何をやっても許される、怖いものなしの状況なんですよね
──そしてその先には、メジャーデビューという道が待っていました。すでに万人規模のワンマン開催、ミュージックビデオやTikTokのバズを経験しているという意味では、メジャーに進出する必要性は、現状そこまで高くないですね。
でも、僕は超 Super Starになりたいと思ってて。本当に目立ちたがりだし、みんなの視線を浴びることが大好きなんで、昔からメジャーに対する憧れはあったんです。いろんな状況が重なった結果、インディーで活動したままで幕張までたどり着くことができたんですが。ただ、超 Super Starになるための、もう1つの壁みたいなものを破るためには絶対にメジャーという看板は必要だろうなという確信はあって。だから、よりキラキラした未来に近付くために、自分自身がキラキラするためにも、メジャーデビューが必要だったんです。
──自分自身に刺激を与えるためにも必要だったと。
そうですね。環境を変えていくのはすごく大事だと思うし、客観的に見たときにも、SKRYUという存在にドラマが欲しいなって。しかも、軽薄に「スターになりたい!」って言ってたやつがメジャーに行くのって、普通にお祝いだから。
──少なくとも「メジャーに行くなんてガッカリした」という声はなさそうですね。
そういう意味でも、メジャー進出はプラスしかないと思ってます。
──そこで「売れ線」を狙うことは意識しています? 新作「絶」は下ネタも含めて、作品性はこれまでのSKRYUの延長線上にあると思うし、メジャー進出で何かが変わったという部分はほぼないと感じました。
地続きだと感じてくれたとしたらうれしいですね。意識的にも、自分のやってきたことをブラッシュアップしようと思った作品なので。自分のやりたいカッコいい曲を作って、それが評価されるというのが活動の前提だし、それを“売れ線”にしたい。今回の制作も、レーベルからオーダーが強くあったわけではないし、自分のやりたいことをやるのは、インディーのときと変わりませんでしたね。最低の下ネタもいっぱいあるし。そういう意味でも、すごく幸せな環境だと思ってます。
──世間的なイメージである「メジャーで求められるようなメロディの強さ」「ラブソング」といった部分も、SKRYUさんはこれまでもやってきたわけだから、そこで軸がブレようがないというか。
逆に、僕が超露骨にマーケティング的な、メジャーっぽい売れ線の曲をやっても、キャラクターとしてギャグになるんですよね。「またふざけてるな、あいつ」と受け止められる。だから、何をやっても許される、怖いものなしの状況なんです(笑)。そもそもが胡散臭すぎて、嫉妬されないし、叩かれない。「SKRYUをフェイクというのも、そもそも野暮」「それ込みで一緒に楽しんだ方が面白いでしょ」と思ってくれてるんじゃないかなって。スタイルの問題で炎上したり、論争とか起きたりしてほしいんですけどね(笑)。
根底にあるのは「Y2K的」な感覚
──ハハハ。無敵だ(笑)。とはいえ、それはスキルに裏打ちされてるとも思うし、だからこそ大御所からも客演の声がかかるわけで。ところで今回の「絶」というタイトルはどういう意味ですか?
Zeppツアーをやるので、「Zepp→絶」みたいな(笑)。それで「絶」という言葉をEPのテーマにしようと思って、全部の曲名のサブタイトルに「絶」を付けたんです。1曲目の「Ahhhhhhh! -絶叫-」には「絶賛」「絶倫」「AからZ」と、リリックに「絶」というワードが盛り込まれていて、これがEP全体の目次みたいな役割になっています。
──「絶」縛りプレイというか。「Ahhhhhhh! -絶叫-」のドラムは、The Neptunesがプロデュースしたジェイ・Z「I Just Wanna Love U(Give It 2 Me)」を意識させるような音色が記憶に残ります。しかし、上モノやベースラインのゴージャスさによってまったく感触が変わっているし、いわゆる“間”の多いビート感になっていない。そもそもSKRYUさんのディスコグラフィでも、音の隙間や“間”を強調したビートは「居酒屋」くらいで、基本的には音の構成は非常にラグジュアリーだと思いますが、それは現行のラップビートの流行に対するカウンターなのか、単純に好みなのか、どういった部分が強いですか?
