“心”とはなんなのか?
──「Shiny Girl」の歌詞に「今 地球(ほし)の心救う Shiny Girl」とあるように、「SHY」も“心”が1つ大きなテーマになっていますね。
Misaki そうなんです。原作の第1話から「それは人類史上もっとも心が意味を持つ時代でした」という一文が出てくるんですけど、私としては「あ、オッケー!」みたいな感じで(笑)。心は大事に決まっているし、さっきも言ったようにテルちゃんのキャラクター性に自分と近いものを感じたので、それこそ心をつかまれました。
──抽象的な質問になってしまいますが、心ってなんだと思います?
Misaki 私も具体的にはわからなくて。さくらももこさんが「そういうふうにできている」というエッセイで、ビートたけしさんとの対談の中で“魂と脳と心の関係”について語られていたのを読んだとき「おお!」と思ったんです。でも、今ここで説明できるほど詳細に覚えてはいないので、気になる方はそちらを読んでいただいて(笑)。
MindaRyn 気になる(笑)。
Misaki 自分としては、心とは、真っ先に湧き上がってくる感情みたいなものですかね。私の場合、その感情を打ち消すものがあとからやってきて、それが思考なのかなって。「あ、これがやりたい!」と思っても「いや、でもな、いろいろあるし、今はできないかも」みたいな。一方で、さっき話している最中に涙が出てきちゃったのも心が動いたからだと思うし、なんで心が動いたのかは自分ではわからないけど、過去の記憶とか経験から何かを感じ取っているのか……。
MindaRyn 難しいですね。
Misaki あと、自分はこれが好きだけど、なんで好きなのかわからないとか、そういうのってありません? 例えば私は歌が好きだけど、それは心が求めているからなのか。仮にそうだとして、心が求めていることを実際にやれたときに、魂が輝いて……「Shiny Girl」! みたいな(笑)。
MindaRyn おおー(笑)。
Misaki マイちゃんはどう? 心とは?
MindaRyn 私もうまく説明できないんですけど、理由のない、ディープな願いですね。それはお母さんとお父さんからもらったものじゃなくて、自分だけのもの。今Misakiさんもちょっと言っていましたけど、私も自分の記憶とか経験によって作り上げられた、それぞれの心があると思っているんです。その意味では、心とは「自分は誰?」という問いに対する答えみたいな、個性と似たものなのかもしれません。
本当の「Shiny Girl」になったことを伝えるために
──MindaRynさんは「Shiny Girl」のことを「テルちゃんのキャラクターソングみたい」とおっしゃいましたが、レコーディングではどういう心持ちで歌ったんですか?
MindaRyn もちろんテルちゃんのことも思いながら歌いましたし、テルちゃんは私と似ているところが多いので、自分の気持ちも入れやすかったです。歌い方については、私は当初、サビの最後の「Shiny Girl」を全部地声で歌っていたんです。でも、Misakiさんと「テルちゃんには『がんばりたい』という気持ちはあるけど、最初はシャイだったから、まだ100%の力を出せていなかったんじゃない?」という話になって。
Misaki そうだったね。
MindaRyn だから1番と2番のサビは、みんなを守りたいけどまだ不安な気持ちもあったから、あえて裏声で歌って。でも最後のサビは、いろんな人から愛をもらって本当の「Shiny Girl」になったことを伝えるために、地声で歌ったんですよ。
──へええ。Misakiさんもレコーディングに立ち会われたようですが、ほかにディレクション的なことは?
