作品の幅が広がった「もっと少年キッズボウイ」

──そしてこのたび、メジャー1st EP「もっと少年キッズボウイ」がリリースされました。ソノダマンさんはこの作品をどう捉えていますか？

ソノダマン　めちゃくちゃいいです。先にリリースされた3曲（「キスをしようよ」「下北沢ターミナル」「エバーグリーン」）がそもそも素晴らしいし、「海を見に行く」は再録。その時点でいい作品になることは確定なので。

アキラ　うれしいです。

山岸　ありがとうございます！

ソノダマン　もちろん新曲も全部よくて。リード曲の「スペランカー」、最高ですね。

こーしくん　やった（笑）。

ソノダマン　このタイトルは、某ゲームから来てるんですか？

こーしくん　某ゲームですね（笑）。“マリオの死体がいっぱい転がっている”みたいなネットミームがあるんですけど、ゲームの「スペランカー」もどんどんキャラクターが死んじゃうんです。「そいつらを踏み越えてがんばろう」という曲ですね、これは。

ソノダマン　ロック感も強いですよね。

こーしくん　そうですね。最近、山岸くんも曲を作るようになって。今回のEPで言うと「ムーンライト・レビュー」「下北沢ターミナル」がそうなんですけど、山岸くんと差別化を図らないと自分が干されるかもしれないという恐怖がありまして（笑）。だったら山岸くんが作れないロックをやろうかなと。

アキラ　めっちゃ意識してる（笑）。

山岸　「スペランカー」はEPの中でギターが一番歪んでますからね。メジャー1st EPでこういう曲をリードにできたのは、バンドとしてすごくカッコいいなと思います。

ソノダマン　そうですよね。山岸さんが作った「ムーンライト・レビュー」「下北沢ターミナル」がまったく違うタイプの曲なのもすごくよくて。こーしくん、山岸くんの曲のコントラストがはっきり出てますよね。

こーしくん　そうなんですよね。

ソノダマン　「ムーンライト・レビュー」は情景が浮かんでくる曲で、月がきれいな夜に聴きたいなって思いました。これまでは基本的にこーしくんが曲を作っていて、「天才だ……」と思ってたんだけど、さらに山岸くんも曲を作るようになって。「すごい曲を作る人が2人もいる！」っていう。

山岸　「少年キッズボウイで曲を作るなら、こういう曲がいいな」みたいなものをちゃんと形にできたのはよかったです。

ソノダマン　こーしくんの曲には、どこかに怒りが入っている気がして。山岸くんの曲にはそういう感じがないし、2人の人間性が出てますよね。

こーしくん　僕が怒りんぼみたいじゃないですか（笑）。

ソノダマン　いやいや（笑）、パンクが原点にある人の曲だから、社会に対する思いだったり、ちょっと暗い部分があるのかなと。

こーしくん　確かにそれはあるかも。

山岸　そういうものを曲に落とし込むのは、自分にはできないですね。レコーディングのときもディレクターに「山岸の曲には憂いが一切ないね」と言われました（笑）。

2026年、どこでライブをしたい？

──アキラさんはどうですか？ 曲の幅が広がったことで、アキラさんの歌う楽しみも増えたと思うんですが。

アキラ　そうですね。「ムーンライト・レビュー」は私が好きなピチカート・ファイヴのテイストがあって。ボーカルもそこを意識しようと企んでいたら、スタジオで山岸に「野宮真貴さんのイメージで」と言われて、「やっぱりそうだよね」って（笑）。

山岸　今回のEP、アキラのボーカルが全部いいんですよ。

アキラ　ありがとう。

山岸　「下北沢ターミナル」の歌もすごくいい。ニュアンスとか表現力がめちゃくちゃ上がってるんですよね。

ソノダマン　ライブを観ていても感じますね、それは。

アキラ　いつもライブレポートでも書いてくれてますよね。

ソノダマン　ボーカルの変化はリスナーからすると一番わかりやすいですからね。「海を見に行く」の歌もすごくよくて。今のメンバーでレコーディングするのは初めてだし、あるべき形になったのかなと。新曲も早くライブで聴きたいです。

山岸　ありがとうございます。来年1、2月にワンマンを含むツアーがあるので、そこでは全曲披露するんじゃないでしょうか。そういえばソノダマンさん、Xでライブの告知してくれてましたよね。「下北沢ターミナル」を出したときに、小田急線の下北沢駅でバンドのポスターを掲載していただいて。10月15日に下北沢でフリーライブをやらせてもらったんですけど、その前にソノダマンさんが「フリーライブもあるのでぜひ観に行ってください」みたいなポストをしてくれたんですよ。

ソノダマン　知ってもらいたいじゃないですか、やっぱり。少年キッズボウイの曲を聴いたことがない人もいっぱいいるだろうし、まだまだ届いてないなと思うこともあって。聴けば絶対に「いいな」と思うはずなので。

アキラ　うれしいなあ……。

山岸　レポートでも「もっと広い場所でやってほしい」と書いてくれてましたね。どこで観たいですか？

ソノダマン　野外で観たいですね、個人的には。

こーしくん　いいですね。「GREENROOM FESTIVAL」に出たい（笑）。

ソノダマン　似合いそう。

山岸　「フジロック」（「FUJIROCK FESTIVAL」）も出てみたいですね。

こーしくん　海か山か（笑）。

──ソノダマンさんが今後の少年キッズボウイに期待することは？

ソノダマン　まずは来年のツアーを全部ソールドアウトしてもらって。次はもっとデカいところでやってほしいです。バンドが大きくなるとこちらもうれしいので。

山岸　ありがたいです。メジャーデビューを発表したとき、僕らが思った以上に「おめでとう」という声が寄せられました。

こーしくん　バンド名に“少年”が入ってるから、ファンが親目線で見てくれてるんだろうね。成長したねって（笑）。

ソノダマン　そのほうがメンバーも潤うだろうし、バンドも続けやすくなりますからね。

山岸　それはめっちゃ感じてます。ずっと話しているように、働きながらバンドを続けたいんですけど、社会が待ってくれないというか。結婚したり、仕事で出世したり、いろんな変化の中で関係性も変わってくるんですよね。その中でどうやってバンドと両立させるかを考えると、せっかくメジャーにいるんだし、売れるのが一番近いのかなと。ソノダマンさんはレポートも書かれてますけど、そっちを仕事にしてやっていこうと思ったことはないですか？

ソノダマン　そうですね……。仕事はお金を稼ぐ手段としか思っていないんですけど、独立してやっていくほど自発的ではないというか、ちょっとめんどくさがりなんですよ（笑）。ただ、圧倒的に時間が足りないというのは感じていて。時間があればもっと曲を聴きたいし、ライブも行きたいんですけどね。

こーしくん　僕も時間は足りないですね。「スぺランカー」の歌詞、実は会社のトイレから納品したんですよ（笑）。

ソノダマン　すごい（笑）。そうやって忙しくやってるほうがいいのかもしれないですね。