SHOCK EYE&HAN-KUN(湘南乃風)×加山雄三鼎談|湘南の海を背に名曲「海 その愛」を歌い継ぐ

湘南の海かカリブの海か

──お二組が出演されたときの「うたコン」は“湘南サウンド”特集でした。HAN-KUNさんとSHOCK EYEさんが、“湘南サウンド”と聞いて連想するものはなんですか?

HAN-KUN サーフミュージックとかかな。あとは、渚みたいなキラキラした感じ。

──自分たちの音楽への影響はありますか?

HAN-KUN 僕たちはレゲエだからちょっと角度が違うけど、キラキラした部分はあるかな。音で言うとスネアのキラっとしたリバーブ感とか。

SHOCK EYE やっぱり加山さんをはじめ、サザンオールスターズさんとかTUBEさんとか、そういう海を連想させる日本のポップスのサウンドからもめちゃめちゃ影響を受けてると思います。ただ、レゲエはカリブの海だから。最初、僕らの中で湘南の海とカリブの海ってイメージがかけ離れてたんですよ。だけど、ある時期からぐっと近付いて、「睡蓮花」あたりはそのハイブリッドというか。ちょうど間を取れたのが、あの頃からのような気がします。

──加山さんは湘南と言われて浮かぶのはどのようなイメージですか?

加山 俺は、湘南といったら自分が育ったところだから、いつ誰が湘南と言い出したのか、それを知りたいなとずっと思ってるんだよ。中国が始まりなんだよね。中国に湘南という場所があって、そこの海岸と似ているから湘南になったって、うちの親から聞いた。

SHOCK EYE へー、そうなんですか。

加山 そこで育ったわけだからさ。「海 その愛」を作ったこと自体が、俺が湘南から受けた影響の1つなわけだよ。

命を救った「海 その愛」

──皆さんは、湘南で好きな場所や思い出の場所はありますか?

SHOCK EYE

SHOCK EYE 僕は由比ヶ浜です。小学生のときに毎日犬の散歩をしてたのも、ヤンチャしてた頃に夜な夜な溜まっていたのも、一瞬だけボクシングをかじったときにランニングしに行ったのも由比ヶ浜。この前も子供を連れて由比ヶ浜に行ったし、家族で海水浴に行った思い出も由比ヶ浜だし、結局一番好きな場所ですね。

HAN-KUN 由比ヶ浜もそうだし、江ノ島もそうだし。それこそ加山さんが育った茅ヶ崎も、僕が初めて歌ったのが茅ヶ崎のクラブだったんで、いろんなところに思い出が詰まってます。

加山 俺はいろいろあるけど、茅ヶ崎の海岸線から1.4kmのところに、えぼし岩(茅ヶ崎海岸の沖にある無人の岩礁群。正式名称は姥島)があって、14歳のときにあの島に行ってみたくてしょうがなくて。泳いで行くにはちょっと遠いなと思って、しょうがないから自分で乗れる船を作っちゃったの。材木屋で買ってきた四分板と角材で骨組みを作って、一人乗りのつもりが3人乗っても平気だったんだけど、その船ができたわけ。

HAN-KUN すごいな、その話。

加山 で、どれくらい時間がかかるかわからないから、一升瓶に水を入れて握り飯を1つ2つ持って漕ぎ出したら、なんのことはなく15分で着いちゃった(笑)。なんだよ、こんなに近いのかよって(笑)。

──船で行くと思ったよりあっという間だった(笑)。

加山 そうなんだよ。でも、それが病みつきになって、それ以来、岩にしょっちゅう行って。やがて、俺と同い年の従兄弟に船を漕がせて、俺は泳いで行くようになったの。泳いで行くときは、潮の流れを読んで行かないと時間がかかるし、島にたどり着けない。あるとき島に行って遊んでたら、誰かが泳いで来るの。まっすぐこっちに向かってくるんだけど、あの距離であの角度だと、潮の流れ的にマズイなと思ったのね。近くまで来たんだけど、そこから全然動かない。一生懸命泳いでるんだけど、全然進まない。で、手を挙げたんだけど、その手がだんだん弱々しくなってきて。

SHOCK EYE 危ない! 危ない!

加山 これはダメだと思って俺が助けに行ったんだよ。で、島に引っ張り上げてさ。たまたま漁師の船が通ったから合図して呼んで、それに乗って帰っていった。それからしばらくしたらさ、ライブハウスに変なオヤジが来たんだよ、「挨拶をしたい」って。「まあ、わかった」って楽屋に通したら、「この間助けられた者です」って(笑)。

──きちんとお礼に来られたんですね。

加山 あとは、「海 その愛」を歌いながら3日間漂流して生き延びたっていう人もライブハウスに挨拶に来たことがあった。

HAN-KUN それはどんな話なんですか?