Misaki いや、今マイちゃんが話してくれたサビのところぐらいじゃないかな。マイちゃんはいつもガイドボーカルをしっかり聴いてくれて、私が歌に込めたいニュアンスを汲み取ってくれるので。
MindaRyn 「Shiny Girl」の歌い方は、今までとはちょっと違うんですよ。私の曲はロック系が多いので、普段はシャウトするようなボーカルになりがちなんです。でも今回は、テルちゃんはシャイな女の子のヒーローだから、もっとガーリーな歌い方のほうが合うんじゃないかって。
Misaki ああ、確かに。特にAメロとかは、サウンドはしっかりロックしているけれど、歌声は優しくて。その感じはスペサンとちょっと似ているかもしれない。
──「Shiny Girl」に限らずですが、Misakiさんの曲には独特の爽快感、あるいはみずみずしさがありますね。
MindaRyn うんうん。「Make Me Feel Better」とか「BRAND NEW OLD」(いずれもアルバム「My Journey」収録曲)のメロディもすごくさわやかで。Misakiさんはそういうタイプの曲を作るのがとてもお上手だと思います。
Misaki そういう担当なのかなって、自分では受け止めています。いろんなタイプがあるマイちゃんの曲の中で、私は“さわやか担当”みたいな。私自身、自分で歌っていてもさわやかな、楽しい気分になれる曲は好きですね。
──MindaRynさんに書いた曲だけど、自分で歌いたいと思ったことは?
Misaki めっちゃあります(笑)。さっき、自分の中で切り分けているとは言いましたけど「これ、うちのバンドでやりたい!」とメンバーに話して、「BLUE ROSE knows」と「Make Me Feel Better」はYouTubeでカバーしちゃいました。
MindaRyn 「Shiny Girl」のカバーも待っています。
Misaki やりたいやりたい。めっちゃやりたい。
夢を終わらせないために、続けていく
──MindaRynさんは2020年11月にアニソンシンガーとしてデビューしました。そこから3年弱の間に、アニソンを歌うときの気持ちなどに変化はありましたか?
MindaRyn 変わったというより、強くなったと思います。私は「アニソンはすごいな!」という気持ちを最初から持ち続けていて。アニソンにはアニメのストーリーやキャラクターの心情が込められていて、アニソンを聴けばそれが主題歌になったアニメも思い出せる。そこがアニソンの魅力であり、私がアニソンを好きな理由なんです。そういう気持ちが、アニソンシンガーになってからどんどん強くなっていて。例えば最近だったら、「アニサマ」(「Animelo Summer Live」)で先輩方のライブを観てもアニソンのパワーを感じましたし、それに対してお客さんも「オイ! オイ!」って、ものすごい熱量で応えてくれる。本当にみんなの魂が1つになっているんですよ。
Misaki 確かに、バンドのライブとは熱量の種類が違う気がする。
MindaRyn あ、今思い出したんですけど、変わったこともありました。私はアニソンシンガーになる前は、アニソンシンガーは歌でみんなにパワーをあげられるからすごいと思っていたんです。でもそうじゃなくて、実は歌っている側も、聴いてくれている人たちからいっぱいパワーをもらっている。もちろんこれはアニソンシンガーに限った話じゃなくて、パフォーマンスをする人は皆さんそうだと思うんですけど、自分がステージに立って初めてわかりました。
Misaki そうだよね。聴いてくれる人がいるから、自分もがんばれる。
MindaRyn あの、私はMisakiさんに1つ聞きたいことがあったんですけど、今いいですか?
Misaki もちろん。
MindaRyn Misakiさんは中学生のときからバンド活動をずっとやっていますけど、バンドを続ける理由というか……例えば、何かつらいことがあってもあきらめずに進んでいける、その原動力はなんですか?
Misaki ああー。スペサンは今年で結成18年目なんだけど、最初は自分のためにやっていたのね。でも、それだけだとダメになってきちゃったから、「誰かのために」みたいなモードに入り始めて、さっき言ったようにみんながいてくれるから続けられるという状況にだんだん変わってきて……今は、なんだろう? やっぱりまだ夢もあるし、2025年が結成20周年だから、そのときは武道館でやりたいとか、そういう目標もできてきた中で、シンプルに「やめたら終わりだな」と思ったのかな。
MindaRyn うんうん。
Misaki やめたら夢も何も全部なくなっちゃうし、スペサンのことを好きでいてくれている人たちも、きっと悲しむ。でも続けてさえいれば、可能性は残る。じゃあ、ここで立ち止まってちゃいけないなって。今までもいろんなことがあったけど、何年か経ってから「続けてよかったな」と思える日が何度かあったから、またそういう日が来ると思うと続けられる。今はね。
MindaRyn 素敵。私はまだ3年しか活動していないので、これからの話だけど。
Misaki じゃあ、私からもマイちゃんに質問するね。これからどうなっていきたい?
