音楽ナタリー PowerPush - Village Vanguard presents Sing Your Song! 2015

ヴィレヴァンのインスト仕掛け人+人気プレイヤー3名 新木場競演前の座談会

インストは敷居をまたげる

──→Pia-no-jaC←は2005年結成だからちょうどブームの時期と活動の広がりが一致してそうですけど……でも、結成当初の話を聞く限り、そういう意識はなさそうですね。

HAYATO まったく気にしてなかったですね。できることがそれだけだったというか、やりたいことを好きに楽しくやろうっていうだけで、「ブーム……だったのか?」みたいな感じです。ただひたすらにがむしゃらだったというか、1年に3枚アルバム出したりとか、ホント死ぬかと思うぐらい……今もそんなペースでやってますけど(笑)。

左からHAYATO(→Pia-no-jaC←)、渡辺シュンスケ(Schroeder-Headz)、金田謙太郎、岸本亮(fox capture plan)。

岸本 →Pia-no-jaC←も参加した初期のスクエニ(スクウェア・エニックス)のコンピ(「Love SQ」)を聴いて、「インストブーム来てんのかなあ?」って思った覚えがありますね。当時は収録アーティストに打ち込みの人が多かったんですけど、今はインストバンドだけでコンピが作れるようになってるから、そういう意味ではまだまだブームが続いてるのだなって思います。

──ヴィレッジヴァンガードの存在は、そのブームに一役買った印象があります。

金田 意外と知られてないんですけど、うち本屋なんですよ(笑)。なので、基本的には「(本を読んでいる)そばで鳴ってるような音楽」っていうのが、もともとのコンセプトとしてあったので、インストを多く扱うのは自然な流れではあったんですよね。あとこれは有名な話なんですけど、うちでNujabesさんのCDが売れたのはアロマとかお香のコーナーで、OLさんがアロマを炊くときのBGMとして買っていったんです。インストってそれぐらい聴く人を選ばないもので、敷居をまたげちゃう感じっていうか、それもすごく大きかったんですよね。

渡辺 そうやってフワッと楽しんでる人もいるし、すごい入り込んで聴いてくれる人もいるっていうのがいいんですよね。今って音楽に説明が多い時代だと思ってて、「これはこうやって聴くものだ」とか、ひと言で暗いとか明るいって片付けられちゃったりするけど、もうちょっと不親切でもいいし、好きに感じていいんだって思ってほしい。そういうインストに対するロマンみたいなのはあったりするんですよね。

ライブはその日にしか生まれない音楽を楽しんで

──では、それぞれがインストバンドとしてライブに対してどのような考えを持って臨んでいるかを話していただけますか?

岸本 ボーカリストがいなくても、バンドが持つアグレッシブさみたいなものは表現できると思ってて、僕は半ばロックバンドのギターボーカルみたいなイメージでピアノを弾いてます。ドラムもロック寄りのアプローチだし、ライブ感を会場で体験してほしいっていうのはありますね。

渡辺 前にジミヘン(ジミ・ヘンドリックス)みたいなピアノを弾きたいと思ってマーシャルアンプにつないだことがあるんだけど、相性全然よくなくて、ただ音が割れてて耳が痛いだけだった(笑)。

──(笑)。HAYATOさんはいかがですか?

HAYATO →Pia-no-jaC←はライブの種類がいろいろあって、フェス、ライブハウス、ホール、ショッピングモールでのインストアライブと、場所によってどんどん見せ方を変えてるんです。がっつり音を届けるライブもあれば、魅せるタイプのエンタメなライブもやるし、参加型のライブもやります。初めて観た人にも楽しんでもらいたいので、ある種のわかりやすさっていうのは意識してますね。あと僕ライブ中にけっこう客席見るんですけど、そのときの状況に合わせてフレーズを変えるんで、極端に言えば昨日5分だった曲が今日20分だったこともあって。その日にしか生まれない音楽を楽しんでもらいたいと思ってます。

