SKRYU「絶」インタビュー|なぜメジャーデビューを選んだのか?引くほど売れてもゴールはない「超 Super Starへの道」 (3/3)

自分のやってることは「日本語ラップ」という表現が強く当てはまると思う

──SKRYUさんの作品が切り抜き動画やTikTokなどでも人気があるというのは、メロディに加えて「パンチラインの強度」も作用していると思います。一方で、ロングヴァースで話が成立するようなストーリーテラー的な部分や、構築的なリリックを書く側面も強い。それを両立させているからこそ作品人気が高いとも思うんですが、SKRYUさん個人としてはどこに重きを置いていますか?

それでいうと僕は1行2行のフレーズ一発勝負みたいな、いわゆる「今っぽいパンチライン」を作るのは、実は苦手かもしれないですね。

──「口が気持ちいい」「耳あたりのいい」フレーズというか。

それよりも「スパンコールじいちゃん」のように、起承転結で話が広がっていく、全体で1つの話題を構成するような曲を書くほうが得意だと思います。そのうえで、そこにパンチラインがあればいいのかなって。

──本来の意味での「パンチライン」というか。

そうですね。オチの役割としてのパンチライン、着地点としての印象的なキーフレーズは欠かさずに書いていきたい。

──だから、個人的にSKRYUさんの行動原理は日本語ラップだと思うんです。明確な定義は不可能ですが、例えば「クリアな日本語の発声」「意味の通った言葉の連続性」「日本語による押韻」「オチの付け方」という構造を考えると、SKRYUさんの作品はすごく「日本語によるラップ」というルールに則っている。

そうですね。「日本語ラップをやっている」という言葉がしっくりくるかもしれない。自分は日本語が一番よく聞こえるフロウを意識しているし、クリアスピーキングだと思うし、日本語を使ったオチ、「こういう表現があったんだ」というトンチみたいな部分が好きなんで。だから、自分のやってることは「日本語ラップ」という表現が強く当てはまると思う。なんか、今この話をしていてすげえワクワクしました。日本語ラップだよなあ、確かに。

──ただ、その手法とソロMCという部分を考えると、テーマ作り自体が作品を重ねるごとにどんどん大変になっていきますね。

今もカラカラの雑巾をずっと力ずくで絞ってる感じですね。「このテーマ、前にもやったじゃん」「似たようなこと言ってるだけやんけ」と。過去の曲で言えば、「Mountain View」と「Balloon」は曲調も言ってることも違うけど「夢に向かって進む」というテーマでは通底しているし、それが山か気球かの違いなんですよね(笑)。だから、言えることが減っていく、被っていくというのは正直感じていることで。

──ただ、多くのアーティストが言いたいことは基本的に1、2枚目のアルバムで言い尽くしてしまうので、以降はその視点の変化と応用になるという話をしていて。同時に、視点を変化させる状況把握力と、表現をどう変えていくかという応用力こそがアーティストの成長でもあると思います。

そう言ってもらえると心強いですね。あと、自分に関しては「ファンタジーが書ける」というのが大きいと思う。

──「リアル」でなく「ファンタジー」。

「純度100%のファンタジー」は難しいです。でも、例えば「超 Super Star」という自分のテーマは、現状はファンタジーではあるけど目標でもあるし、それはイメージできますよね。同時に、後輩に金を借りてまで酒を飲んでたようなやつが「超 Super Starになる」というファンタジーをリリックにして、その言葉に現実が追いついていったら、それもリアルになると思うんです。「スパンコールじいちゃん」だって、内容は架空だけど元スーパースターという設定だし、ああなりたいというリアルがそこにある。だから「未来像というファンタジー」をイメージして書くという手法と、「それをリアルに近付けたい」という願望が自分のリリックにはありますね。

超 Super Starって「超 Super Starを目標にし続けることができるやつ」だと思うんです

──ファンタジーをリアルにしていけば、そのファンタジーさえリアルになると。「Ahhhhhhh! -絶叫-」の中で歌っている「引くほど売れたら『あいとぅいまてーん』」というリリックや、先ほどからおっしゃっている「超 Super Star」という言葉は、具体的にはどういう状況を想定していますか?

なんだろう……ChatGPTに「超 Super Starって誰?」と聞いたら、「それはSKRYUです」と言われるくらいの状況(笑)。電光掲示板も、電車広告も、吐き気がするほど俺の話題ばっかりになるのが超 Super Starなのかなって。その意味で言えば、今は俺の存在を知らない人間を潰していく作業だと思うんですよ。もちろんそれは音楽を通じてなんですけど。俺と出会って、俺の曲を1回聴いてもらえれば好きにさせる自信はあるから、今は自分の曲をもっと広めるタームなのかなって。あと、超 Super Starって「超 Super Starを目標にし続けることができるやつ」だと思うんです。だから“ING”の中にいるというか。結局そこにも終わりがないと思います。

SKRYU

──特定の誰かや数値ではなくて、もう概念としてスーパースターというか。それが目標であり、モチベーションという。

「スパンコールじいちゃん」のように、そこにすがれるくらいの過去の栄光を作りたい。俺は人に褒められることも単純に好きだし、それが原動力なのは間違いなくて。メジャーでプロジェクトチームができて、インタビューを受けて、聴いてくれる機会が世の中に増えるっていうのは、お調子者の目立ちたがり屋からしたらもう燃料しかないんです。こんな最強の環境はないやろ、って。だからこそ、単純にここで売れないといけないとは思っていて。売れたイヤらしい自分にも出会いたいし。ただ、忙しいは忙しい……制作に追われているので、自分で「スタースケジュール」とか冗談めかして言ってるんですけど。

