ソングライターとして大きくなりました

──今回のベストにはシングル曲が並んでいるわけですが、リリース順ではないですよね。何か意図があれば教えてください。

意図はないんです。ベストっていい意味でこだわりがないわけですよ。やっぱりオリジナルアルバムとは違う感覚なので。この作品だからこそできることがあるかなと思って、初めてなんですけど、まずスタッフの皆さんに曲順を考えてもらったんです。自分じゃなくほかの人が、いちリスナーとしてどういう順番が一番しっくり来るかっていうのを知りたくて。それをもとに作った曲順なんですよ。オリジナルアルバムだと自分のこだわりがあるのでそういうことは絶対やらないですけどね。今回は客観的な考え方ができてよかったです。

──デビューからの7年間を振り返ってみて、自分の中で変化したと思うところはどこですか？

ソングライターとしての自分は相当大きくなりました。デビュー当時はなんとなくノリで曲を作ってたところもあるんですけど、今はもう「曲を作りたいんだよ！」ってくらい前のめりですね。むしろ自分が歌わなくても、ほかの人のプロデュースでも曲を作りたい。プロとしてのソングライティングを学んだことで、曲を作るのが好きだっていう感覚になりましたね。

R&Bファンならわかってもらえると思う

──清水さんの、ブラックミュージックを感じさせつつ日本的情緒も忍ばせたメロディの根源はなんなのでしょう。勉強や鍛錬だけでも、天性のものだけでもないと思うのですが。

それは僕自身も個性だと思っていて。やっぱりどっちも本気で好きだからじゃないですかね。っていうのも僕、アメリカのR&Bやソウルミュージックが本当に大好きだけど、日本が好きだから日本で活動したいんです。僕の周りにも「もうニューヨーク住んでアーティスト活動したい」みたいな人が多いんですけど、そういう欲望はないですね。

──ブラックミュージックを愛する人によくある、いわゆる“日本人コンプレックス”がない。

はい。自分なりのR&Bセンスに自信があるからそうは思わないんです。あと15、6歳ぐらいのときに、いい音楽を作るには日本の美しさとか日本のよさを知ることが大事だって思って、日本のことや邦楽を勉強してすごく好きになったんですね。だから日本的な情緒は僕にとってすごく大事なものだと思っています。その2つで音楽を作るっていうのは自分の中でも鉄則になってますね。

──自分なりのR&Bセンスへの自信というのは、デビューして徐々に築き上げたものなんですか？ それとも最初から？

うーん、若さ故の強気みたいなところはあったと思いますよ（笑）。今はそれが一周して、R&Bならいい曲を作れるという自信があるからこそ、それを全面に出そうとも思わないんですよね。どれだけ日本らしさを入れたりポップにしたりしても、「こいつ本気出したらスゲえな」ってR&Bファンならわかってもらえると思う。

──コテコテのものを出したところで、ルーツをなぞってるだけにも思われかねないですしね。

そう。R&Bファンなら「HOME」からすでに感じてもらってると思う。その上で、そんな自分が日本の音楽シーンの中で何ができるか、いろいろな配分で挑戦してるんです。……って言いつつ、今作ってる曲はちょっと黒かったりもするんですけど（笑）。