最近思ったのは、たぶん「Y2K的」な感覚が根底にあるからなんじゃないか、と。それこそ、BoAさんや宇多田ヒカルさん、mihimaru GTさんとか、そういうキラキラしたポップスが、習い事の送り迎えをしてくれる母親の車の中でかかっていて、それが自分も好きだったし、音楽の原点にあるんですよね。今でも、ベース、キック、上モノ、メロディがしっかりある厚みのあるサウンドに興味があるし、そういうアンテナに引っかかるのが、今自分がラップを乗せてるビートなのかなって。完全に好みですね。それに、俺の音楽自体が「ヒップホップの入り口」や「入門編」みたいなところにあるから、そこにポップスとの連続性があるんじゃないかなと。
──盟友ともいえるNoconocoが制作した2STEP「S+ -絶世-」や、ES-PLANT制作のニュージャックスウィングの「スパンコールじいちゃん -輝絶-」など、ビート感も幅広いですね。ただ、ラップの内容的には、今作で言えば「ピンクのワゴン -悶絶-」に登場する「Dip, dive, socialize」のような超オールドスクールな言葉の引用や、過去には「Real My House」でのDas EFXの引用などもありましたね。そういったオールドスクールなサウンドの方向には進まない?
オールドスクールなブレイクビーツや間の多いビートに食らったりはしてるんですが、自分の打ち出しとしては、もっと派手な鳴りのもの、音に厚みのあるものがいいのかなって。あと、不安というのもあると思いますね。ボーカルパートを1本でやるのがちょっと怖い。だから何十トラックも使ってコーラスとハモを付けてるし、ポップスみたいな情報量で作っているんです。とんでもないタイトルや歌詞でも、その後ろ盾にはしっかりしたメロディやビートがあるのが自分の音楽だと思っていて。結果、メロディはキャッチーで、目をつぶって意味を考えずに聴いたら最高なのに、歌詞を聴いたら親に聴かせられない、みたいな内容になる(笑)。
「SKRYUはいい曲が多いのに人に勧められない」理由
──「スパンコールじいちゃん」も、あのフックだけ聴くと素晴らしいメロディなんだけど、言ってることは「スパンコールじいちゃん」という謎すぎるワードで。「ピンクのワゴン -悶絶-」も、メロディはカッコいいのに、言ってることは過剰な下ネタですね。
このEPは、マジでガチで楽しんでもらうことだけを考えているんです。プレッシャーとか「SKRYUはこうあるべき」という意識や圧がまったくない状態で、まっさらに楽しんでもらうことだけを意識してて。だから下ネタも書いちゃうし(笑)。
──メジャーに行って下ネタが減ることはまったくなかった(笑)。
「賜るのさ女神のだいしゅきホールド」とか、超えてはいけない一線を超えた気がします(笑)。下ネタとSKRYUは切っても切り離せない関係なんですよ。桑田佳祐さんの影響もあるとは思うんですが、どうしてもそういうフレーズが出てきてしまうし、隠せない。しかも「ひでー歌詞だな! 思いついたの誰だ? 俺か!」と、本当に1人でギャハギャハ笑って書いてますからね。真っ暗な部屋で(笑)。下ネタって男女関係なくみんな好きじゃないですか?
──主語がデカいですよ。人によるでしょう(笑)。でも、SKRYUさんの下ネタはダーティな感じがしないですね。それは大きいと思う。
エロネタはGIPPERさんに学んでるんですけど、GIPPERさんのエロってセクシーじゃないですか。俺はもっとバカが入っちゃうんですよね。
──中学生のエロという感じですね。
本当にそうなんですよ。でも、(自分で歌詞をなぞりながら)「フラミンゴ立った熱帯雨林」「今メジャーで測る俺のソーセージ」……最高の問題作じゃないかな!?(笑)
──笑ってる……(笑)。
「SKRYUはいい曲が多いのに人に勧められない」「車でかけられない」といわれる所以がここにあります(笑)。
──「いい曲」という意味での聴感のよさはメロディやボーカルが担保しているし、今回は特にその部分が強いですね。
すべての部分で勝ちに行こうと思ってるんですが、今回はフックに重点を置いた曲が多くなりましたね。リリックよりもメロディメイクやソングライティングにかけている時間のほうが長かったかもしれない。
──個人的には、2000年代中盤のウェッサイやメジャーシーンのラップにあった「メロ+ラップ」という構造をスムーズな形でリバイバルさせている部分もあるような気がします。実際、先ほど話に出たGIPPERとの「Pichi Pichi(Remix) feat. GIPPER」や、「Grand Prix(Remix) feat. GADORO」をプロデュースしたDJ PMXとの制作は、いわゆるウェッサイ的な系譜に連なるものですよね。メジャー感覚でいえば、CLIFF EDGEのJUNが参加した「Country Roads」にそれを感じました。今回でいえば、ES-PLANTの参加や、HI-Dが作曲に携わった「S+ -絶世-」ともそれはつながると思って。
僕の青春のアーティストであるHI-Dさんとは、お仕事でご一緒させていただくことも増えてきて。「S+」はコーラスのメロディなどにHI-Dさんのエッセンスが入った、面白い曲になったと思います。



