ナタリー PowerPush - 赤飯
甘さと辛さの新食感!アルバム「赤BAN」の真実
過去のアルバムが3作全てオリコン週間ランキングトップ10に入るという歌い手初の偉業を達成した赤飯。そんな彼が、今までとは異なるアプローチで制作したというニューアルバム「赤BAN」をリリースした。この作品は人気ボカロ曲のカバー、盟友・スズムの書き下ろし新曲、__(アンダーバー)とのユニット曲、「hate3部作」と名乗るナンバーなど、赤飯の幅広い声の魅力を堪能できる仕上がりだ。
今回ナタリーでは、そんなアルバムに込めた思いをたっぷり語ってもらうべく初のインタビューを実施。9月のワンマンライブへの意気込み、さらには最近のプライベートまで、赤飯節全開のトークを展開してくれた。
取材・文 / 川倉由起子
“甘”と“辛”に分けた、区切りのセルフタイトル
──まず確認ですが、4thアルバム「赤BAN」の読み方は「セキバン」ですよね?
はい、そうです。セキバンです。
──ちょっと1文字違いますが、これはセルフタイトルということになるんでしょうか?
そうですね。今回はセルフタイトルを付けたいと思ってて、でも赤飯の「赤飯」ってなんかワケわからんなーと。だから少しもじって「赤BAN」にしました。
──でも、なぜ4枚目でセルフタイトルに?
普通は1stアルバムとか、その人の区切りや何か意味合いを込めたいときに付けることが多いと思うんです。で、今回は僕もとにかくそういう“区切り”の1枚にしたくて。そう、今までのアルバム(「SEKIHAN the BEST」「SEKIHAN the GOLD」「SEKIHAN the TREASURE」)との区切りです。
──具体的にはどんなところを変えたかった?
ジャケットの絵を見てもらうと早いんですが、真ん中に僕と思われる人物……男性が1人立っていて、その左右に白と黒の化け物……これは僕のマスコットキャラクターと思われる「にゃーはん」をデフォルメして描かれたやつなんですけど、そいつらがいまして。で、そんな白と黒のにゃーはんが何を表しているかというと、僕自身の「二面性」なんですね。いろんな声を使っていろんな表現をする、今回はその二面性をきっちり確認して作っていこうということで。
──なるほど。
色で分けると、白は「甘」。声色を使い分けるような面白い曲とかポップなものです。黒は「辛」で、ちょっと重かったり、真剣に歌1本で聴かせるもの。だいたいどちらかに分類できるような曲を選んでいきました。
──コンセプトは「甘」と「辛」の二面性ということですね。そして結果、本当に幅広い曲が揃ったアルバムになりました。
今までと違ってシンプルに歌を楽しんでもらえるものになりましたね。もちろんコンセプトがコンセプトですから、声色を使い分けて遊んでいる曲も多分に含まれていますが、今までのような、悪く言えば「雑多」なイメージから、しっかり整理整頓された印象になりました。そしてなにより、歌の芯がしっかりして、これまでより、はるかに聴きやすくなっていると感じています。
スズムとはhateを感じる部分が似てる
──1曲目「赤心症:カマトト荒療治」はスズムさんが書き下ろした新曲ですが、このコラボはどういった経緯で?
スズムとは最近すごく仲がいいんですよー。歌について事細かなアドバイスをくれたり、今回では曲の書き下ろしだけじゃなくて、いろんな面で手伝ってくれて。あと、どうでもいいんですけどスズムとはいろいろ趣味が合うんですよね。例えば服とかもそうで……(手元のiPadを操作して2人の写真を見せて)こんな感じで偶然双子コーデみたいになったときもあって。
──へー。写真は首から下ですが、本当に似てますね。ちなみにこの写真って掲載OKですか?
スズムがOKって言えば僕はいいです。じゃあ、後で聞いておきます。
──……で、改めて今回スズムさんと一緒にやった経緯を。
スズムとは去年6月のETA(「EXIT TUNES ACADEMY」)で3~4年ぶりに再会したんです。最後に会ったときはほんまにただのクソガキだったんですけどね……(笑)。いつの間にやらめっちゃ信頼できるやつになってて。いろんなとこですごく頭がキレるんですよね。ほんまに頼りになるんで、「先生、手伝ってください(´<●>ω<●>`)」ってお願いしました。
──それにしても、「赤心症:カマトト荒療治」は全16曲の中でも突出した個性を放った作品だなーと。
「赤心症:カマトト荒療治」と「アリスインミルクランド」、「過食性:アイドル症候群」は今回の「hate3部作」なんです。僕とスズムは服の趣味だけじゃなく考え方もすごく似ていて、hate(ヘイト)を感じる部分もわりと一緒なんですね。だから今年初めにスズムが「過食性:アイドル症候群」を発表したときも、ビクンビクンビクンッ!となりまして。
──かなり共鳴してしまったと。
はい、不思議なくらい。ここまで近いやつにはなかなか出会えないかもって思ってます。
収録曲
- 赤心性:カマトト荒療治
[作詞 / 作曲:スズム] - いーあるふぁんくらぶ
[作詞 / 作曲:みきとP] - Bad ∞ End ∞ Night
[作詞:ひとしずく / 作曲:ひとしずく×やま△] - 古書屋敷殺人事件
[作詞 / 作曲:てにをは] - 竹取オーバーナイトセンセーション(Sharp Rock arrange / suzumu)
[作詞 / 作曲:Gom(HoneyWorks)編曲:スズム] - ポーカーフェイス
[作詞 / 作曲:ゆちゃP] - 嗚呼、素晴らしきニャン生
[作詞 / 作曲:Nem] - 「Crazy ∞ nighT」
[作詞:ひとしずく / 作曲:ひとしずく×やま△] - 吉原ラメント
[作詞 / 作曲:亜沙] - 如月アテンション(starpop's arrange / suzumu)
[作詞 / 作曲:じん(自然の敵P)編曲:スズム] - 人生リセットボタン
[作詞 / 作曲:kemu] - 異国人形館殺人事件
[作詞 / 作曲:てにをは] - たのしいホームワーク / アン飯:赤飯×__(アンダーバー)
[作詞 / 作曲:ピノキオP] - アリスインミルクランド
[作詞:赤飯 / 作編曲:鬱P] - 過食性:アイドル症候群
[作詞 / 作曲:スズム] - またあした
[作詞 / 作曲:ふわりP]
MIX&MASTERING : yasu(Tinkle-POP)
赤飯(せきはん)
ソーシャルネットワークの音楽シーンを中心に活躍する男性の歌い手。パワフルなボーカルから女性のような透き通った声までさまざまな歌声を使いこなす。2011年に自身初のアーティストアルバム「EXIT TUNES PRESENTS SEKIHAN the BEST」を発売。以降のアルバムが3作全てオリコン週間ランキングトップ10に入るという、歌い手初の偉業を達成した。2013年6月には4枚目のオリジナルアルバム「赤BAN」を発表。同年9月には東京・Zepp DiverCity TOKYOにてワンマンライブを敢行する。