──インディーなら仕事量は自分の管理下に置こうと思えばできるけど、メジャーだとそれは難しいですね。

飲みに誘われても、それも断らなくちゃいけなかったり。去年のアルバム「START」に収録した「Country Roads」でも歌ってるけど、夢を叶えたけど、夢に追われて、夢に呪われて死んでいくのかと、そういう惨めな気持ちになるフェーズもやっぱりあるんですよね。そういうときに、やっぱり地元の仲間とか会いたいやつの顔だったり、「親父って今何歳やっけ?」みたいなことが浮かんでくるし、これ全部終えたら会いに行く、みたいなマインドになることがめっちゃ多くて。

──急に「本名:植田敬助」の悩みが出てきましたね(笑)。

結局、また次のスケジュールが始まって、後回しにすることも多いんですけどね。とにかく、引くほど売れてからそれは考えようかなと……。家にも帰れない、家に帰っても暗い部屋でメロディメイクと歌詞をひたすら続ける生活を送ってると、悲しい気持ちになることもありますよ、そりゃ。客演も最近はしないから、もうホンマに家で1人で作るのに慣れてしまって。このままずっと1人でラップし続けるのか、と。

──悲しきラップマシンというか。

ワハハ! もはや悲しくもなくなったかもしれない(笑)。1人で制作してるときは悲しきラップマシンですけど、みんなの前で歌うとラップマシンでよかったって思います(笑)。

ここから待ち受ける壁の厚みが楽しみで、ぶち当たる瞬間を待ち望んでいるような感覚

──EPは「Shangri-La -絶景-」で閉じられます。これは自分の道程も込めた歌になってますね。

このビートを聴いたときに、「これは絶景だな」とイメージが浮かんで。「みんなを楽しませたい」というテーマを立てつつ、この曲はすごくシリアスな部分があるし、メジャーに出ていってより大きな世界に羽ばたくという葛藤も実は入っちゃったんですよね。今の俺の状況を、「昔のほうがよかったな」「お前は違う場所に行っちゃうんだな」と感じる人もいるかもしれない。でも、本当にあるのかどうかもわからない理想郷に行くために俺は進んでいるし、そこを目指している最中に、応援してくれる人、期待してくれる人、ライブに来てくれる人やサポートしてくれる人たちがいるし、それこそが「絶景」なんだろうなって。だから、俺のシャングリラっていうのは実はもう見えているし、これからも目の中にあるんじゃないかっていう。 いわばファンのみんなに対する感謝の曲ではありますね。

──「スパンコールじいちゃん」からの流れで「Shangri-La -絶景-」があるのは、笑わせてから泣かすという、幕張とは逆の構成ですね。その意味では、これから始まるZeppツアーはどのようなものになりますか?

メジャー1発目の作品を携えたツアーという意味でも、「SKRYUという人間はこういう歩みをしてきました」という部分ももちろんありつつ、EPに通じるように、初めてお目にかかる人にも確実に楽しんでもらえる、単純に曲がカッコいい、ライブが単純に面白い、パフォーマンスが単純に楽しいという、シンプルに目の前のお客さんを虜にしようと思ってますね。随所にいろんな感情が込められるしエモさもあると思うんですけど、単純に「今日は楽しかったね」で帰ってもらえるような、アトラクションのようなツアーにしたい。それが自分の真骨頂であるし。聴いて、踊って、楽しんで、というライブをしたいと思います。

──吊るされます?

どうですかね。飛ばなくても怒らないでほしいですね。飛ぶのが義務ではないので(笑)。

──あんまり頻繁に飛んでも飽きられるし(笑)。

「また飛んでるわ」みたいな(笑)。でも、ライブで何をやるにも、そこに臆病風は吹かないなという感じですね。逆にここから待ち受ける壁の厚みが楽しみで、ぶち当たる瞬間を待ち望んでいるような感覚です。

──なるほど。ありがとうございました。

最後に。「S+」で歌っている「Super Sweet Special Smile」な女の子が、実は「スパンコールじいちゃん」の嫁さんの可能性もあるんですよ。

──そこも話がつながっていたと。

諸説ありますけど。

──知りませんよ(笑)。

スパンコールじいちゃんが若い頃、「ワシの輝きよりも、お主のスマイルの方が輝かしいぞよ」みたいな口説き方したんじゃないかっていう情報もありますけど。

──不確定ならどっちでもいいよ!(笑)

SKRYU

プロフィール

SKRYU(スクリュー)

1996年生まれ島根県出身の、元銀行員という異色の経歴を持つラッパー。Disryから愛媛の大街道サイファーを受け継ぎキャリアをスタートさせ、数々のMCバトルで優勝を飾る。「How Many Boogie」「超Super Star」「Heated」などバイラルヒットを続けて、2025年9月にはヒップホップアーティストとしては初の千葉・幕張メッセ国際展示場ホールでのワンマンライブを成功に収めた。2026年2月にワーナーミュージック・ジャパンからメジャーデビューし、 EP「絶」をリリースした。