スーパー戦隊シリーズの楽曲を収録したミックスアルバム「スーパー戦隊シリーズ 45th Anniversary NON-STOP BEST MIX」の第2弾が日本コロムビアから7月21日にリリースされた。
「スーパー戦隊シリーズ 45th Anniversary NON-STOP BEST MIX」は、スーパー戦隊シリーズ45作品目にして最新作「機界戦隊ゼンカイジャー」の放送開始を記念して制作されたミックスアルバム。3月にリリースされた第1弾では「秘密戦隊ゴレンジャー」から「星獣戦隊ギンガマン」までの22作品、第2弾では「救急戦隊ゴーゴーファイブ」から「機界戦隊ゼンカイジャー」までの23作品の楽曲がそれぞれフィーチャーされている。
音楽ナタリーでは、第1弾および第2弾のミックスを手がけたDJシーザーにインタビュー。普段はアニクラシーンで活躍する彼がスーパー戦隊シリーズのメモリアルな作品を手がけることになった経緯や戦隊ヒーローたちへの思い、DJという視点から考える戦隊モノの楽曲の魅力などについて熱く語ってもらった。
取材・文 / はるのおと
「ゴレンジャー」で始めて「ゼンカイジャー」で締めたい
──まずこの2作品をリリースすることになった経緯を教えてください。
今回は僕が日本コロムビアさんに企画を持ち込みました。もともとこうしたミックス作品を出す企画を考えるためにアニメや特撮の周年をチェックするのが癖になっていまして。その中で「スーパー戦隊シリーズの45作品記念イヤーは絶対に盛り上がるから、ミックスCDを出しましょう!」と日本コロムビアの方に話し始めたのが、2019年の夏くらいだったかな。
──そんなに前から話があったんですね。
メジャー作品を出させていただくにはそれくらい前から準備しないといけないので。その時点では曲順はまだでしたが、使いたい曲だけはすべて選んで企画書に盛り込んでいました。
──企画が通った際に、日本コロムビア側から何かリクエストのようなものはあったのでしょうか?
基本的にはすべてお任せしてもらいましたね。スーパー戦隊シリーズの楽曲でミックス作品を作るという試みは今回が初とのことでしたが、僕がやるならなるべく原曲を生かしたいなと思って。その思いを企画書にまとめたら思いが伝わったのか、かなり自由にやらせてもらえました(笑)。
──なるほど。その時点でミックスを2枚に分けて発表することは決まっていたんですか?
決まっていませんでした。1枚では収録時間に限界があるということで、基本的にはサビだけにして人気曲や節目の作品の曲は長めに流すといったことや、人気曲だけを集めるという提案もしました。でも僕自身は、「1枚だといい曲をきちんと聴かせられないので、絶対に2枚に分けたほうがいい」とずっと言っていたんです。その念願が叶って最終的に2枚をリリースできました。
──おかげでどのシリーズ作品もオープニングテーマとエンディングテーマが必ず入っている充実の内容になったと。これもシーザーさんからの提案ですか?
はい。全作品の曲を入れたかったし、オープニングテーマだけでなくエンディングテーマも作品のファンにとっては重要じゃないですか。そのうえで、ミックスアルバム第1弾は、シリーズ1作目の「秘密戦隊ゴレンジャー」(1975~77年放送)の曲で始まり、第2弾は最新作「機界戦隊ゼンカイジャー」(2021年3月から放送中)で締めるのが一番きれいな流れだなと、企画当初から考えていました。
スーパー戦隊にやって来たニュージャックスウィングの波
──企画書やミックスを作るにあたって、スーパー戦隊シリーズの楽曲をかなり聴かれたと思いますが、どんな特徴があると感じましたか?
J-POPと比べて圧倒的に「ジャジャー!」とか「ジャージャッ!」みたいな“キメ”が多いんですよ。そういうアクセントがあったほうが子供たちもノリやすいんでしょうし、DJとしては、そういった部分を気持ちよくぶっ込めると冥利に尽きます。
──ミックスを聴かせてもらって、スーパー戦隊シリーズの楽曲はJ-POPだけでなく多くのアニソンに比べても印象的なキメやフレーズが多いと感じました。
そうですね。おかげで覚えやすいし、勇ましさも感じます。アニメはJ-POPとのタイアップが多いですが、スーパー戦隊シリーズの曲は基本的にその作品のためだけに書き下ろされたものなので、キメを多くしたり作品名を言ったりと、“らしさ”が確立され、踏襲されていっているんじゃないでしょうか。
──スーパー戦隊シリーズ45作品の中で、楽曲的に大きなターニングポイントになった作品や曲はあるのでしょうか?
