誰も拒まない、開かれた音楽
──「サボール・ド・リオ」の原曲を聴いたとき、SKY-HIさんはどう思いましたか?
SKY-HI まさにセルジオ節って感じですよね。「マシュ・ケ・ナダ」と同じように、すぐ歌えるメロディが真ん中にある。
セルジオ そうだろ? 日本でヒットするんじゃないかっていう直感があったんだよ。だからこそ若くて優れた日本人ラッパーと一緒にやりたかったんだ。
──SKY-HIさんはこの曲をリミックスするにあたって、どのようなことを考えていたんですか?
SKY-HI 少し肌寒くなってきた頃の東京で原曲を初めて聴いたんですけど、日本の真裏のブラジルでは夏真っ盛りなんですよね。聴いた瞬間、スタジオが真夏のリオになるような感覚があったので、ここに何かを足すとすれば、日本中の人たちがさらに踊りたくなるようなものにしようと。それもあって、パーカッションのリズムをさらに付け加えたんですよ。ドラムの打ち方についてはすぐイメージできましたね。「Don't Think, Feel」な感じというか(笑)。
セルジオ いいね、大事なことだ。
SKY-HI あと、初めて原曲を聴いたとき頭の中に浮かんだイメージは大切にしたかな。フロウもそうだし、リリックもそうですけど、言葉にあまり服を着せない感じというか、軽やかなものにしたかったんです。原曲がナチュラルなものだったから、僕も自然とそういうイメージが浮かんできたんでしょうね。セルジオ・メンデスの曲をリミックスするわけですから、冷静に考えると勇気のいる作業でもあります。
──セルジオさんはSKY-HIさんのリミックスを聴いてどう思いました?
セルジオ 単なるリミックスじゃないよね。それ以上のものというか、原曲を再解釈して新しい表現を生み出してくれたと思っている。彼はラッパーとしてもユニークなスタイルを持っているし、誰かのコピーでもない。まさにSKY-HIのスタイルだ。とてもフレッシュだし、素晴らしいものを作ってくれた。
SKY-HI いやー、光栄ですね。どういうものにするか迷った部分もあるんですけど、スタジオで聴いていたら、もうひと解釈してお返しすべきかな、という気がしたんです。もっと踊りたくなるような曲に仕上げてお返しするのが礼儀だろう、と。とはいえ、作り始めたら「楽しいからどんどんやっちゃえ!」って感じになりましたけど(笑)。
セルジオ こちらからはなんのリクエストもしなかったからね。とにかく好きにやってくれ、と。今回は「ノー・ボーダー」がテーマでもあったんだ。僕とSKY-HIは世代も違うけど、2人の間には壁もないし、国境もない。曲の中ではすぐに1つになれるんだ。
SKY-HI セルジオの音楽がそうさせてくれたんですよ。言葉を乗せたり、ドラムを打ち直すという作業を受け入れてくれる音楽という感じがしました。そこがセルジオの音楽が持つ魅力でもあるんでしょうね。老若男女、誰も拒まない、聴くものをナチュラルな状態に戻してくれる開かれた音楽というか。だからこそ、聴いているとつい踊り出したくなってしまうんです。
セルジオ 彼のコンサートを観させてもらったんだけど、感激したよ。どこにも怒りの要素がなくて、みんな楽しそうに踊っている。喜びがあふれている感じがしたね。アメリカのラップミュージックには怒りの感情が前面に出ているものも多いけど、正直な話、私はあまり好きじゃない。私にとっての音楽とは喜びであり、人生を祝福するものなんだ。SKY-HIの音楽にも同じものを感じるね。
みんなパーティに遊びにおいでよ!
──セルジオさんは5年半ぶりのニューアルバムを作っているそうですね。どのようなものになりそうでしょうか。
セルジオ 今回は若手のアーティストをかなり迎えている。アルバム用に書き下ろした新曲のほか、エルメート・パスコアールやジョアン・ドナートのように私が愛するブラジルの作曲家の曲も取り上げている。あと、今回初めてスペイン語の曲にもチャレンジしている。コロンビアのカリ・イ・エル・ダンディを招いてレゲトンをやったんだけど、素晴らしい仕上がりになったよ。
SKY-HI レゲトン!
