ブラジル音楽の魅力を世界へと広めた功労者の1人であり、1960年代から現在に至るまで、さまざまなアーティストとコラボレーションを重ねてきたセルジオ・メンデス。2000年代以降はウィル・アイ・アム(The Black Eyed Peas)との共演によって若い世代のリスナーも獲得してきたセルジオが、今回新たな共演者として指名したのはSKY-HIだった。彼の最新アルバム「JAPRISON」にセルジオが参加したことに続き、11月27日にリリースされるセルジオのニューアルバム「イン・ザ・キー・オブ・ジョイ」の収録曲「サボール・ド・リオ」のリミックスをSKY-HIが担当。キレ味鋭いラップも披露し、カーニバルの熱狂が詰まった灼熱のダンストラックに生まれ変わった。10月18日にデジタルで先行配信された同曲のリミックスに加え、お互いへの思いや音楽観に関することまで、限られた時間の中でじっくり語り合ってもらった。
取材・文 / 大石始 撮影 / 中野修也
観た瞬間に「これだ!」
──SKY-HIさんはセルジオさんの音楽にどのような印象を持っていましたか?
SKY-HI もともと両親がセルジオの大ファンだったんですよ。それもあって昔から身近な存在でしたし、The Black Eyed Peasとのコラボレーション曲「マシュ・ケ・ナダ(feat. Black Eyed Peas)」はよく聴いていました。「マシュ・ケ・ナダ」は誰もが知ってる曲ですしね。
──セルジオさんは今回どのような経緯でSKY-HIさんにオファーをすることになったのでしょうか?
セルジオ・メンデス 「サボール・ド・リオ」の原曲をLAのスタジオで作っていたとき、何か日本的なニュアンスがあるような感じがしたんだよ。それで私のバンドのボーカリストでもある妻に「若い日本人ラッパーをフィーチャーして『サボール・ド・リオ』の別バージョンを作るのはどうだろう?」なんて話をしていたんだ。それで昨年日本にやって来たとき、そのアイデアをユニバーサルミュージックのスタッフに話したら、何人か候補となるラッパーのミュージックビデオを観せてくれてね。その中の1つに彼の「Double Down」のMVがあったんだ。観た瞬間に「これだ!」と思ったよ。自然で伸び伸びしたところが気に入ってね。ぜひ一緒にやってみたいと思って声をかけたんだ。
──SKY-HIさんはセルジオさんからオファーがあったとき、どう思いました?
SKY-HI うれしいとか驚いたというより、最初は何が起こっているのかわからなくて、ちょっと混乱しましたね(笑)。でも、直接お会いして細かい話を伺ったときにようやく状況を飲み込めました。
──セルジオさんの大ファンだというご両親も驚いたんじゃないですか?
SKY-HI すごく興奮していました! 僕の両親はどちらも“ハッピー・バイブス”が強いほうなので、親父は「ブラジルでライブを観たことがあるって、セルジオに伝えておいてくれよ!」と素直に喜んでいました。
セルジオ それはよかった(笑)。
大事なのは直感とオーガニックな要素
──昨年初めて会った際はどのような会話をしたんですか?
SKY-HI 「今作っているアルバムの中に『サボール・ド・リオ』という曲があって、これのリミックスをお願いしようと思ってるんだ」という話をいただいて。そのあとブラジル人のセルジオと日本人の僕で一緒に中華料理を食べに行ったんですよ(笑)。
セルジオ しかも「サボール・ド・リオ」をレコーディングしたのはLAだしね(笑)。LAで湧き上がってきた直感を形にすることができたのはとてもハッピーなことだった。私の場合、壮大な計画にもとづいて作業を進めていくのではなく、いつも自然で自発的なやり方を重要視している。大事なのは直感とオーガニックな要素なんだよ。
──では「サボール・ド・リオ」の原曲についても聞かせてください。セルジオさんがこの曲で大事にしていたのはどのようなことなのでしょうか?
