ナタリー PowerPush - SCREEN mode
サウンドプロデューサー・太田雅友×声優・林勇 アニソン×王道J-POPユニット始動
雅友(G)と勇-YOU-(Vo)による男性2人組ユニット・SCREEN modeが、現在放送中のアニメ「ぎんぎつね」のエンディングテーマ「月光STORY」でデビューを果たす。新人アーティストながら大きな話題を集めているこの2人。それもそのはず、雅友は田村ゆかりをはじめとする多くのアーティストを手がけるサウンドプロデューサー・太田雅友、そして勇-YOU-は洋画の吹替を中心に活躍する声優の林勇だ。
ナタリーではデビューシングルの発売に合わせ、2人にインタビューを実施。ユニット結成の経緯やサウンド作りの裏側、2人のバックボーンなど幅広く話を聞いた。
取材・文 / 臼杵成晃
ギリギリのタイミングで運命の出会い
──プロデューサーとして活躍されている雅友さんが、このタイミングでユニットを結成した経緯をまずは教えてください。
雅友(G) 自分発信で何かやりたいなというのはここ数年思っていて。なんでもよかったんですよ。ニコ生を急にやってみたりとか(笑)。たまたまランティスのプロデューサーさんとお話したときに「ユニットを立ち上げてみるか」って話になったんです。ランティスさんではちょうどその頃「ぎんぎつね」の主題歌を歌う男性声優のオーディションを進行していて。それと前後してプロデューサーさんからは「太田くん、何かやるなら手伝うぜ」とは言われてたんですね。それで時期的にうまく立ち上げられたら「ぎんぎつね」に間に合いそうだということで、あせって探しました(笑)。
──アーティストのプロデュースではなくユニットとして動くことを前提に、「ぎんぎつね」の楽曲を手がけることになったと。
雅友 はい。でもなかなか「これだ!」って人と巡り会えなくて。そんなときにアニメや映画の劇伴をやっている友人が「すごく歌がうまい声優がいる」って紹介してくれたのが勇-YOU-だったんです。あと3日で結論出さないと「ぎんぎつね」に間に合わないっていうタイミングで。
──ギリギリのところで、とんだ逸材が(笑)。勇-YOU-さんにとっては突然降ってきた話ですけど……。
勇-YOU-(Vo) ホントにそうなんですよ。「すぐにデモテープを送ってくれる?」って言われて。
──もともと個人で音楽活動されていたんですよね。
勇-YOU- はい。以前から作詞作曲はやっていたので、幸いすぐにデモは準備できて。
──デモを聴いた第一印象は?
雅友 純粋に声に魅力がある人だなって。これまでいろんなアーティストをプロデュースしてきて、その人の声に合わせて曲を作るスキルに関しては自信があるんですけど、この人は声に魅力があるからとにかく何も考えずにすぐに作り始めようと。
──勇-YOU-さんとしては、確実に注目を集めるであろう「太田雅友の新プロジェクト」に参加するプレッシャーはありませんでしたか?
勇-YOU- いえ、プレッシャーを感じて躊躇するようなことはなかったですね。率直に音楽を通して何かを発信できる機会を与えてもらった喜びが大きかったので、素直にその気持ちが優先されたというか。
超常現象について歌うメタルバンドを
──雅友さんはプロデューサーとして活動する前にバンドもやっていたんですよね? 雅友さんがプロデュースを手がけている田村ゆかりさんに話を聞いたときに、田村さんは「太田さんはもともとご自身のバンドで歌を歌われていたからか、とても言葉が乗りやすいメロディなんですよ」っておっしゃっていて(参照:田村ゆかり「Fantastic future」インタビュー)。
雅友 それはあるかもしれないですね。歌い手に合わせて考えるというのは、自分の経験も踏まえて、意識するというよりはデフォになってるんだと思います。
──バンド時代はどんな音楽をやられていたんですか?
雅友 高校生の頃からギターを始めて、いろんなバンドをやってましたけど、一番長くやってたのはメタルのバンドで。
勇-YOU- そうなんですか!?
雅友 超常現象について歌うメタルバンドを。
──あははははは(笑)。意外すぎますね。
雅友 それが全然売れなくて(笑)。ライブをやっても客は入らず。そのバンドが3年ぐらいで、そのあとのバンドも3年近くやってたんですけど、それは例を挙げるならスピッツみたいな。
勇-YOU- ガラリと変わりましたね(笑)。
雅友 超常現象のバンドではあまりにも客が入らないから。地元の名古屋で、当時BLANKEY JET CITYとかが出ていた硬派なライブハウスに出てたんですけど、そこで「お前らは名古屋の恥だ」って言われて(笑)。これじゃダメなんだなって思って始めたのがその次のバンドで。
──雅友さんが作る曲って、本当にバリエーション豊かなので、ルーツがまったく読めなかったんですよ。ずっと気になっていて。
雅友 好きなアーティストが見つかるとその人のルーツを掘り下げるみたいな聴き方だったので、例えばJ-POPのアーティストでもルーツをたどればジャズだったりメタルだったりに影響されているのが見えてきますよね。自分で何か特定のジャンルを掘り下げるというよりも、憧れている人を追いかけるうちに身に付いたみたいなところが大きいです。
──ちなみに影響を受けたギタリストやボーカリストは?
雅友 アル・ディ・メオラというフュージョン系のギタリストはかなり好きですね。ボーカリストは……スティーヴィー・ワンダーとチェット・ベイカーですかね。ちょっと中性的な声を持った人というか。でも長渕剛さんも好きなんですよ。
勇-YOU-のルーツはブラックミュージック
──勇-YOU-さんは子供の頃から「劇団ひまわり」で役者をやられてたんですよね。
勇-YOU- はい。5歳の頃から。両親が息子をメディアに出したいからと劇団に入れて。
──そんなに小さな頃に親の希望で入ったということは、本人はもう何もわからないままに?
勇-YOU- もうまったく。知らないうちに演技の練習をさせられて(笑)。
──作詞作曲をするほど音楽にのめり込んだのはどのようなきっかけで?
勇-YOU- 小学生の頃からずっと、歌うのがとにかく好きだったんです。自分の好きな歌を生かせるようになりたいなと思って、高校卒業後に音楽の専門学校に行ったのがきっかけですね。中学生の頃からJ-POPを基本に聴いてましたけど、高校生の頃にブラックミュージックにハマって。
──どのあたりのアーティストに影響を?
勇-YOU- 雅友さんも挙げていたスティーヴィー・ワンダーはもちろんだし、ブライアン・マックナイトとかエリック・ベネイとか……。専門学校に入ってからそういうブラックミュージックの歌い回しを研究したのが、今につながるところかなと思いますね。
収録曲
- 月光STORY(テレビアニメ「ぎんぎつね」エンディングテーマ)
- フィロソフィー
- Re:Evolution
SCREEN mode(すくりーんもーど)
田村ゆかりをはじめ多くのアーティストに楽曲を提供するサウンドプロデューサー・雅友(太田雅友)と、洋画吹替やアニメ、ゲームの声優として活躍する勇-YOU-(林勇)によるユニット。SCREEN modeというユニット名は「音の『SCREEN=映像』を、さまざまな『mode』に変化させながらリスナーの心に焼き付けていきたい」という思いから名付けられた。2013年11月、テレビアニメ「ぎんぎつね」のエンディングテーマ「月光STORY」でメジャーデビューを果たす。