、素直にコンサートができるのがうれしいという気持ちで、皆さんの顔を見てウルっときました」と安堵したように語っていた。

「Hello! Project 2020 Summer COVERS ~The Ballad~」の様子。

「Hello! Project 2020 Summer COVERS ~The Ballad~」の様子。

夢見ることが終わったら続けられなかった

実は2020年に、グループ卒業の意志を申し出ていたという譜久村。事務所からは「まずは個人活動も並行して行ってみては」と提案があったそうで、彼女もこれを受け入れ、ハロー!プロジェクトが25周年を迎える2023年までグループを見守ることを決断する。個人活動の第一歩として、2021年にはKANの楽曲をカバーした初のソロ名義によるデジタルシングル「エキストラ」をリリース。切ない片思いをしている女性の心情を情感たっぷりに表現し、ソロアーティストとしてのポテンシャルの高さをしっかりと見せつけた。

2022年11月10日にはモーニング娘。加入から4330日を迎え、譜久村は同期の生田とともに、グループ在籍期間が歴代最長に。その翌月の12月27日に、2023年の秋ツアーをもってグループおよびハロー!プロジェクトを卒業することを発表した。

控えめで優しい性格であり、「自信がない」と発言することも多かった譜久村。約13年間におよぶモーニング娘。の活動の中ではつらい瞬間ももちろん多かっただろうが、「『消えてなくなりたい』みたいな気持ちになったことは何度もあるんですけど、『卒業したい』という言葉で表すことは一度もなかった」そうだ。数々のプレッシャーにも負けず、なぜ13年もの間、活動し続けることができたのだろうか。自己分析してもらうと、「なんでだろう……」と考えつつ、こう答えてくれた。

「途中からは『リーダーとして今のモーニング娘。が一番いいと思ってもらえるようにしないといけない』『グループのことをいいと思ってくれる人を増やさなきゃいけない』と意識していて。そういう思いの勢いが止まらなかったからかもしれないです。夢見ることが終わったら、続けられてなかったのかなと。私は自分が好きというよりはモーニング娘。が大好きだったから、グループとしてのキャラクターやスキル、魅力、強みを見つけていきたいと思いながら、ずっとやってきました」

根底にあるのは、加入時から変わらない深いハロー!プロジェクト愛、そして、モーニング娘。への愛。在籍している13年の間、世間からのグループへの評価や注目度はもちろん浮き沈みがあっただろう。しかし彼女はずっとブレずに、グループ、そして自分自身と向き合い続け、成長し続けた。つんく♂が書き下ろした、いわゆる卒業ソング「Neverending Shine」で譜久村が歌う「終わりのない愛だと宣言 何万年先だって」は、まさしく彼女のモーニング娘。への愛を表したようなフレーズに聞こえる。

グループの歴史をつなぐ架け橋に

「“リーダーとしての譜久村聖”を振り返って誇れること」を聞いてみると、「先輩方に『今のモーニング娘。はよく知らないな』と思われたくなかったので、新メンバーが加入したときや新曲が出るとき、番組に出演するときには、先輩方に連絡させてもらっていました。そしたら『観たよ』『新曲聴いたよ』と返事をいただいたり、周年の際にすごくありがたい言葉をくださったり。現役メンバーのことを見てもらえることがすごくうれしかったです。先輩と後輩を少しでもつなげられたかなと思います」と話す。自身が在籍していた時代のみならず、グループの歴史をまるごと愛していることがよく伝わってくる言葉だ。

譜久村を急遽9期メンバーとして加入させることを決めた理由について、当時つんく♂は「モーニング娘。はもともと悲しさやウェットな部分がすごくあって、譜久村はなんかわからん悲しさを持ってる。入れるとバランスがいい」と語っていた。その言葉通り、切なげなムードを帯びた楽曲を披露すると抜群のフィット感を見せる譜久村だが、自身の魅力が生きる楽曲について本人に聞いてみると、複雑そうな感情をのぞかせながらほほえんだ。

「ファンの方には切ない曲がよく合ってると言ってもらうんですけど、私自身はかわいい楽曲が好きで(笑)。『恋してみたくて』『レモン色とミルクティ』『ロマンスに目覚める妄想女子の歌』とか、そういう曲ではしゃいでる私も好きになってもらえたらうれしいですね。どんな曲でも歌詞の世界観に合わせて主人公になりきることを加入時から目標にしているんですが、そこはしっかりとファンの皆さんに見せてこられたんじゃないかな?と思います」

「周りの人の思いを聞ける人でありたい」

卒業後については、しばし休息を取り、その後は「新たなことにも挑戦、勉強し、今まで学んできたことをなるべく生かせるお仕事が出来たら」と語る譜久村だが、人生の半分を過ごしたモーニング娘。で得たことは、どのような形で彼女の今後に息づいていくのだろう。

「譜久村聖の人格形成はモーニング娘。でできたと思うし、自分の器もきっと大きくなったと思うんです。先頭に立って仕切ることも、リーダーにならなかったら絶対に経験しなかっただろうなと思います。これまでずっと、メンバーみんなの意見を聞いて、それを1つにまとめ上げることを意識してきたので、今後も周りの人の思いを聞ける人でありたい。歌やダンスだけじゃなくて、生活面で学んだことも、そのまま今後の人生に生かしていきたいですね」

譜久村聖は、生まれながらにセンターに立つことが決まっていたような絶対的エースや、メンバーが黙ってついてくるようなカリスマ的リーダーではなかったかもしれない。だが、メンバーの背中を優しく押し、足並みをそろえてともに成長する、愛にあふれた聖母のようなリーダーであり、どこか憂いを帯びながらも凛と輝く魅力を放った、唯一無二のアイドルだった。モーニング娘。としてのラストステージはCSテレ朝チャンネル1にて生中継も行われる。ハロプロ愛を放ち続けて大人の女性に成長した1人の少女の門出を、ぜひ目撃してほしい。

キャンペーン情報

「スカパー! 熱狂フェス #テレビだけだと思うなよ」

「スカパー!熱狂フェス #テレビだけだと思うなよ」

スカパー!では、10月1日(日)から11月30日(木)まで「スカパー!熱狂フェス #テレビだけだと思うなよ」と題したキャンペーンが展開されている。「スカパー!熱狂フェス」は、放送はもちろん、配信、バーチャル空間やリアルイベントに至るまで、ユーザーが楽しい体験をより拡張できるような“熱狂”コンテンツをたっぷりとそろえた施策。コンテンツのラインナップは今後も続々追加される。加入者はもちろん、そうでない人も、「スカパー!史上最大の熱狂フェス」にぜひ参加してみては。期間中にはプレゼントキャンペーンも実施予定。詳細は公式サイトにて確認を。

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プロフィール

譜久村聖(フクムラミズキ)

1996年10月30日生まれ、東京都出身。アイドルグループ・モーニング娘。の9期メンバーであり9代目リーダー。2008年にハロプロエッグ(現ハロプロ研修生)に合格。2010年にモーニング娘。9期メンバーオーディションに落選するも、翌年1月のコンサートツアー「Hello! Project 2011 WINTER ~歓迎新鮮まつり~」にてメンバー入りが発表された。2014年にはモーニング娘。史上最年少でリーダーに就任。2019年からはハロー!プロジェクトのリーダーも務めた。2022年12月、翌年の秋ツアーをもってグループおよびハロー!プロジェクトを卒業することを発表。卒業公演となる「モーニング娘。'23コンサートツアー秋『Neverending Shine Show』譜久村聖卒業スペシャル」は2023年11月29日に横浜アリーナで開催される。座右の銘は「人を信じる」。