渡辺 そうやって自由に演奏してるときって、お客さんもそれをわかって楽しんでる感じがすごいあって、いい瞬間ですよね。ときどき演奏がおかしなことになって、「あいつ(メンバー)殺してやる」って思うこともあるけど(笑)、それも含めて楽しいし、新鮮な気持ちになるんです。もちろんうまくいくときといかないときがあるけど、ライブの中でどうやって大きい仕掛けを作って、どうみんなを巻き込んでいくかっていうのはよく考えてますね。

「自分の歌を歌えばいいんだよ」

──では、そろそろ締めに入ろうかと思うのですが、「Sing Your Song!」というタイトルがどうやって生まれたものなのかを話していただけますか?

金田 どんなタイトルにするかはずっと考えてて、最初はもっと攻撃的なタイトルだったんですけど……。

──どんなタイトルだったんですか?

左から渡辺シュンスケ(Schroeder-Headz)、金田謙太郎、岸本亮(fox capture plan)、HAYATO(→Pia-no-jaC←)。

金田 歌ものへの挑戦状を叩き付けるような(笑)。でも、「なんで俺は1人でケンカしようとしてるんだ?」って思って(笑)。で、このタイトルの由来は、JAGATARAの江戸アケミさんの言葉で「やっぱ自分の踊り方でおどればいいんだよ」っていうのがあって、その言葉がすごい好きなんですよね。僕が音楽に期待してるのは、とにかく「自由」なんです。音楽は数ある娯楽の中で一番人を自由にさせてくれるものだと信じてるので、その言葉からインスパイアされて「自分の歌を歌えばいいんだよ」ってタイトルにしたんです。あとそうだ、今回一部VJが入るのですが、丸橋圭太郎さん×土肥武司さん×比嘉了さん×ウサミタクトさんという、なんで?ってぐらいすごい人たちがやってくれるのでそれも注目してください。ちょっとググってくれればメンツのすごさがおわかりいただけるかと思います!

──なるほど、JAGATARAのアケミさんからだったんですね。すごくいいタイトルだと思います。では最後に、お三方に当日への意気込みを語ってもらいましょう。

HAYATO 今金田さんが言ったように、ホント音楽の自由さを楽しむだけです。限られた時間の中ですけど、→Pia-no-jaC←流の音遊びを思いっきりやって、皆さんと一緒に楽しめたらいいですね。僕らは見ても楽しめるライブにしたいんで、誰もしてないような弾き方もしますし、それはぜひ観に来てほしいと思います。

岸本 今までインストバンドに興味がなかった人とか、新しい音楽との出会いを探してる人にはうってつけのイベントだと思うので、ぜひそういう方に来ていただきたいですね。あと今日ここにいるのは3人ともピアノがメインのアーティストですけど、同じピアノでもそれぞれスタイルは全然違うと思うので、そういう違いを楽しむのも面白いと思います。fox capture planとしても、もちろんガツンとやるつもりです。

渡辺 思ってたこと全部お2人に言っていただいたので、手短に(笑)。歌心と真心を込めて演奏しますので、ぜひ楽しみに来てください!

Village Vanguard presents「Sing Your Song! 2015」2015年4月26日(日)東京都 新木場STUDIO COAST / OPEN 13:00 / START 14:00
Village Vanguard presents Sing Your Song! 2015
出演者

SPECIAL OTHERS / →Pia-no-jaC← / Nabowa / DEPAPEPE / mudy on the 昨晩 / fox capture plan / Schroeder-Headz / toconoma
VJ:丸橋圭太郎×土肥武司×比嘉了×ウサミタクト

