SEAMO|10枚目のアルバムで描くライフストーリー

SEAMOが通算10枚目となるオリジナルアルバム「Wave My Flag」を10月9日にリリースした。

来年3月23日にデビュー15周年を迎えるSEAMO。リリースから遠ざかっていた時期もあるが、2018年2月に「Moshi Moseamo?」を発表してからは2年で3枚のフルアルバムをリリースしており、アニバーサリーイヤーに向けて復調ぶりを見せている。節目ということで“今までのSEAMO”と“これからのSEAMO”を歌った曲が多くなったと語るニューアルバムには、盟友たちとのコラボ曲や、ライブでおなじみの天狗仮面=シーモネーターの新曲も収録。SEAMO流のおふざけとペーソスを交えながら、ときに熱く、ときに寄り添うように聞き手にエールを送る。

音楽ナタリーではSEAMOにインタビュー。調子を取り戻したキッカケや長く活動を続ける秘訣を聞きつつ、今回のアルバムをどんな思いで作りあげたのか語ってもらった。

取材・文 / 猪又孝 撮影 / 須田卓馬

自問自答しながらステージに立っていた

──近年は順調な制作ペースですが、2013年12月発売の7thアルバム「TO THE FUTURE」から昨年2月発売の8thアルバム「Moshi Moseamo?」までは4年2カ月のブランクがありました。その時期はどのような思いで過ごしていたんでしょうか?

何をやればいいんだろうって迷っていた時期でしたね。それまでメジャーでやらせてもらって、タイアップもいろいろやらせてもらって。とはいえ、曲を出していかないと前に進めないなという思いもあって。ありがたいことにライブはたくさん呼んでいただけていたので、ステージに立ちながら「これでいいのかな?」って自問自答しながら、歩みは止めず、軌道修正していった感じですね。そんな中で「Moshi Moseamo?」を自力で出したら、お客さんから「待ってました!」感があって「あ、これでいいんだな」って。あまり深く考えずバシバシ出していけばいいんだと。そこからはわりとスケッチ感覚で曲を作るようになって、筆が進み出しましたね。

SEAMO

──4年2カ月のブランクの間にはCrystal Boy(nobodyknows+)、KURO(HOME MADE 家族)、SOCKSと共に2017年6月に「ON&恩」を配信しました。この曲がブレイクスルーになった面はありますか?

あの曲に助けてもらったところはあります。仲間と楽しく作れましたし、「これでいいんだよな、俺たちの音楽は」って。そしたら、それが軸になって、ほかの曲がどんどんできていった。「Moshi Moseamo?」を出すキッカケの1つかもしれないですね。

──「ON&恩」は、世代が1つ下のSOCKSが入ってるところがポイントだと思ったんです。いつものメンツじゃないフレッシュ感をもたらしていた。

SOCKSを入れるのはCrystal Boyの発案だったんです。当初は「俺たちなんかとやってくれるの?」と思ったんですけど、僕が名古屋で始めた「男尻祭り」というイベントに出ていたこともあったし、僕たちに対する並々ならぬリスペクトがあって。彼はAK-69やDJ RYOWと曲を作ってるし、TOKONA-Xのラインというか、そっちの後継者みたいな感じですけど、僕たちのほうも大好きだったと。彼は若い世代のヒップホップの体現者でもあるし、飛び道具的なところもあるので、すごく刺激を受けましたね。

──SOCKSはユーモアとシニカル、両方の視点を持った個性的なラッパーですよね。

誰とも似てないですよね。言葉の選び方にすごくセンスがあるし、パンチラインも強烈で。決してライミングで勝負というタイプじゃないけど、「あ、これでいいんだ」みたいな影響も受けました。あと、身なりが洒落てますよね。最近は角刈りにしてみたりとか(笑)。すごくいい影響をもらいました。

今までのSEAMOとこれからのSEAMO

──今回のアルバムはどのように制作が始まったんですか?

最初はミニアルバムでいいという話もあったんですけど、よく考えたらこのアルバムで10枚目になるよなって。だったら15周年だし、ここでガツっとまとめておきたいなと。最初はデモが2~3曲あるかなくらいのところから始めて、今年の7月、8月の2カ月で書き下ろして録りました。我ながらやれるもんだなって思いましたね(笑)。

SEAMO

──今回は1980年代後半から1990年代前半のヒップホップのエッセンスが感じられるビートが多いですね。特に中盤の「日々労働」や「アンビリーバブル」、シーモネーター名義での「BAD天狗」とか。

ニュージャックスウィングとかオールドスクールとかがファッション面でリバイバルしていて、時代が僕らに追い風なのかな?って感じてるところがあって。俺たちにとってはなんてことはないものでも若い子たちには引っかかったりするから、俺たちが体現してきたことをやればいいんだって。いつもは若い子の動向も気になるんですが、今回は、いい意味でそれをまったく気にせず作ったんです。ビートもあえて1990年代に流行ったミクスチャーっぽい曲とかオールドスクールなモノ、J-RAPっぽいモノを発注しました。

──トピック面で意識していたことは?

これまでアルバムを作るときは、「今のSEAMO」を描くよう心がけていたんですけど、今回は「今までのSEAMO」、そして「これからのSEAMO」を書いたリリックが多くなったなって思います。今回「大人になりました」をリード曲にしたんですけど、最初は「これをリード曲にして大丈夫か?」と思ったんです。もともとの僕のファンには喜んでもらえるかもしれないけど、僕の曲をこれから聴く人には伝わりにくいんじゃないかと。でも、スタッフから15周年なんだからそういう曲がいいんじゃないの?と言われて、じゃあ、今回はこういうふうに歩んできましたよっていう自分を描けばいいかと。しかも、それってヒップホップの根底にあるものじゃないですか。俺イズムとライフストーリーっていう。だから、あまり悩まず書けたし、15周年という節目に相応しい内容になったんじゃないかと思います。

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「あの人は今」感