シド、結成20周年のフィナーレ飾る初のトリビュートアルバム&新曲「微風」

2023年は結成20周年にふさわしい精力的な活動を展開したシド。そんなアニバーサリーイヤーを締めくくる作品として、初のトリビュートアルバム「SID Tribute Album -Anime Songs-」と、新曲「微風」が先日リリースされた。

トリビュートアルバムは、これまでにシドが提供したアニメタイアップ曲を、その作品に出演した声優陣がカバーする異色企画。小野大輔、朴璐美、森田成一、戸松遥、村瀬歩、雨宮天、福山潤という実力派声優たちがシドの楽曲を歌唱しており、その豪華なラインナップはアニメファンの間でも話題に。同時にリリースされた「微風」は、シドが自分たちの歩みを振り返り、ファンへの愛情を言葉とサウンドに込めたバラードナンバー。どちらもシドからファンへの贈り物のような作品となっている。

メンバーは今、どんな思いでアニバーサリーのフィナーレへと向かっているのか。2つの作品にまつわるエピソードとともに語ってもらった。

取材・文 / 真貝聡

ダメ元のアイデアが現実に

──結成20周年を記念して、シドの皆さんは今年1月からさまざまな企画やライブを行ってきましたが、先日は初のトリビュートアルバム「SID Tribute Album -Anime Songs-」がリリースされました。

マオ(Vo) 僕らの楽曲をどなたに歌ってもらおうかと考える中で、シドと言えばいろんなアニメのオープニングテーマやエンディングテーマを担当させていただいたので「せっかくならシドが関わったアニメに出演されていた声優さんに、僕らの曲を歌ってもらうのはどうでしょうか?」とスタッフに提案したんです。とはいえ、この企画の実現は相当難しいとは思っていたんですよ。だからしばらくして忘れた頃に「OKもらえました!」と言われたときはビックリしました。

明希(B) その結果、ほかに類を見ないプレミアムなアルバムになりましたね。

ゆうや(Dr) アニメソング縛りでトリビュートアルバムを出すアーティストもあまりいないですし、それに人気声優の方々に参加していただけるのは、本当にすごいことで。SNSで僕らのファンからも多くの反響がありましたし、声優さんたちがこのアルバムについてXでポストしてくださったことで僕らのファンじゃない方々も盛り上がっていて。「貴重なことをやっているんだな」と再確認できて、とてもテンションが上がりました。

Shinji(G) 僕もね、ここまで豪華なアルバムを作るのは、正直言って無理だと思っていたんですよ。だからこそ、こんなすごい声優さんたちが歌ってくれるなんて、ただただうれしい気持ちでした。

──ではお一人ずつ作品全体の感想を教えてください。

マオ 僕はこれまで幅広い音楽性の楽曲を作ってきた自負があるのと同時に、それがシドの武器だと思っているんですね。その成果がここに来て、また違う形で示せたんじゃないかなって。今回さまざまな声質の声優さんに曲を歌っていただいても、しっかりとそれぞれの楽曲が個性を放っていた。もちろん声優さん自体の力も偉大ですけど、楽曲が持つ力をこのタイミングでまた引き出してもらった感覚が強くあります。アルバム1枚としてのまとまりもいいし、個性もしっかり感じられる。そんな作品になりましたね。

──どの曲も素晴らしいので絞るのは難しいと思いますが、1曲ピックアップしていただくとしたらいかがでしょう?

マオ 朴璐美さん(「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」エドワード・エルリック役)が歌ってくださった「嘘」はすごかったですね。とてつもなく気持ちの入り方が伝わってきました。「鋼の錬金術師」、「嘘」、朴さんの歌声というのが、こんなにもしっかりと結び付いて1つの作品として仕上がるのか、とビックリしました。アコースティックな感じにアレンジしていただけたのも、意外性があって素晴らしかったですね。

──原曲とかなり違うアレンジですが、決して奇をてらっているわけではなく、リスペクトが感じられました。

マオ うん、そうですね! しっかり聴き込んで歌ってくださったんだなと感じたし、何より声が合っていましたよね。

マオ(Vo)

マオ(Vo)

明希 アルバム全体の印象としては、上から目線に聞こえたら嫌ですけど、純粋に「さすがだな」と思いました。どのカバーも本当に個性的で、非常に完成度が高い。マイクの乗りと言うんですかね? それがどの方も素晴らしくて。皆さん本業は声優さんですが、余裕でミュージシャンの域に行ってる。しかもね、持ち歌じゃないわけですよ。それでも、ここまでのクオリティにするというのは、皆さんの楽曲への愛と、シドへの思いを感じました。本当に光栄でしたね。

──高度な歌唱テクニックはもちろんですけど、それ以上に楽曲をどれだけ愛しているかが伝わってきました。

明希 特に印象的なのが、前に音楽ナタリーでも対談した村瀬歩さん(「将国のアルタイル」マフムート役。参照:シド「螺旋のユメ」特集 マオ×明希×村瀬歩 鼎談)の「螺旋のユメ」。自分で作っておいてアレですけど、そもそもメロディが複雑というか難しい曲なんですよね。そこを完璧に表現していただいた、という意味では、この曲を村瀬さんに歌ってもらえてすごくうれしかったです。