1990年代、特に1994~95年放送の「忍者戦隊カクレンジャー」で流れが大きく変わったと思います。45作品の楽曲を通して聴いていると、「カクレンジャー」のオープニングテーマ「シークレット カクレンジャー」で、それまでになかった洋楽のディスコっぽさが取り入れられたのがわかります。だから「vol.1」では「シークレット カクレンジャー」の頭にスクラッチを入れさせてもらって、思いきり曲調を変えました。あの曲でそれまでの楽曲と大きく音が変わるので。
──「シークレット カクレンジャー」、今回初めて聴きましたが単純にカッコいいですね。
そう、カッコいいんですよ! スーパー戦隊の曲なのに、ボビー・ブラウンやキース・スウェットみたいなニュージャックスウィング調ですからね。「カクレンジャー」自体が大ヒットしましたが、主題歌も当時の子供たちに「こういう曲がおしゃれでダンサブルなんだ」と衝撃を与えたんじゃないでしょうか。これで洋楽のビートに目覚めたお子さんたちも多かったはずです。それに、その前年に放送がスタートしていた「五星戦隊ダイレンジャー」のオープニングテーマを歌っているのが、NEW JACK拓郎(梅田凡乃)さんという方で。ちょうどニュージャックスウィングの流れがスーパー戦隊シリーズに来ていたんですよね。
──「カクレンジャー」と言えば、エンディングテーマの「ニンジャ! 摩天楼キッズ」も軽快なラップが入っていて驚きました。当時ブームとなった小沢健二 featuring スチャダラパーの「今夜はブギー・バック」(1994年3月発表)やEAST END×YURIの「DA.YO.NE」(1994年8月発表)より登場が早いという(「忍者戦隊カクレンジャー」初回は1994年2月放送)。
すごいですよね。しかもそういう先端的な要素を取り込みながら、スーパー戦隊作品にもしっかり合っている。プロの皆さんのお仕事はさすがですし、確か当時「カクレンジャー」のテープがすごく売れたんですよね?
(日本コロムビアスタッフ) はい。当時は日本コロムビアからいろいろな楽曲を「コロちゃんパック」という絵本付きのカセットシリーズとして販売していたんですが、その売り上げが大きかったと聞いています。あと「シークレット カクレンジャー」を作曲した都志見隆先生に聞いたところ、あの曲は冬杜花代子先生の詞先で作られたみたいで。それで「なんなんじゃ なんじゃ なんじゃ」という詞に合うメロディーをと考えたらああいう形になったと。
へえー、そうなんですね。すごくいいエピソードをありがとうございます。
──もう「カクレンジャー」の話だけで延々と話せそうですね。
すみません! 僕、90年代では「カクレンジャー」が一番好きだったもので。でもスーパー戦隊って本当に面白いものが多いんですよ。1981年にやっていた「太陽戦隊サンバルカン」なんかは、家族で歌ってごっこ遊びをしていた記憶もある、自分の原体験的な作品ですし、2000年代以降だと35作品目の「海賊戦隊ゴーカイジャー」も単純に面白かったし……。
──シーザーさんがスーパー戦隊のことを本当にお好きなのが伝わってきました。
スーパー戦隊って、ヒーローというものが純粋培養されている感じがしてすごく惹かれるんですよね。あとは戦隊のチーム感に泣かされてしまうというか。昔のスポーツもののマンガのような熱さもあってエモい。それに曲の話で言うと、オープニングテーマなんかでその作品名を叫んでくれるじゃないですか。そういうのを聴いていると、こう、拳を握ってみんなで叫びたくなるんですよね。「ゼンカイジャー!!」とか。……いっぱいしゃべってすみません、ホントに。
──いえいえ(笑)。今作に込められた熱量の一端を感じました。ちなみに「vol.2」に収録された1999~2000年放送の「救急戦隊ゴーゴーファイブ」以降の作品で印象的な曲はありますか?
すべて印象深い曲ですが、それ以降で忘れてはいけないのが、エンディングに振り付けが加わり、それをみんなで踊るのが定番になったことです。「vol.2」の中盤では、音源を聴きながらずっと踊れるように、「キラフル ミラクル キラメイジャー」(2020~21年放送の「魔進戦隊キラメイジャー」エンディングテーマ)や「みんな集まれ!キョウリュウジャー」(2014~15年放送の「獣電戦隊キョウリュウジャー」エンディングテーマ)などを固めました。
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