SHOCK EYE&HAN-KUN(湘南乃風)×加山雄三鼎談|湘南の海を背に名曲「海 その愛」を歌い継ぐ

「湘南」というキーワードでつながる湘南乃風と加山雄三による夢のコラボが実現した。7月14日にリリースされた湘南乃風の新曲「湘南乃『海 その愛』」は、湘南出身の大先輩・加山雄三の名曲「海 その愛」のオリジナル音源を使用し、湘南乃風が最大のリスペクトを込めて新たな命を吹き込んだ作品だ。この楽曲のリリースを機に、音楽ナタリーは湘南乃風のSHOCK EYEとHAN-KUN、加山雄三による鼎談を企画。この楽曲がいったいどのようにして生まれたのか、2組が共演した音楽番組での出会いや、楽曲制作へのこだわりについて話を聞いた。また鼎談の後半では、湘南をめぐる3人の思い出や、海にまつわる加山の青年時代のエピソードなども語られる。

取材・文 / 猪又孝 撮影 / 山崎玲士

夢のような出会い

──このたび湘南乃風が加山雄三さんの「海 その愛」を使用した楽曲をリリースすることになった経緯から教えてください。

HAN-KUN 昨年、NHKの「うたコン」という音楽番組で加山さんとご一緒させていただく機会があったんです。お会いできたことだけでも本当にうれしかったんですけど、一緒に写真も撮っていただいて、肩まで組んでもらって。夢みたいだなと思いながら、帰りの車の中でスタッフに「いつか一緒に楽曲を作れたらうれしいよね」って、ふわっとした感じで話したんです。そしたら、スタッフがそれを加山さんサイドに伝えてくれて、「もしかしたらやらせていただけるかもしれないですよ」って言われて。「え、そんなことあるの?」って。

SHOCK EYE すごく驚きました。

HAN-KUN

HAN-KUN そう。ちょっと空とか見上げながら、独り言のようにつぶやいただけなのに(笑)。そんな夢みたいな話が叶うんだって。

SHOCK EYE そのとき加山さんの楽屋にご挨拶させていただけたんですけど、丁寧に対応してくださって。僕たちのCDを差し上げたんですね。「よかったら聴いてください」って。そしたら加山さんはその場で封を開けて、ブックレットを開いて1曲1曲「これはどんな曲なの?」って聞いてくださったんです。すごくうれしかったです。

──SHOCK EYEさんは、その音楽番組の収録時のエピソードをブログにつづっていましたが(参照:親孝行になったかな。 | SHOCK EYEオフィシャルブログ「ニレイニハクシュイチレイ。 ~感謝から始める一日~」Powered by Ameba)、お父さんが加山さんの大ファンだったそうですね。

SHOCK EYE そうなんです。僕が小さい頃、家族旅行代わりに車で2、3時間ドライブして、よく近場の湖やダムに出かけていたんですけど、そういうときに車の中で加山さんの曲がカセットテープでずーっと流れていて。それが自分の中でめちゃくちゃいい思い出の1つなんですよ。しかも、親父が若い頃周りから「加山さんと顔が似てる」と言われていたらしくて。

加山雄三 番組でも言ってたよね。

SHOCK EYE それを番組スタッフに話したら、親父の写真が欲しいということになって。おふくろに連絡したら親父の写真が10枚も送られてきたんですよ(笑)。その中から1枚だけ番組で紹介させてもらいました。

──それがブログにも載せていた写真ですか?

SHOCK EYE そうです。でも当時から加山さんのほうが全然カッコいいと思ってました(笑)。実際お会いして、やっぱりカッコよかったです。でも、そういう思い出もあるから、番組で共演させていただいた日はすごくうれしかったんです。

時を超えて歌い継がれる名曲

──加山さんは湘南乃風に対して、どんな印象を持たれましたか?

加山 とにかくね、湘南という名前をグループ名に付けてるのがすごいと思ったね。しかも、そこの風と来たもんだ(笑)。「湘南乃風!? へー、すごい名前だな」と思って、興味を持って聴いてみたら、彼らが音楽を愛していることがすごくわかった。音楽を愛していることは最高にいいことだよ。

──加山さんにはたくさんの名曲があります。その中から「海 その愛」を選んだ理由は?

HAN-KUN この楽曲は加山さんの代表曲ですし、加山さんには“湘南の海を背に大きな舞台に立って、人生を歩んできた方”という印象があるんです。僕たちもその背中を見ながら、同じ湘南の海を背にしてサバイブしていきたいという気持ちがあったので、この楽曲を使用させてもらうことで、湘南という土地から音楽を発信するアーティストとして、少しでも現代にバトンをつなげたらと思ったんです。

加山 過去の自分の楽曲が今の人たちに歌い継がれる。こんなありがたい話はないと思うんだ。俺は音楽っていうのは世界共通の言葉だと思ってるんだよ。時を超えて、場所を超えて、音楽で通じるものがある。100年前の曲でも、今の人が歌詞を付けて歌えば今の曲になるんだよ。「Everyday I listen to my heart」(平原綾香「Jupiter」を口ずさむ)……あれ、ホルスト(グスターヴ・ホルスト)の100年前の曲だよ。それが今のヒット曲になっちゃうわけだから。湘南乃風が今の新しい音を作る。その中に俺の曲をちょっと入れてくれた。年代を超えて聴いてもらえるっていうのは一番ありがたいこと。音楽と携わってきてよかったなとつくづく思ったね。

左からSHOCK EYE、加山雄三、HAN-KUN。

音楽は世界共通の言葉なんだよ

──トラック作りはどのように進めていったんですか?

