スーパー戦隊への愛と情熱がほとばしる!DJシーザー「スーパー戦隊シリーズ 45th Anniversary NON-STOP BEST MIX vol.1&2」

プログレッシブロックにテクノ……「タイムレンジャー」は特別だから

──ここからは選曲や曲順について伺います。「vol.1」の最初や「vol.2」の最後については先ほど話がありましたが、「vol.1」のラスト曲を「電撃戦隊チェンジマン」(1985~86年放送)、「vol.2」の1曲目を「侍戦隊シンケンジャー」(2009~10年放送)にしたのは、どのような考えからでしょうか?

まず「vol.2」の「侍戦隊シンケンジャー」については少し戦略的な話になりますが、今CDを買ったり試聴したりする層って、だいたい12、13年前にスーパー戦隊を観ていた世代なんじゃないかと。それを考えた末のセレクトなんです。だから2曲目「炎神戦隊ゴーオンジャー」(2008~09年放送)まで少しさかのぼってから、「爆竜戦隊アバレンジャー」(2003~04年放送)、「獣拳戦隊ゲキレンジャー」(2007~08年放送)に行くという。冒頭のミックスは10通りくらい作りましたが、その中でも「これだ!」となったのがこの4曲の流れでした。

──なるほど。「侍戦隊シンケンジャー」のイントロが作品の幕開けに合っていて、初っ端からテンションが上がるからだと想像していましたが、そんな考えがあったとは。

もちろんそれも理由の1つですよ。1曲目を「シンケンジャー」にするというのは、企画書の時点でイメージしていました。僕がミックスCDを作るときにいつもイメージしているのが、CDを買った帰りに車のカーステレオにディスクを差し込む瞬間のワクワク感なんです。だから期待を煽ってくれる「侍戦隊シンケンジャー」を最初に入れて正解でした。

──では「vol.1」のラスト曲「電撃戦隊チェンジマン」は?

これは迷いました。僕は一旦ミックスを作り終えたら改めて最初から聴き直すんですけど、そのときにふと、影山ヒロノブさんの声で締めるのがいいかもなと思いついたんです。影山さんはさまざまな作品の曲を歌われているので、「鳥人戦隊ジェットマン」(1991~92年放送)なんかとも迷ったのですが、「チェンジマン」自体の人気もあったので、KAGE名義ではありますが「電撃戦隊チェンジマン」にしました。ここを先に決めて、中盤からそこまでどうやって導くかは「vol.1」のミックスで一番悩んだ記憶があります。

──実際そこからはどのように曲順を決めていきましたか? まずBPMが近い曲を並べて、そこからキーなどを基準に並べていくのが一般的かなと思いますが、シーザーさんはどうでしょう?

僕も最初にBPM順に曲をソートして、そこからキーや年代を参考にしながら試行錯誤しました。あとは特に「vol.2」で意識したのが、細かい盛り上がりをしっかり作るということです。ずっと直線的に右肩上がりのテンションで行くのではなく、波を何度か作りつつ最後まで盛り上げるというか。そのために、オープニングテーマを何曲か、エンディングテーマを何曲かというふうに、ある程度固めた流れを繰り返しています。

──ただ「vol.2」の中盤では、「未来戦隊タイムレンジャー」(2000~01年放送)のエンディングテーマとオープニングテーマをつなげていますね。

「タイムレンジャー」だけは特別なんですよ。作品的にもそうだし、曲としてもオープニングテーマの「JIKŪ 〜未来戦隊タイムレンジャー〜」はプログレッシブロック、エンディングテーマ「時の彼方へ」はテクノという異色のサウンドで。特に「JIKŪ ~未来戦隊タイムレンジャー~」は、東映のプロデューサーさんから「今までと違うものを作りたい」という意見があって、シリーズのオープニングテーマで初めて女性アーティストがメイン歌唱者を務めたそうです。だからこの2曲だけは、つなげたほうが往年のファンにグッと刺さってくれるかなと。すごく考えたんです。