セルジオ 私はいつもメロディを第一に考えている。この曲でもシンプルでキャッチーなメインのメロディを大切にした。そのバックでブラジルでレコーディングしたパーカッション主体のリズムが鳴る、というのがこの曲の基本的構造だね。そして日本人ラッパーをフィーチャーするというアイデアを思い付き、日本でそれを実現し、SKY-HIと一緒にチャイニーズフードを食べに行ったってわけさ。バンバンジー!
SKY-HI あと小籠包ね(笑)。
セルジオ バンバンジー! ショウロンポー!(と歌い始める。)
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誰も拒まない、開かれた音楽
- セルジオ・メンデス「イン・ザ・キー・オブ・ジョイ」
- 2019年11月27日発売 / Concord Records / Universal Music
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通常盤 [CD]
2750円 / UCCO-1216
- CD収録曲
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- サボール・ド・リオ feat. コモン
- ボラ・ラ feat. ホジェー&グラシーニャ・レポラーセ
- ラ・ノーチェ・エンテーラ feat. カリ・イ・エル・ダンディー
- サンバ・イン・ヘヴン feat. シュガー・ジョアンズ
- ムガンガ feat. グラシーニャ・レポラーセ
- イン・ザ・キー・オブ・ジョイ feat. バディ
- ラヴ・ケイム・ビトゥイーン・アス feat. ジョー・ピズーロ
- キャッチ・ザ・ウェイヴ feat. シェレイア
- ロマンス・イン・コパカバーナ
- ディス・イズ・イット feat. エルメ―ト・パスコアール&グラシーニャ・レポラーセ
- タイム・ゴーズ・バイ feat. シェレイア
- タンガラ feat. グラシーニャ・レポラーセ&ギンガ
日本盤ボーナストラック
- サボール・ド・リオ -SKY-HI Remix-
- デラックス・エディションCD収録内容
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- マシュ・ケ・ナダ
- おいしい水
- プリミティーヴォ
- ラメント
- パイス・トロピカル
- レザ
- コンソラサォン
- 君に夢中
- カエル
- なつかしき丘
- 恋のおもかげ
- コンスタント・レイン
- ソー・メニ―・スターズ(星屑のボサノヴァ)
- トンガ
- 愛をもう一度
- ファンファーハ(カブアーレーレ)
- セルジオ・メンデス「サボール・ド・リオ -SKY-HI Remix-」
- 2019年10月25日先行配信 / Concord Records / Universal Music
- セルジオ・メンデス
- ブラジル・ニテロイ出身のアーティスト。幼少の頃からリオの音楽学校でクラシックピアノをはじめとする音楽の基礎を学ぶ。1962年にボサ・リオ・セクステットを結成。以降、アメリカに活動の場を移し、世界的なボサノバブームの旗手となる。1966年にセルジオ・メンデス&ブラジル'66名義のアルバム「Mas Que Nada」をリリースし、大ヒットを記録。2006年にThe Black Eyed Peasのウィル・アイ・アムをはじめとする豪華アーティストをゲストに迎えたアルバム「Timeless」を、2008年には「Morning In Rio」を発表した。2019年11月には約5年半ぶりとなるアルバム「イン・ザ・キー・オブ・ジョイ」をリリースする。
- SKY-HI(スカイハイ)
- 2005年にAAAのメンバーとしてデビューし、同時期からSKY-HIとして都内クラブで活動をスタートさせる。さまざまなラッパーとのコラボレーション企画「FLOATIN' LAB」を2011年に始動し、翌2012年に同企画のコンピレーションアルバム「SKY-HI presents FLOATIN' LAB」を発売。2014年3月には1stアルバム「TRICKSTER」をリリースした。2018年8月には6曲入りのミニアルバム「FREE TOKYO」を、SoundCloudにて期間限定で無料配信し話題を集める。同年12月にリリースした4thアルバム「JAPRISON」には、セルジオ・メンデスがピアノ演奏で参加した楽曲「What a Wonderful World!!」が収録されている。2019年9月にSALUとのコラボレーションアルバム「Say Hello to My Minions 2」を発売。同年12月にはライブDVD / Blu-ray「SKY-HI TOUR 2019 -The JAPRISON-」をリリースする。
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