ナタリー PowerPush - 凛として時雨

3人が目指す“完璧”とは? 5thアルバム「i'mperfect」

凛として時雨が2年半ぶりとなるアルバム「i'mperfect」を4月10日にリリースする。メンバー個々のソロ活動を経て制作された本作は、“3人だけで鳴らせる音”を最大限まで突き詰めた濃密かつ緊迫感のある作品に仕上がっている。

今回ナタリーは、アルバムリリースにあわせてメンバーにインタビューを実施。凛として時雨というバンドのスタンスに改めて迫った。

取材・文 / 中野明子

いつも何かが終わってない感覚

──「i'mperfect」は2年半ぶりのアルバムとなりますが、出来映えはいかがですか?

345(Vo, B) がんばったんじゃないでしょうか(笑)。

──いつ頃完成したんですか?

TK(Vo, G) 2月末ですね。いつも通り、ギリギリまで作業してましたね。曲が持っている可能性を最後まで試すようにしてるんで、最後の最後まで何かはやってて。曲の細かい音の部分とか、歌詞の言葉ひとつとか。だからマスタリングの日の朝に歌を録ってるとかわりとありますね(笑)。今回もそんな感じでした。

──こうやって作品が完成してみての満足度は?

TK 満足度かあ……僕はいつも作品を出すとき、作り途中だったり未完成なものを見られてる意識が強くて、満足度はないかもですね。あくまで時雨にとっての作品って、その瞬間瞬間に切り取った3人の音なんで。だから作品が完成したからといって満足することはなくて、いつも何かが終わってないような感覚だけが残ってますね。

──ピエール中野さんはどうですか?

ピエール中野(Dr) 僕はカッコいいアルバムができたと思ってます。これまでの作品の中で一番ヘビーローテーションしてるくらい。で、完成したときと、今聴くのとは感じが違うんですよね。聴くたびに凛として時雨らしいカッコよさがあって楽しいなって。

──聞こえ方の違いというのは?

ピエール中野 音のアレンジとか、細かいところで制作中は見えなかったものが見えてくる。こんなふうになってたんだっていう発見があって。自分のドラムにしても、レコーディングでは意識してなかった音が聞こえてきたり。それがいい方向に向かっていくんですよね。

どれだけソリッドにカッコいいものを作るか

──この2年半、皆さんはそれぞれ個々の活動も行ってましたよね。それによって変化はありましたか?

「Beautiful Circus」PV撮影風景。

TK 3人の理想的な音や向かう方向が前より見えるようになったかもしれないですね。僕の場合はソロではいろんな音を重ねながら曲を構築したり、カラフルな音像を自由に作ってたんで、逆に時雨では3人でどれだけソリッドにカッコいいものを作るかっていうことを明確にイメージするようにしましたね。そういう点が以前とは違ったかもしれない。でもレコーディングの方法が劇的に変わったりはしてないですね。

──前のアルバムから期間が空いたことによるプレッシャーってありました?

345 特に感じることはないですね。

TK 僕らとしては期間が空いたとは思ってないんですよ(笑)。最近の音楽業界って流れが早い気がしてて。もちろん1年に1枚アルバムができたのならそれでいいですけど、自分たちにとってこのペースはとても自然なんです。

──とはいえリスナーはものすごく時雨の音に飢えていたと思いますよ。

TK 待ってくれてるんだろうなとは思うんですけど、普段生活する中ではリスナーの期待感に触れることができないんで。ライブもあまりやってなかったし、そういう声は自分から探しにいかない限りは入ってこないですよね。そのせいでリスナーとのズレが生じてしまうかもしれないけど、そこは距離を置いた状態でもいいのかなって。自分が「凛として時雨の音を作れるかどうか」っていうことが大事だし、そこしか意識してないですね。でも、待っていてくれるといいな……とは思います(笑)。

──ピエール中野さんはTKさんとは逆で、TwitterやDJ活動でファンの方と触れ合うことも多いですよね。

ピエール中野 はい。エゴサーチしまくってます(笑)。 TKとは真逆ですね。

345 うふふふ(笑)。

ピエール中野 でも僕もファン目線なんですよ、時雨に対しては。だから「時雨の新作まだですか?」とかファンの人に言われても「そうですよね。僕も楽しみです」って返したり。むしろね、TKの期待に応えられるかというプレッシャーのほうがデカイですよ。今回も「このドラム叩けんのかな?」と思いながらもらったデモを聴いてましたね。でもそれって初めて時雨を聴いたときからのことなんですよ。自分でもレコーディングした音源聴くたび、このドラムよく叩いてんなーって思いますもん。

ニューアルバム「i'mperfect」 / 2013年4月10日発売 / 3059円 / Sony Music Associated Records / AICL-2526
ニューアルバム「i'mperfect」
収録曲
  1. Beautiful Circus
  2. abnormalize
  3. Metamorphose
  4. Filmsick Mystery
  5. Sitai miss me
  6. make up syndrome (album mix)
  7. MONSTER
  8. キミトオク
  9. Missing ling
凛として時雨(りんとしてしぐれ)

TK(Vo, G)、345(Vo, B)の男女ツインボーカルとピエール中野(Dr)からなる3ピースバンド。2002年に地元・埼玉で結成し、2005年に自身で立ち上げたレーベル「中野Records」よりアルバム「#4」をリリース。その後も順調にライブの動員を増やし続け、2008年12月に1曲入りシングル「moment A rhythm」でメジャー移籍を果たす。 狂気がにじむギターロックの地平を、USオルタナ~エモ直系の金属的な轟音で爆撃するサウンドは、多くのファンを魅了。2010年4月にはさいたまスーパーアリーナでのワンマンライブを成功に収めた。同年5月には初のイギリスツアーを敢行。9月にリリースした4枚目のフルアルバム「still a Sigure virgin?」はオリコン週間ランキング1位を記録した。2012年11月、約2年ぶりの新作音源となるシングル「abnormalize」をリリース。2013年4月に2年半ぶり、通算5枚目となるアルバム「i'mperfect」を発表する。