──なるほど、そうだったんですね。あと「vol.1」「vol.2」には、どちらも中盤にバラードのブロックが配置されていますね。

僕はわりと、バラードもしくは落ち着いた曲を中盤に入れるようにしていまして。例えば「vol.2」だと「ヒーリン’ユー」(2001~02年放送「百獣戦隊ガオレンジャー」エンディングテーマ)が思いっきりバラードなので、その前の「烈車戦隊トッキュウジャー」(2014~15年放送「烈車戦隊トッキュウジャー」オープニングテーマ)までの流れでブチ上げておいて、そこから一気に落としました。さっきの「シークレット カクレンジャー」と同じで、雰囲気を変えるなら一気に変えたほうがいいので。

泣きながら作った激エモつなぎ

──多数あるとは思いますが、特にお気に入りのつなぎはありますか?

本当にたくさんありますが、1つ挙げるとしたら「vol.2」の「ビュンビュン!トッキュウジャー」(2014~15年放送「烈車戦隊トッキュウジャー」エンディングテーマ)からの「LUCKYSTAR」(2017~18年放送「宇宙戦隊キュウレンジャー」オープニングテーマ)へのつなぎです。まず「LUCKYSTAR」が本当にいい曲なんですよ。

──「LUCKYSTAR」はスーパー戦隊シリーズのオープニングテーマには珍しく、戦隊名がタイトルに入っていませんよね。

そこが革新的だし、サウンドも泣きのロックだし、オープニング映像と一緒に聴くと本当にエモいんだ……。キュウレンジャーたちが背中合わせに輪になっている周囲をカメラが回りながら撮っているところとか、グッとくるんですよ!

──そんなに思い入れのある曲なので終盤に配置したと。

はい! 眠れないくらい考えて! 熱く語っちゃうんですけど、「ビュンビュン!トッキュウジャー」と「LUCKYSTAR」は、僕の中で本当に泣ける曲同士でして。それに、「トッキュウジャー」と「キュウレンジャー」だけに、“キュウ”つなぎというのをやりたくって……エモくないですか!? 聴きました、あのつなぎ!? 自分で言うのもアレですけど(笑)。

──エモかったです。その次の「海賊戦隊ゴーカイジャー」(2011~12年放送「海賊戦隊ゴーカイジャー」オープニングテーマ)も含めて。

ありがとうございます! どうしてもあの“キュウ”つなぎをやりたかったんですけど、もともと「ビュンビュン!トッキュウジャー」は1番のあとすぐに2番に入る曲なので、今回特別に、1番後に間奏が入るという特殊バージョンを作らせていただいたんです。あのつなぎはもう、あれしかないなと思って! ……すみません、興奮しすぎました。

──自分も趣味でアニソンDJを少ししているので、文脈や音的に完璧なつなぎができたときの高揚感はわかります。

ですよね! 僕、このあたりも「なんていいつなぎだ!」「なんていい歌なんだ!」と泣きながら作ってましたから。

──DJ的な目線でいうと、曲中でBPMが上がる「キュータマダンシング!」(「宇宙戦隊キュウレンジャー」エンディングテーマ)は“おいしい”曲なのかなと感じました。

おいしいですねー。これもラスサビでBPMが上がるテレビバージョンを入れないとスーパー戦隊ファン失格だと思ったので、今回のために原曲を編集した特殊サイズのトラックを作らせていただきました。

──「ファンならここは聴きたい」というところを逃さないのは、オタクなDJならではですね。おかげでこのミックスCDが、おいしいところの詰め合わせみたいな感じになっていて。

確かに(笑)。でも「秘密戦隊ゴレンジャー」のイントロの「ティルルウウ!」という音なんて、日本国民全員のDNAに刻まれているでしょうから絶対に入れなきゃ駄目じゃないですか。ほかにも「炎神戦隊ゴーオンジャー」のイントロのThe Venturesみたいなギターとか、「魔法戦隊マジレンジャー」(2005〜06年放送「魔法戦隊マジレンジャー」オープニングテーマ)だと最初のストリングスや大団円感のあるラスサビとか。DJとしてはちょっとつなぎが不自然かなと思うところもあるかもしれませんが、スーパー戦隊ファンが「それ!」となるところをきちんと聴かせるという使命感を持って作りました。