セルジオ カルリーニョス・ブラウンも参加しているし、何人かの若いシンガーも素晴らしい声を聞かせてくれる。喜びにあふれたフレッシュでユニークなアルバムになったと思う。「みんなパーティに遊びにおいでよ!」という感じかな。
──楽しみにしています。あと、やっぱりライブでの2人の共演も聴いてみたくなりますね。実現の可能性は?
2人 (同時に)イエス!
セルジオ きっとやることになるんじゃないかな。私もぜひやってみたいと思っている。
- セルジオ・メンデス「イン・ザ・キー・オブ・ジョイ」
- 2019年11月27日発売 / Concord Records / Universal Music
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通常盤 [CD]
2750円 / UCCO-1216
- CD収録曲
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- サボール・ド・リオ feat. コモン
- ボラ・ラ feat. ホジェー&グラシーニャ・レポラーセ
- ラ・ノーチェ・エンテーラ feat. カリ・イ・エル・ダンディー
- サンバ・イン・ヘヴン feat. シュガー・ジョアンズ
- ムガンガ feat. グラシーニャ・レポラーセ
- イン・ザ・キー・オブ・ジョイ feat. バディ
- ラヴ・ケイム・ビトゥイーン・アス feat. ジョー・ピズーロ
- キャッチ・ザ・ウェイヴ feat. シェレイア
- ロマンス・イン・コパカバーナ
- ディス・イズ・イット feat. エルメ―ト・パスコアール&グラシーニャ・レポラーセ
- タイム・ゴーズ・バイ feat. シェレイア
- タンガラ feat. グラシーニャ・レポラーセ&ギンガ
日本盤ボーナストラック
- サボール・ド・リオ -SKY-HI Remix-
- デラックス・エディションCD収録内容
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- マシュ・ケ・ナダ
- おいしい水
- プリミティーヴォ
- ラメント
- パイス・トロピカル
- レザ
- コンソラサォン
- 君に夢中
- カエル
- なつかしき丘
- 恋のおもかげ
- コンスタント・レイン
- ソー・メニ―・スターズ(星屑のボサノヴァ)
- トンガ
- 愛をもう一度
- ファンファーハ(カブアーレーレ)
- セルジオ・メンデス「サボール・ド・リオ -SKY-HI Remix-」
- 2019年10月25日先行配信 / Concord Records / Universal Music
- セルジオ・メンデス
- ブラジル・ニテロイ出身のアーティスト。幼少の頃からリオの音楽学校でクラシックピアノをはじめとする音楽の基礎を学ぶ。1962年にボサ・リオ・セクステットを結成。以降、アメリカに活動の場を移し、世界的なボサノバブームの旗手となる。1966年にセルジオ・メンデス&ブラジル'66名義のアルバム「Mas Que Nada」をリリースし、大ヒットを記録。2006年にThe Black Eyed Peasのウィル・アイ・アムをはじめとする豪華アーティストをゲストに迎えたアルバム「Timeless」を、2008年には「Morning In Rio」を発表した。2019年11月には約5年半ぶりとなるアルバム「イン・ザ・キー・オブ・ジョイ」をリリースする。
- SKY-HI(スカイハイ)
- 2005年にAAAのメンバーとしてデビューし、同時期からSKY-HIとして都内クラブで活動をスタートさせる。さまざまなラッパーとのコラボレーション企画「FLOATIN' LAB」を2011年に始動し、翌2012年に同企画のコンピレーションアルバム「SKY-HI presents FLOATIN' LAB」を発売。2014年3月には1stアルバム「TRICKSTER」をリリースした。2018年8月には6曲入りのミニアルバム「FREE TOKYO」を、SoundCloudにて期間限定で無料配信し話題を集める。同年12月にリリースした4thアルバム「JAPRISON」には、セルジオ・メンデスがピアノ演奏で参加した楽曲「What a Wonderful World!!」が収録されている。2019年9月にSALUとのコラボレーションアルバム「Say Hello to My Minions 2」を発売。同年12月にはライブDVD / Blu-ray「SKY-HI TOUR 2019 -The JAPRISON-」をリリースする。
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