Shohei Takagi Parallela Botanica|cero髙城晶平が初のソロ作品で突き詰めたローファイ的感覚

ceroの髙城晶平によるソロプロジェクト、Shohei Takagi Parallela Botanicaがいよいよ本格始動する。昨年1月に東京・渋谷CLUB QUATTROで突如初ライブを行いその動向が注目されていたが、このたび1stアルバム「Triptych」をリリース。その全貌がついに明らかとなった。

共同プロデューサーに迎えられたのは、Shing02やgrooveman Spotとの共作でも知られるSauce81。本作には光永渉(Dr)などceroでもおなじみのプレイヤーたちも参加しているものの、ceroとは異なり、くぐもった音像のディープな歌世界が広がっている。音楽ナタリーでは髙城にインタビューを行い、3曲3部構成というコンセプチュアルな内容となった本作の背景について話を聞いた。また特集後半では、細野晴臣、折坂悠太、山下敦弘、こだま、BIM、中村佳穂といった6名の著名人によるアルバムについてのコメントを掲載している。

取材・文 / 大石始 撮影 / 沼田学

大きな可能性を感じたceroの有料ライブ配信

──「Triptych」の話を聞く前に、3月13日に行われたceroの有料ライブ配信について話を聞かせてください。新型コロナウイルスの影響で「TOUR 2020 "Contemporary Tokyo Cruise"」仙台公演の開催延期が公表されたのが3月6日の夜。その約1週間後にライブ配信が行われ大きな話題を呼びました。かなりギリギリのスケジュールだったと思うんですが、ライブ配信というアイデアは何日前ぐらいから出ていたんですか?

髙城晶平

開催延期の決定もかなりギリギリまで調整していたんですけど、やっぱり難しいだろうと。仙台公演の延期を発表するその日に荒内(佑 / cero)くんが配信のアイデアを出してきたのかな。実現の方法をみんなで探って、どうにかあの形に落とし込んだ感じでしたね。

──無料配信はさまざまなアーティストがやっていましたけど、ceroの場合は電子チケットを販売し、購入者は一定期間アーカイブを観られるというシステムでしたね。

カクバリズムのスタッフがちょうど電子チケット販売プラットフォームの会社と打ち合わせをしてきたところで、タイミングがよかったんですよ。最初はこれだけいろんなアーティストが無料で配信してる中で、有料でやるのはどうなんだろう?と思ってたんです。でもやってみたらいい反応ばかりで、ちょっと驚いてしまった。無料配信ってフジロックやコーチェラもやるようになりましたけど、大きな会社はともかく、カクバリズムみたいに決して大きくない会社が無料でやるのは厳しいところもあって。自分たちの身の丈に合った形でやれればと思って、自分たちは有料でやらせてもらいました。

──その意味では、 こうした有料配信はコロナ以降も有効なやり方だと思うんですよ。1つの可能性を示したともいえるんじゃないかと。

うん、僕も可能性を感じましたね。今回はVIDEOTAPEMUSICくんにも入ってもらって、VIDEOくんがやってるときはceroがお客さんになり、ceroのときはVIDEOくんがお客さんになるという演出をやってみたんですね。ああいうスタイルってカクバリズムのカラーにも合ってる気がしていて。有料制のコンテンツの1つとしてやっていくのも面白そうですよね。

人は個人として確立したうえで集団であるべき

──では、Shohei Takagi Parallela Botanicaというソロプロジェクトについてなんですが、どういった経緯で今回のプロジェクトを始めることになったんでしょうか。

ceroの3rdアルバム「Obscure Ride」を出した2015年の末ぐらいにメンバー3人でソロアルバムの話をしたんですよ。「ソロをやろうと思ってるんだけど、自分だけじゃなくて3人それぞれがやったほうがいいんじゃないか」って。ほかの2人も「だったらやりたいことがある」と。それをカクバリズムに話してみたら「ceroでもう1枚アルバムを出してからにしよう」ということになって、2018年に「POLY LIFE MULTI SOUL」を作ったんです。

──髙城さんは2015年の段階でソロアルバムを作りたいという思いがあったわけですよね。その動機はどんなものだったんですか?

髙城晶平

いくつかあって、自分個人の音楽をやってみたいという単純な動機がまず1つ。もう1つは、集団に依拠しすぎるのは危険なところもあるな、とその頃から思い始めてたんです。

──危険?

