シド、結成20周年のフィナーレ飾る初のトリビュートアルバム&新曲「微風」 (2/2)

全バンドマンが共感できる

──「微風」のギターに関しては、イントロや間奏など、随所に特徴的なフレーズを入れていますね。

Shinji 明希は「あまりテクニカルな部分は推してない」と言っていましたけど、ギターで言うとけっこう動き回るフレーズが多くて。ちゃんと覚えないと置いていかれちゃうような、アルペジオやフレーズがちりばめられているんです。その中でも心地よいというか、ちゃんと歌の間を縫ってフレーズが出てくるアレンジにしているので、難易度は高いけど弾いていて楽しいですね。

──Shinjiさんは「微風」に対して、どのような思いがありますか?

Shinji とてもいい曲だし、歌詞に関しては1行目の「夢だけ詰め込んだら 何も乗らないような ハイエース」から心をつかまれました。そこはもはや全バンドマンが共感できるフレーズというか。そういうところから歌が始まるのも小粋だなと思いましたね。この曲を聴いていると、狭いライブハウスで急な階段を行き来しながら機材を運んで、最後に缶コーヒーを持っている画が浮かんでくるんですよ。18歳から25歳くらいまで、毎週ライブハウスに行ってはそういう日々を送っていたので、当時のことがふと懐かしくなりましたね。

──ゆうやさんの歌うようなドラミングも素敵です。

ゆうや 全体を通してポップな曲ではあるんですけど、優しい方向に行きすぎないというか。そこは長年ロックバンドとしてやってきた姿勢を、楽曲の中でも出したいと思いました。今年は1曲もリリースをしていなかった中、20周年の最後に新曲を出すにあたって、どういう曲を発表しても正解だとは思うんです。そんな中でも「微風」は、僕たちらしい感じで、優しくて耳触りがいい。そんな曲を応援してくれる方に向けて作れたのが、とってもシドらしくていいなと思います。

ゆうや(Dr)

ゆうや(Dr)

タイミングに恵まれた20周年

──今年はツアーの開催やコンプリートボックス「SID 20th Anniversary BOX」のリリースなど、話題が尽きない1年でしたが、振り返っていかがですか?

マオ まずは、シドとして精力的に活動できたことがうれしかったです。その気持ちはファンのみんなも一緒で、ツアー先やSNSでもうれしい声をたくさんもらいました。特に印象的だったのが、ツアーでどこに行ってもみんなが素敵な笑顔で迎えてくれたこと。20年やってきた結果が、この笑顔につながっているんだなと思ったら、自然とこちらも笑顔になれて最高に楽しい1年でしたね。

明希 今年はライブに始まり、ライブに終わる1年で、20周年らしいにぎやかな感じをメンバーも楽しむことができました。

──特に印象に残っていることはありますか?

明希 やり残していたものも含めて、2本の大きいツアーを無事に終えられた安堵感は大きかったです。いろんな規制がある中で、どんどんいい方向に向かって、ファンの子たちと一緒に完走できたのは、当たり前のことかもしれないですけど、とてもうれしかったです。

──ライブで3年ぶりに声出しが解禁されたことも、ツアーの充実感につながっていたのかなと思います。

明希 そうなんですよね。声が出せなくなった期間も、ファンの子たちは応援してくれていたわけだし、そこから解放された喜びも一緒に味わえましたね。

Shinji 今年は通常のライブツアーもできたし、普段とは違う企画とか、今までやったことのなかった経験もできました。ただひたすらライブをやる1年も好きですけど、これからのシドの財産になるきっかけになった、そういった1年だったなと感じます。

Shinji(G)

Shinji(G)

──特に印象に残っているのは?

Shinji アコースティックライブとトーク形式のツアー(「SID 20th Anniversary Premium FANMEETING TOUR 2023」)ですね。そういったライブを単独でやることはあったんですけど、ツアーでやるのは初めて。「同じ曲でも違った表情で聴かせたいな」とか、そういう工夫をしながら回ったのを覚えています。

ゆうや 僕も充実した20周年だったなと思います。やり残していた「海辺」のツアーも無事にできたし。そもそもアルバムツアーの場合、僕らはホールに立つことが多い中、あえてライブハウスでスタンディングでやりまして。そこから声出しがオッケーになり、ライブハウスが似合うステージにできてよかったなと振り返って思います。

──20周年イヤーで声出しが解禁されたのは、運命のようにも感じますね。

ゆうや そうですね。去年とか一昨年が結成20周年だったとしたら、やれないことも多かっただろうし、未練を残す結果になったと思うんです。そこは、すごくタイミングがよかった。それに今年は、まだまだやってないことがたくさんあったんだな、と思う年でしたね。衣装の展示会もやったことがなかったし、ファンミーティングツアーも初めてやりましたし、本当にいい1年になっていますね。

「いちばん好きな場所」に向かって

──そして20周年の締めくくりとして、12月27日に武道館で「SID 20th Anniversary GRAND FINAL 『いちばん好きな場所』」が開催されます。