加山 その人はね、大島から泳いで渡って来ようと思ったらしい。だけど、大島と三浦半島の間くらいから銚子の方向に流されちゃったんだよな。漁船が通ればいいのに、通らない。これは助からないと思いながらも、まだ浮かんでる、まだ生きてる。でも、そのうちどんどん暗くなってくるんだよ。で、どうやって自分を元気付けようかと考えて「海 その愛」を大きな声で歌ったんだって。

SHOCK EYE なるほど。

加山 大きな声が出るうちはまだ大丈夫だと思ったらしく。で、3日間漂流してやっと漁船に助けられて帰ってきた。その人も挨拶に来たんだよ。「漂流したときに『海 その愛』を歌いました。助けられました」って。

HAN-KUN 命を救った歌でもあるんですね。

加山 そう。「海 その愛」は、本当にエピソードがいろいろある歌なんだよ。茅ヶ崎の雄三通りにある商店街のPVにも「海 その愛」を使ってくれてるし、みんなに愛されてる曲だよね。

海には何もないけどすべてがある

──皆さんが海からもらったもの、学んだことはなんでしょう?

加山 こないだひさびさに歌ったら「でっかい声ですね」ってみんなに言われたんだよ。大きい声になったっていうこと自体が海からもらったものだと思う。海岸は音を吸い込んでしまうからでっかい声でしゃべらなきゃならない。で、いつの間にか声がどんどん大きくなっていったんだと思う。それは湘南の海に感謝だね。

HAN-KUN  僕は泳ぎがあまり得意じゃなかったんですよ。だから、友達と海に遊びに行くと、みんなは「あそこのブイまで泳ごうよ」ってバーッと泳いで行っちゃうんですけど、俺は行けないから試されてる感があって。でも、泳げないなりに必死に泳いでブイまで行って返ってくるっていう。それを繰り返してたおかげで泳げるようになったんですよ。だから、海から教わったのは度胸です。「やってやる!」っていう。

SHOCK EYE 僕は困ったらとりあえず海に行くんです。そうすると何かもらえるというか。街で生きてると、イベントや買い物に出かけたり、何かモノありきで楽しむことが前提になっちゃうけど、子供を海に連れて行くと、貝殻を探したり、ただ波が寄せて返すだけでも楽しそうに遊んでる。僕、最近カメラにハマってるんですけど、夕陽とか朝日とか水面に反射する光とか、海ってすごくきれいで。あれも都会にいたら感じられないし、海の素晴らしさは離れてみてわかりましたね。海には何もないけどすべてがあるというか。そういうことに気付かされます。

左からSHOCK EYE、加山雄三、HAN-KUN。

湘南の海を背に

加山 今ふと気付いたけど、この曲は7月14日発売なんだね。俺の長男の誕生日だ。

SHOCK EYE そうなんですか!? 偶然ですね。

加山 それから「浜降祭」っていう茅ヶ崎のお祭りの日だよ。今、それを思い出した。すごくいい日だよ、7月14日は(笑)。(※「浜降祭」は、現在は海の日に斎行)

──楽曲をリリースしたあとは、ライブパフォーマンスでコラボできる機会があるといいですね。

加山 やりたいけど、なかなか難しいよねえ。今の世の中じゃさ。どこかの場所を借りて、そこで映像を撮って配信する以外にないんだよ。

SHOCK EYE まずは、そうですね。

加山 俺だってパフォーマンスやりたいさ。だいぶ前だけど、TUBEが鵠沼の浜辺を貸し切って、お客さんを1万人以上入れてライブをやったんだよ。俺も一緒にステージをやったんだけど、本当にああいうことがまたできたらいいなと思うよね。湘南乃風だって、湘南の浜辺に1万人ぐらいドーンと入れられるだろ?

SHOCK EYE 湘南の海を背にしてやりたいですね。

加山 絶対やった方がいいと思うよ。できたら最高だと思う。

SHOCK EYE どんな形でも機会があれば、今度はぜひライブでご一緒させてください!

HAN-KUN よろしくお願いします!

湘南乃風 公演情報(終了分は割愛)

風伝説 TOUR 2020 四方戦風 ~ぶっ飛べ クソアツい 粋な祭り 頂け一番~(振替公演)
  • 2021年7月14日(水)大阪府 フェスティバルホール
  • 2021年7月15日(木)大阪府 フェスティバルホール
  • 2021年7月23日(金・祝)北海道 カナモトホール(札幌市民ホール)
  • 2021年8月6日(金)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
  • 2021年8月8日(日・祝)静岡県 アクトシティ浜松 大ホール
  • 2021年8月14日(土)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2021年8月15日(日)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2021年9月4日(土)広島県 広島文化学園HBGホール
  • 2021年9月5日(日)山口県 周南市文化会館
  • 2021年9月20日(月・祝)宮崎県 メディキット県民文化センター演劇ホール
  • 2021年10月25日(月)東京都 東京ガーデンシアター
  • 2021年10月26日(火)東京都 東京ガーデンシアター