MindaRyn それ、一番難しい質問!(笑)
Misaki 聞かれたら一番困るやつだよね(笑)。
MindaRyn 正直に言うと、その質問の答えは「わかりません」です。私の夢はアニソンシンガーになることだったので、それが叶った今、次の夢を探しています。ただ、例えば1つの目標として大きな会場でライブをすることを考えても、テルちゃんみたいに「自分にできるかな?」と自信が持てないこともあって。
Misaki 私もそうだった! 昔、レーベルの人に「どこでライブやりたい?」とか、よく目標を聞かれていて。当時の私は「Zepp? QUATTRO? どこにあるの?」みたいな。マイちゃんのところはそんなことないと思いますけど(笑)。
MindaRyn そんなことあります(笑)。
Misaki でも、きっとだんだん見えてくる……のかな? 私も最近ですもん。「武道館でやりたい」と思うようになったのは。
MindaRyn さっき「アニサマ」に行った話をしましたけど、関係者席からペンライトの海を見たんです。それがめっちゃきれいで、いつか私もステージからあの景色を見てみたい。そういうやりたいこと、やったことがないことが、まだまだたくさんありますので。
Misaki いいな。私も今の話を聞いて、ペンライトの海を見てみたいと思いました。バンドのライブでは誰も持っていないので。
MindaRyn あんなふうにオタクの皆さん……いや、私もオタクの1人なんですけど、みんなをつなぐことができるなんて、やっぱりアニソンはすごい。しかも、たとえそのアニソンを歌っているアーティストのことをよく知らなくても、アニメを知っていれば一緒に盛り上がれる。私は「アニサマ」のメインステージじゃなくて、外会場のけやきひろばのステージで歌ったんですけど、たぶんあの場にいた人の80%ぐらいは私のことを知らなかったと思うんです。でも、歌い始めたらめちゃくちゃ盛り上がってくれて。それがとても素敵な思い出になっているので、今はこの夢を終わらせないために、続けていくことを一番に考えていきます。
Misaki 続けよう続けよう!
プロフィール
MindaRyn(マイダリン)
タイ出身のアニソンシンガー。幼少期より父の影響で日本のアニメに触れ、次第にアニメの主題歌を覚えて歌い始める。大学生になると、アニソンカバー動画の投稿を中心にYouTuberとしての活動をスタート。現在のYouTubeチャンネルの登録者数は110万人以上、動画の総再生数は約1億回を超える。2020年11月にテレビアニメ「神達に拾われた男」エンディングテーマ「BLUE ROSE knows」をリリースし、Lantisよりアーティストデビュー。その後も「転生したらスライムだった件」「ありふれた職業で世界最強」「サクガン」「神達に拾われた男2」「彼女が公爵邸に行った理由」、特撮ドラマ「ウルトラマンブレーザー」といった数々作品のテーマソングを担当する。2023年11月にテレビアニメ「SHY」のオープニング主題歌を表題曲としたシングル「Shiny Girl」をリリース。9月に東京・浅草花劇場で1stライブ「MindaRyn 1st LIVE “My Journey”」を開催した。
Misaki(ミサキ)
SpecialThanksのボーカル、ギター担当。2005年、Misakiが中学3年生のときにSpecialThanksを結成した。その後メンバーチェンジを行いながらも、毎年新曲をリリース。2023年より、現体制のツーピース体制で活動している。2023年2月にEP「Sweet pea E.P.」を配信リリース。12月に東京・UNITで自主企画イベント「Fusion Illusion vol.2」を開催する。
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