VJプロフィール
丸橋圭太郎
2008年頃より電気グルーヴへのツアーVJ映像を提供開始。大型フェス、テレビアニメ、CM、ゲーム、映画など活動の場は多岐にわたる。代表作にRYUKYUDISKOの廣山哲史アーティスト写真やスクウェア・エニックス「MoreSQ」メイングラフィックなど。
土肥武司
1999年よりCG制作を開始。CGとプログラミングをかけ合わせた映像表現を中心に、VFX、VJ、インスタレーション、ゲームなどさまざまなフィールドで創作活動を行っている。近年では、プラネタリウムでの音楽イベントのビジュアルシステムや、LEDと映像を使った日光東照宮でのインスタレーションなどを手がけている。
比嘉了
多摩美術大学情報デザイン学科卒業後よりフリーランスとして活動し、2011年より株式会社ライゾマティクスへ所属。2015年より再度フリーランスへ。リアルタイム3Dグラフィックス、コンピュータビジョンなどの高度なプログラミング技術、多種多様なプロジェクトに関わった経験を生かし、インスタレーション、リアルタイム舞台演出、ライブパフォーマンスなど幅広い作品を制作している。
ウサミタクト
2011年頃からプログラミングの勉強を始める。2014年にロシア・モスクワで行われた大規模なマッピングイベント「Circle of Light」に参加。ドイツ・デュッセルドルフで行われた国際ガラス製造・加工機材展「GLASSTEC」にて建築インスタレーションの照明計画などを担当する。
HAYATO(ハヤト)

HIRO(Cajon)とのインストゥルメンタルユニット→Pia-no-jaC←のピアノ担当。鍵盤と打楽器というシンプルな編成ながら、重厚かつ多彩な音を鳴らすのが特徴。その独自の音楽性が各方面から注目を受け、ディズニーやスクウェア・エニックス、ショパンなど多数のトリビュートアルバムに楽曲提供し、宝塚歌劇団への楽曲提供やラジオのジングル制作など幅広い活動を展開。葉加瀬太郎とのコラボレーションアルバム「BATTLE NOTES」やクラシックのカバーアルバム「EAT A CLASSIC 5」でも話題をさらう。2014年10月から11月にかけて4カ国8都市でヨーロッパツアーを敢行。2015年3月にはライブDVD「Zepp Entertainment ~→PJ←ワンダーランド~」をリリースした。

岸本亮(キシモトリョウ)

1983年生まれ。2005年3月にクラブジャズバンドJABBERLOOPに加入し、躍動感のある鍵盤さばきでオーディエンスを魅了する。2011年にはカワイヒデヒロ(B / Immigrant's Bossa Band)、井上司(Dr / nhhmbase)とともにfox capture planを結成。“現代版ジャズロック”をコンセプトとした情熱的かつクールで新感覚なサウンドを展開している。2015年はfox capture planとして3枚のアルバムリリースを予定しており、4月にその第1弾「UNDERGROUND」を発表する。

渡辺シュンスケ(ワタナベシュンスケ)

ソロプロジェクトSchroeder-Headzのほか、数多くのアーティストのサポートでも活躍するキーボーディスト。2010年、アルバム「NEWDAYS」よりポストジャズプロジェクトSchroeder-Headzを始動。ピアノ、ベース、ドラムによるアコースティックなトリオサウンドとプログラミングを融合させ、美しいメロディと有機的なグルーヴが印象的なサウンドを紡ぎ出す。2013年12月にはリミックスプロジェクトの一環としてミニアルバム「Sleepin' Bird」を発表し、2014年2月にメジャー移籍第1弾アルバム「Synesthesia」をリリース。また、土岐麻子とともに「土岐麻子 meets Schroeder-Headz」としても精力的にさまざまなイベントに出演している。

金田謙太郎(カネダケンタロウ)

「Sing Your Song! 2015」オーガナイザー。ヴィレッジヴァンガード下北沢店のCD担当バイヤーとしてSotte Bosseや→Pia-no-jaC←の作品をヒットさせ、コンピレーションアルバム「DISNEY ROCKS!」シリーズのプロデュースや、スクウェア・エニックスによるゲームミュージックのアレンジコンピレーションアルバム「SQ」シリーズの協力を手がける。