ゆうや ラストのお祝いという感じはありつつ、ありきたりかもしれないですが、21年目に向けての勢いを皆さんに伝えられるような、熱量の高いライブができたらと思っています。

Shinji 今年は皆さんに対して感謝の思いを感じることが多くて。恩返しというのもあれですけど、武道館ではここまでついてきてくれたファンの方に、カッコいいシドを見せたい。シンプルなことなんですけどね。それを大きな会場でできたらいいなって。

明希 僕ら的には、20年の集大成と未来を感じてもらえるような1日になったらと思っていて。ライブハウスツアーから掲げてきた「いちばん好きな場所」は、僕らにとってもファンの子たちにとっても大切なタイトルだと思うので、いい意味でライブハウスぐらい近い距離に感じてもらえるような、熱いステージを1人ひとりに届けられたらと思います。

マオ 最近すごく考えるんです。20年も応援してくれたファンのみんなや、武道館に集まってくれる人たちに対して、どうやって俺の気持ちを伝えようって。どういうライブを観たいのかなとか。観たいライブを届けることが一番の恩返しになると思ったときに、“楽しく歌ってる自分”というのが、みんなの一番観たい姿じゃないかなという結論に至ったんです。途中でいろんなことがあって、大変な姿も見せてきちゃったし、それも込みで20年応援してくれた、ファンのみんな。20周年の節目の武道館では、ただただ楽しんでいる自分、楽しんでいるシドのボーカル・マオを見せられるのが一番いいと思う。そのためにもコツコツがんばるところはがんばって、集大成として武道館を楽しむ。いいフィナーレを迎えられたらいいなと思います。

「SID 20th Anniversary Premium FANMEETING TOUR 2023」の様子。

「SID 20th Anniversary Premium FANMEETING TOUR 2023」の様子。

──武道館以降のことも聞かせてください。21年目からの活動は、どのように考えていますか?

明希 20周年でやれなかったことから始めてもいいのかな、と思いますね。周年でやれなかったことを含め、キャリアがそれなりにあるバンドだからこそ形にできるような、ファンの人も楽しめるライブだったりイベントだったり、そういう活動をしていきたいです。

マオ そうだね。ファンのみんながやってほしいこと、どういうシドが見たいかは伝わっているので、それをこれからやり続けていきたいです。ただ、期待に応えるだけだとサプライズ感がないので、みんなが「まさかそんなことをやるか!」と思うようなことも含めて、いいバランスでできたら、これから先も一緒に楽しんでいけるのかなと思います。

ゆうや これまでも自分たちなりに考えて、みんなをワクワクさせるような企画を要所要所で実現してきたと思うんです。20周年イヤーの特別な試みは12月27日で一度完結する。きっと旅行が終わっちゃったときのような、寂しさを感じると思うんですね。だからこそ期間を空けずに、ワクワクできる21年目からの旅を始めたいです。

Shinji 3人が言ってくれた通り、「こんなことやっちゃうんだ!」とか「それを待ってました!」みたいな、みんなを驚かせたり喜んでもらえたりするような、そういう活動をしていきたいなと思ってますね。これからもシドをよろしくお願いします。

ライブ情報

SID 20th Anniversary GRAND FINAL 「いちばん好きな場所」

  • 2023年12月27日(水)東京都 日本武道館
    OPEN 16:00 / START 17:00

プロフィール

シド

マオ(Vo)、Shinji(G)、明希(B)、ゆうや(Dr)からなる4人組ロックバンド。2004年1月に現在のメンバーでの活動を開始し、同年12月に1stアルバム「憐哀-レンアイ-」をリリース。2006年には初の東京・日本武道館でのワンマンライブを行った。2008年10月にアニメ「黒執事」第1期オープニングテーマに採用された「モノクロのキス」でメジャーデビュー。その後も精力的なリリースとライブ活動を続け、2010年7月には埼玉・さいたまスーパーアリーナ、12月には東京・東京ドームでライブを行う。結成10周年を迎えた2013年は初のベストアルバム「SID 10th Anniversary BEST」のリリースをはじめ、アニバーサリーライブなどさまざまな企画を実施。2020年11月より「ほうき星」「siren」「声色」と3曲の新曲を連続で配信リリースし、12月にこれらの楽曲を収録したシングルCD「ほうき星」を発売した。2021年1月14日の結成記念日には初の配信ライブ「SID LIVE 2021 ~結成記念日配信ライブ~」を、5月には山梨・河口湖ステラシアターにてスペシャルライブを開催。2023年に結成20周年を迎え、3月にアニバーサリーボックス「SID 20th Anniversary BOX」をリリースした。12月にトリビュートアルバム「SID Tribute Album -Anime Songs-」と新曲「微風」を発表。同月末に日本武道館でアニバーサリーイヤーを締めくくるワンマンライブを行う。