HAN-KUN レゲエのアレンジにしたいと思ったので、知り合いのSTAND ALONEというトラックメイカーにイメージを伝えながら、ある程度、僕がベースとなるものを作りました。そこにリリックを少し添えて、「こういうイメージで作っていきたい」とメンバーに伝えたんです。

──加山さんのオリジナルのボーカルテイクを使用しているんですか?

HAN-KUN そうです。それがハマるように、原曲のコードを生かしつつ、トラックを作っていきました。オーセンティックなレゲエにするのが一番いいかなと思ったんで、ビートも含めてそこを目指しましたね。

──ビートメイクでこだわった部分は?

HAN-KUN 全体的に生音感は出したかったんですけど、現代のサウンド感も提示したかったんで、ドラムに関しては打ち込みで作って。そのあとジャマイカに音源を送ってジャマイカのギタリストにギターを加えてもらったんです。だから、ちゃんと本土の風も入ってる。

加山雄三

加山 新しいよね。俺もある時期、レゲエに凝ったことがあるんだよ。レゲエのリズムの新しさにすごくハマってる時期があって。そういう新しいリズムを採り入れてくれたってことは、ほかにもいろいろアレンジできる可能性を見せてくれてるようなものじゃない。「やったね」と思ったね(笑)。

──アウトロの、ドラムだけになる部分は和太鼓の音のようにも聞こえたんですが、どんなイメージから作ったんですか?

HAN-KUN あれは足音とハンドクラップです。「ドンドン、パン!」っていう。

加山 あの「ドンドン、パン!」は、ものすごくリズムがいいんだよ。「海 その愛」にぴったり。

HAN-KUN ありがとうございます。

加山 Queenの「We Will Rock You」のリズムをそのまんま入れてる。やっぱり音楽は世界共通の言葉なんだよ。

HAN-KUN 勝手なイメージですけど、もしステージで加山さんとご一緒できたら、最後は会場全員でこの曲を歌えたらいいなと思って。そういうときにお客さんも一緒に楽しめることを考えたら、「ドンドン、パン!」っていうシンプルなリズムがいいと思ったんです。実際の音作りでもドラムと足音を混ぜてるんですけど、和太鼓のように聴こえたのは、リバーブを強めにしてるからじゃないかな。

──なるほど、そうだったんですか。あの「ドンドン」という音が打ち上げ花火の音のようにも聴こえたので、夏の海を感じさせるいい演出だなとも思ったんです。

HAN-KUN それ、いいですね。今後、それを狙ったっていうことにしていいですか?(笑)

SHOCK EYE 湘南の海だし、ぴったりだね(笑)。

左からSHOCK EYE、加山雄三、HAN-KUN。

男ならば

──歌詞は「海 その愛」の世界観と重ね合わせながら、どのようなイメージで書き進めたんですか?

SHOCK EYE 「海 その愛」には、海に出ている男の背中というイメージがあって。僕の親父も海が好きで小さなヨットを持っていて、小学生の頃、たまに連れられて乗っていたんです。あとは防波堤で投げ釣りをしたり。それが親父との思い出なんです。そんな親父に今まであまり親孝行をしてこなかったから、この曲でしようと思って、何か海のシーンを入れようと思いました。あと、「海 その愛」という楽曲を湘南乃風が預からせていただくっていうところで、“伝承する”とか“継承する”ということを考えて。僕も父親になったので、親父から僕がもらったものを、自分の息子に渡していきたい。そういう気持ちを伝えたくて自分のパートを書きました。だから歌詞に出てくる「浜辺に二つの影」というのは、僕と息子でもあるし、親父と僕でもあるんです。

HAN-KUN 僕は加山さんの歌詞を自分の中に取り込んで、受け継いで、自分なりに解釈して書いていきましたね。「飛び出せ大海原に」っていう歌詞が出てくる最初のパートは、湘南乃風という船に乗って、僕が一番手になって旗を振ってるイメージ。それに続いて、ほかのメンバーがバース順に立ってるっていう感じです。だから、僕は特攻隊長みたいな、切り込み役ですよ(笑)。

SHOCK EYE 湘南乃風は、それぞれのパートは各自に任せるっていう歌詞の作り方が多いよね。そのほうがいいものができるんですよ。今回は「海 その愛」という楽曲の世界観という大きな軸がちゃんとあったので、その上で個々に自分の伝えたいメッセージを自由に入れていくっていう。

HAN-KUN 4人で歌うパートは僕がベースとなるリリックを書かせてもらったんですけど、「海 その愛」という楽曲には、“男ならば”というメッセージをすごく感じるんです。男の強さや、湘南の海の男っていうところを加山さんから感じたので、そこは僕たちも男として言葉にしていきたいと思ったんです。