Shinji 曲を作っていた当時も手応えを感じていたんですけど、改めてほかの方に演奏してもらったり歌ってもらったりすると、「シドっていい曲がいっぱいあるんだな」と自画自賛できるというか。皆さんの歌を通して、改めて楽曲に自信が持てました。1曲だけピックアップするのは難しいんですけど、「乱舞のメロディ」は森田成一さん(「BLEACH」黒崎一護役)の声が曲にすごく合っていて、シンプルにカッコいいなと思いましたね。

──「乱舞のメロディ」のギターはザクザク演奏している印象があって。そのあたりも丁寧に踏襲されているように感じました。

Shinji そうですね。シドの楽曲ってギターをきっちり弾く曲が多いんですけど、この曲は一発録りみたいな感じで、荒々しく演奏した覚えがあるんです。その雰囲気を歌で再現してくださっているように感じましたね。演奏で言えば、先ほどマオくんも挙げていた「嘘」。もちろん朴さんの歌声も最高なんですが、このギターを弾いてくださっているのが、「報道ステーション」の4代目テーマソング「Brave」の作曲と演奏をしていたギタリストのこーじゅんさんなんです。僕は昔からこーじゅんさんのギターが好きで、楽譜を買ってコピーしていたぐらいなんです。そんな方が「嘘」を弾いてくださったのもうれしいし、めちゃくちゃカッコよくてさすがだなと思いました。

ゆうや シドの楽曲をとても理解していただいていて、それぞれのアレンジが光っている、とにかく聴き応えのあるアルバムですよね。僕が1曲選ぶなら戸松遥さん(「マギ」モルジアナ役)の「ANNIVERSARY」ですね。こういう明るい雰囲気の曲を女性の方が高いキーで歌っていると、より華やかになる。その感じがスコーンとして、気持ちいい感じにハマっているなと思いました。

──戸松さんの歌声によってスケール感がさらに出ているし、希望に満ちた印象を受けました。

ゆうや うんうん。曲名のお祝いという意味と、すごくぴったりな明るく抜けている雰囲気があって。とても惹かれました。

ファンのみんなを象徴する言葉「微風」

──トリビュートアルバムと同時に、シドの約1年9カ月ぶりとなる新曲「微風」がリリースされました。作曲を明希さん、作詞をマオさんが担当された、優しくて温かみのあるメロディの曲ですが、明希さんは何を意識して作曲されましたか?

明希 まさに今おっしゃってくださったイメージが最初にあって。そのイメージに曲が呼ばれた感じなんですよね。聴く人の背中をそっと押すような曲になったらいいな、と思って作りました。

──「結成20周年を飾る曲」というのも、作曲するうえでポイントになっていたのでしょうか?

明希 そうですね。まずは「年末の武道館に向けて新曲を作ろう」というところからスタートして、先ほど言ったキーワードをもとに曲を作ったりアレンジを考えたりしました。ベースに関して言うと、テクニックがいるとかそういうことじゃないんですよね。ちゃんと4人の演奏が見えるようなアレンジ、シドならではのグルーヴ、それらが前面に出る曲になったらいいなと思いました。

明希(B)

明希(B)

──歌詞は皆さんが過ごされた月日を感じる、20周年にふさわしい内容に感じました。マオさんはどんなことを考えて作詞をされましたか?

マオ まずは、20周年を代表する歌詞にしたいと思って書き始めました。いろいろと振り返ってみて、素直に感じたことだったり、今だからこそ書けることだったり、そういう部分を歌詞にしたいと。大きなポイントとしては、インディーズの頃に「微熱」という曲を出したんですけど、そこからつながる物語をイメージして書きました。3Bの「溶け合ってた 青と春を 眺めて 何冊目のアルバムだろう? なんて」というフレーズは、まさに「微熱」の歌詞をほぼほぼ使っているんです。

──「夢中で混ぜ合って 溶け合った 青と春さ 開いたアルバムから ゆっくりと ゆっくりと 次のページへ」ですね。

マオ そういう表現ができるのも、ファンのみんなと一緒に20年がんばってきたからこそだと思っているので、とても気に入っています。タイトルの「微風」は、ファンのみんなを象徴する言葉はなんだろうと考えたときに、自分にとっては「心地よく見守ってくれる」「優しく頬を撫でてくれる」そんな微風のような存在だなと思って付けました。ときには追い風になって、いろんな形で応援してくれた。今は数々の試練を乗り越えて、気持ちよく吹いてくれている微風のような存在として、そばで見守ってくれているので、それをタイトルで表現できたのもうれしかったです。

「SID 20th Anniversary Premium FANMEETING TOUR 2023」の様子。

「SID 20th Anniversary Premium FANMEETING TOUR 2023」の様子。

──作詞をしながら、脳裏に浮かんだシーンはありました?

マオ これまでやってきたライブのことが思い出されましたね。特に日々ライブハウスに立っていた頃のこと。車1台でツアーを回ったりとか、初期のことは記憶に色濃く残っています。あとはボーカリストとしての不調も経験したので、そんな酸いも甘いも歌詞に残せるように、前向きに書かせてもらいました。

──「微風」の歌詞はマオさんが書かれた曲の中でも、すごく直球だなと思いました。

マオ そこを意識したというよりは、どのフレーズも自然に出てきたんですよね。レコーディングもストレートに書いた歌詞を伝えるには、まっすぐな歌い方がいいかなと思ったので、飾らない歌声を意識しました。下手なテクニックは使わず、自分が持つまっすぐな歌声で勝負したいと思って望みましたね。