そうですね。ceroというバンドは高校時代からそのまま続けているわけで、本当にうまくいっているんですよ。メンバーで集まるとすぐに高校時代に戻ることができて、「今この音楽が面白いよね」「こういうのやろうよ」みたいにそのときの興味で動けてしまう。このままやり続けることもできるんだろうけど、それもなんだか不気味な気もしてきて(笑)。

──不気味って(笑)。

あと、ヒップホップのグループって1枚マスターピースを作ったら、一度ソロ活動に移っていくじゃないですか。SIMI LABもそうだし、THE OTOGIBANASHI'Sもそう。PSGもそうですね。ああいう形って健康的でいいなと思ったし、バンドという形態でも可能じゃないかと思ったんですよ。個人は個人として確立したうえで集団であるべきだし、今後そこをうまく使いわけながら活動していければと考えたんですね。

──バンドで表現できないものをソロでやってみたいという、音楽面での欲求もあったんですか。

ceroでの創作が自分の表現の妨げになっていたわけでもなく、その都度やりたいことをやれていたので、ceroの活動にストレスがあったわけじゃないんですよ。ceroの場合、3人の中間地点が作品の根幹になっていくわけだけど、その中でも「この曲はceroというよりも僕の個人的な一面が出たな」と思う曲がいくつかあって。

──例えば?

1stアルバム(「WORLD RECORD」)だったら「outdoors」だったり、最近でいうと2016年の「ロープウェー」、あとは「POLY LIFE MULTI SOUL」に収録した「薄闇の花」だったり。こういう色味のアルバムを1枚作ってみたいなとも考えていました。

──その3曲でいう個人的な一面というのは、音楽的感覚のことですか? あるいは歌詞について?

どちらでもあるんですけど、その3曲に共通して言えるのは、薄明かりの景色が見えてくるような夕暮れどきの感じというか。放っておいたら僕はそういう曲ばっかり書いちゃうんです。でもceroの場合、いろんな人が関わってるぶん、楽曲がもっとバラエティ豊かでカラフル。1つの色彩だけでアルバム1枚をまとめるというのは難しいんです。

坂本慎太郎さんに「なんでライブやるの?」と言われて

──ソロの構想が立ち上がったのが2015年だったわけですが、渋谷CLUB QUATTROでの初ライブが2019年1月。「POLY LIFE MULTI SOUL」の制作と並行していたとはいえ、少し間が空きましたね。

そうですね。ceroが高校生の頃にすぐ戻ってしまう集団だとすれば、ソロのほうは自分の実年齢と共に年を重ねていく音楽にしたいと思ってたんですね。ぼんやりとでも軸が決まったものにしたい、と。「POLY LIFE MULTI SOUL」を制作しながら、その軸を探していました。

──なるほど。

そういえば、初ライブの前に坂本慎太郎さんと会う機会があったんです。「最近ソロを始めていて、今度ライブもやるんです」と話したら、「なんでライブやるの? やらなくていいじゃん」って言われて(笑)。坂本さんもソロを始めてからしばらくはライブをやらなかったわけじゃないですか。確かにそれもわかるなと思って。

──どういうことですか?

ライブってお客さんとのコミュニケーションが大事なので、サービス業的な側面があるんですよ。ライブ前から家でデモを作ってたんですけど、人に聴いてもらうものとなると、「こういうアレンジにしたほうが喜んでもらえるかな」という思考回路に切り替わっちゃうんですね。「自分はソロでこういうものをプレゼンテーションしたいんだ」という軸が確立されないと、人前でやるのは危ないんだなと思って。

──では、そこでいう軸とはどういうものなんでしょうか。

今まで自分が聴いてきた音楽を改めて聴く中で、これからもずっと聴き続けるだろう音楽が何かはっきりしてきたんですね。1つがジョー・ヘンリー。彼のプロデュース作品であるとか、彼自身の作品が大好きなんですよ。オーセンティックな音楽でありながら、音響処理がシラフじゃないというか、イカれた陶酔感があってシアトリカル。うっとりとするムードがあるんだけど、ウオーミーなものばかりじゃなくて冷たさがある。自分はそういうロマンチックな音楽がやっぱり好きなんだということを再認識したんです。このプロジェクトではそういうものを目指そうと。