だいぶ先?「vol.3」の中身は……

──ベタな質問で恐縮ですが、このミックス作品をどんなシチュエーションで聴いてほしいですか? というのも、仕事中に聴くと盛り上がりすぎて仕事が手に付かないと感じまして(笑)。

CDを置いていただいている店舗さんにご挨拶に行ったときもそう言われました。「店で流していると楽しくなっちゃって仕事にならないです」って(笑)。スーパー戦隊ファンの僕としては、46年間でこんなに素敵な曲をたくさん作っていただいて、本当にありがたいなと思います。ミックスを聴いてほしいシチュエーションとしては、筋トレ時をオススメしたいです。僕自身、鉄アレイでのトレーニングや走り込みをやりながら聴いていますが、テンション高くやれて、あっという間に1時間が消えちゃいますよ。

──最後にジャケットについても触れさせてください。「vol.1」「vol.2」と、スーパー戦隊シリーズ全作をまとめるというCDのコンセプトがわかる2枚のイラストが描かれたジャケットで、とてもいいですね。

これも僕のアイデアを生かしてもらいました。「vol.1」のジャケットは、絶対に「ゴレンジャー」の5人が有名なポーズを決めているのがいいと提案したんです。そして「vol.2」は、構図までは決まってなかったけど、「シリーズ最新作(「機界戦隊ゼンカイジャー」)に華を持たせたほうがいいよね」という話があって。それで絵師であるRAB(リアルアキバボーイズ)のマロンと相談して、最新作のゼンカイザーのゴーグルに第1作「ゴレンジャー」のアカレンジャーが映っているという、エモい構図をダメ元で日本コロムビアさんに提案したら、それが通ったんです。本当に感謝しかありません。

──ちなみに「vol.3」を作るとなったら、どんなジャケットになるんでしょうね。

さすがに「vol.3」はだいぶ先じゃないですか(笑)? 60周年のときとかですかね。ジャケットもどうしよう。でも作るとなったら、今度は今までのシリーズ作品の挿入歌や劇伴も入れることになるのかな。

──今回、歴代作品のオープニングテーマで唯一収録されていない「モーフィン!ムービン!バスターズシップ!」(2012~13年放送「特命戦隊ゴーバスターズ」後期オープニングテーマ)も入れてもらって。

そうですね。ほかにもオープニングテーマがアレンジされた音源もたくさんあるし。そうなったらアメリカの「パワーレンジャー」(1993年に第1作がスタートした英語版のスーパー戦隊作品)の歌も入れたいですよね……。どうでしょう、日本コロムビアさん?

(日本コロムビアスタッフ) 今日お話を聞いていて、今後も切り口によってはいろいろな企画ができる気がしていました。例えば、振り付けのあるエンディング曲は「アバレンジャー」が最初でしたが、そこから19作くらいあるので、ダンスエンディング特集のミックス作品とか。

それは確かにいいですね! 楽しい1枚になるだろうし、つなげやすくもあるし。「vol.3」も、ぜひぜひ。

DJシーザー(ディージェーシーザー)
アニメソング中心のクラブイベントシーンなどで活躍するDJ。楽曲を次々とショートミックスするスタイルで2007年にDJとしての活動を開始。これまでに「ニコニコ超会議」「JUMP MUSIC FESTA in 横浜アリーナ」「GUNDAM 40th FES."LIVE-BEYOND"」などの国内大型イベントに加え、ヨーロッパ、アジア、アメリカでのフェスにも多数出演している傍ら、声優やアーティスト、お笑い芸人などへのDJ指導も行っている。2018年にリリースされた3部作「週刊少年ジャンプ50th Anniversity BEST ANIME MIX vol.1~3」、2019年発売の「機動戦士ガンダム 40th Anniversary BEST ANIME MIX」のミックスを担当。2021年3月に自身が企画およびミックスを手がけたアルバム「スーパー戦隊シリーズ 45th Anniversary NON-STOP BEST MIX」第1弾、7月に同シリーズの第2弾が発表された。