ナタリー PowerPush - Secret

いしわたり淳治とK-POPアイドルの異色対談

韓国語はまったくわからない

──1stミニアルバム「Shy Boy」のときは、どんなふうに作詞を進めていったんでしょうか?

いしわたり リード曲「Shy Boy」は、とにかく曲がいいと思いました。韓国の曲ってデジタルなダンスチューンが多いけど、「Shy Boy」はオールディーズの匂いがするのが新鮮だなって。

──韓国版が存在する曲に日本語詞をつける作業はいかがでした?

対談風景

いしわたり 一番気にしたのは、元々の韓国語の歌詞の発音にできるだけ近づけること。あと内容が全く同じであること。その2点を自然な形で実現した曲って今までなかったのかなと思ったので、そこはかなりこだわりました。でも「Shy Boy」の歌詞って、登場人物が3人いて。その書き分けを3分間の曲の中でするのはすごく難しかったです。

──では作詞の手順としては、韓国語の歌詞を理解して、発音を把握するところから始まると。

いしわたり 僕は韓国語が全くわからないので、まずカタカナでハングルの読みを書いていただいたものと対訳をもらって。あとは担当ディレクターさんと打ち合わせをして「原曲のここの歌詞を残そう」といったリクエストをもらう場合もあります。

──作詞にはどのくらい時間がかかりましたか?

いしわたり ほかのアーティストでもそうなんですが、僕は基本的に5時間くらい。というか、それ以上は時間をかけないようにしてるんです。たかだか3~4分の曲を何十時間って考えちゃうと、3分で伝わらない内容になることもあるので、作業はなるべく早く終わらせることにしてるんです。

──とはいえ、韓国版に近い発音で同じような意味を探す作業は本当に大変だったのでは?

いしわたり 言葉を探してはいないんです。ただ聴こえたとおりに書いてるというか、最初に物語を把握して、登場人物のキャラクターや近い語感の言葉を選んで全体を再構成するみたいな。僕としては別に驚かれることはやってないです(笑)。

──初めてアイドルの曲を手がけてみて、バンドやソロアーティストに提供するときと違いはありましたか?

いしわたり やっぱりアイドルって華があるじゃないですか? だから使える言葉が多いなっていうのは思いました。シンガーソングライターの方とかだと、その人のキャラクターが大きかったり、歌詞やメロディで勝負しなきゃいけない部分が多かったりするんだけど、アイドルってある種、いろいろなキャラクターを演じられますから。だからその分、使える言葉の幅が広がっていいな、と。

発音が近い言葉が多くて歌いやすかった

──Secretの皆さんは「Shy Boy」の日本語版を聴いたときどんな印象でしたか?

ジウン 韓国版とストーリーがとても似ていたので、理解しやすく、感情も込めやすかったです。

ソナ 韓国版の歌詞をそのまま生かしてもらった部分があったんですが、とてもセンス良く使っていただいてるなって。

いしわたり 「ポンッポンヘ」でしょ?(笑)

対談風景

ソナ そうです! 私のパートなので特にうれしかったです。

ヒョソン 全体的にも韓国版の歌詞とたくさんの言葉が似ていて、すごく歌いやすかったです。

いしわたり 良かった(笑)。

ソナ ただ、私たち韓国人にとっては「つ」と「づ」の発音がとても難しくて。

ヒョソン それがある部分は何度も歌い直しをして、レコーディングの時間が長くなってしまうんです。

いしわたり そうみたいですね。ディレクターさんに聞きました。だから「これくらいのサヨナラ」ではだいぶ減らしたんですよ(笑)。

Secret ありがとうございます!(笑)

──ジンガーさんのラップはどうでした?

ジンガー 発音がすごく難しいのかなと思ったんですが、ラップも韓国版の発音と近くて。私の舌が動きやすいようにきれいに書いてくださったので、本当に助かりました。

いしわたり 僕も書いてる最中、「こんな早口でイケんのかな?」って思ってたんですよ。でも上がりを聴くと、ちゃんと歌えてるからすごいなって感心しました。

──ところで、「Shy Boy」のリリース後はTwitterなどでのリスナーの反応がすごく良くて。K-POPファンは日本語版の歌詞に落胆することも多々あるみたいですが、いしわたりさんの歌詞は皆さん大絶賛でした。その話は聞きました?

いしわたり いや、僕、Twitterに足を踏み込んでないんです。そういうものはmixi以降やってないですね(笑)。

──意外です。

いしわたり 僕、ものすごいひっそり暮らしてるんで。なるべく人前に出ないように(笑)。こうやって取材を受けるのも、すごい久しぶりなんですよ。

──でも、レコード会社の方などを通して評判が耳に入ってきたのでは?

いしわたり そうですね。いくつかファンの方の反応を集めてくれてメールで送っていただきました。でも僕、読んだら調子に乗ると思って、ものすごいサッと斜めに読んで閉じちゃったんです(笑)。

──そうなんですか? うれしくて全部読んだ、とかじゃないんですね。

いしわたり はい。もちろんうれしいんですけど、やっぱり作品の価値は自分で決めないとダメですから。

ニューシングル「これくらいのサヨナラ」 / 2012年2月29日発売 / Sony Music Associated Records

  • 初回限定盤A [CD+DVD+フォトブック] 1800円(税込) / AICL-2351~2352 / Amazon.co.jp
  • 初回限定盤B [CD+DVD+フォトブック] 1800円(税込) / AICL-2353~2354 / Amazon.co.jp
  • 通常盤 [CD] 1200円(税込) / AICL-2355 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. これくらいのサヨナラ
  2. 恋はロング・ラン
  3. COLOR OF LOVE
初回限定盤A DVD収録内容
  • 「これくらいのサヨナラ」
    MUSIC VIDEO
  • ショートインタビュー
初回限定盤B DVD収録内容
  • 「これくらいのサヨナラ」
    MUSIC VIDEO メイキング
LIVE INFORMATION

Secret 初のJapan Tour!!
Secret 1st Japan Tour
“SECRET TIME” 2012

  • 2012年3月5日(月)大阪府 Zepp Osaka
    OPEN 18:00 / START 19:00
  • 2012年3月7日(水)愛知県 Zepp Nagoya
    OPEN 18:00 / START 19:00
  • 2012年3月8日(木)東京都 Zepp Tokyo
    OPEN 18:00 / START 19:00

Secret

Secret(しーくれっと)

2009年にヒョソン、ジウン、ジンガー、ソナの4人で結成されたK-POPアイドルグループ。同年10月、配信シングル「I Want You Back」でデビューを果たす。2010年には2枚のミニアルバムをリリースし、ゴールデンディスク大賞新人賞を受賞した。2011年にリリースしたシングル「Shy Boy」が大ヒットし、知名度と人気を飛躍的に上昇させる。同年8月、シングル「Madonna」で日本デビュー。11月に日本でリリースしたミニアルバム「Shy Boy」では収録曲全曲の日本語詞をいしわたり淳治が手がけ、大きな注目を集めた。2012年2月、ニューシングル「これくらいのサヨナラ」をリリースする。

いしわたり淳治(いしわたりじゅんじ)

1977年生まれ、青森県出身のアーティスト。1997年、ロックバンド・スーパーカーのギタリストとしてメジャーデビューを果たし、全曲の作詞を担当した。2005年にスーパーカーが解散したあとは、さまざまなバンドやアーティストのプロデュース、および作詞を手がけている。