音楽ナタリー Power Push - さユり

「僕街」監督と語る新曲の世界

今を生きることしかできない

──今回のシングルには「来世で会おう」という曲も収録されています。この曲では「それは小さな光のような」と対になる世界観を描いているということですが。

さユり 「僕だけがいない街」での悟は過去に戻ることで前に進むけど、現実の私にその能力はないので今を生きることしかできないんです。だったら今を愛するしかないよなと思って、どうやって愛していくかを曲として書きました。曲自体は前からあったんですけど、今回の「それは小さな光のような」と対になる内容だと思ったので、シングルの2曲目に入れさせてもらうことにしたんです。

伊藤 この曲もね、かなり頻繁に聴いてますよ。「それは小さな光のような」の90秒バージョンとフルバージョンを聴いたあとには必ず聴くという流れで。けっこう幸せになれる感じがありますよね、この曲には。

さユり ああ、よかったです(笑)。

伊藤 アニメの「僕だけがいない街」を観てちょっとやられた心を救ってくれるというか。だからこの2曲は対にして聴くのがオススメです。サウンドも「それは小さな光のような」とは違っていて面白いですよね。自分で書かれる曲はこういうスタイルなのかなと思って最初は聴いてましたけど、1stシングルの「ミカヅキ」を聴くとまたそれとも違っているという(笑)。奥深いですよねえ。でも、どの曲も聴いていると幸せな気持ちになれるところは共通してるかな。“幸せ”という表現が正しいかはわからないですけど。

さユり

──翳りを歌いながらも、楽曲の中で、しっかり希望を描いていくのがさユりさんのスタイルではありますよね。

さユり そうですね。私はもともと後ろ向きな人間なので、後ろにならどこまででも行けるんです(笑)。でも、前に進むためにはちゃんともがいて、踏ん張らなきゃいけなくて。それこそが音楽をやる意義だと私は思っているんですよね。なので、自分なりの希望みたいなものは曲を作る上でいつも大事にしています。とは言え、キレイなだけじゃなく、その裏側にある汚くて弱い部分もしっかり描きたいので、そこはアレンジャーの方にお願いしてサウンド面でも表現してもらうようにはしています。「来世で会おう」に関してもそういう部分を伝えるために激しい部分をちゃんと出してもらいましたし。

1つひとつのライブを明日死ぬつもりでやっていく

──今を愛するための歌である「来世で会おう」のお話のあとに聞くのもどうかと思いますけど、「僕だけがいない街」の悟のように、もし過去に戻れる能力を持ったとしたらどうします?

伊藤 昔、「バタフライ・エフェクト」という映画がありましたけど、過去に戻って何かをすると現在のバランスが崩れてしまうことになるわけですよ。つまり今僕が生きている時間は過ごせない。そうすると妻に会えなくなる可能性があるので、それはイヤなんですよね。と、僕は言うようにしてますけど(笑)。

さユり あははは(笑)。私も同じです。もし過去に戻ったら、この「それは小さな光のような」が歌えない世界になる可能性があるじゃないですか。そうしたら、もしこの曲を聴くことで救われる運命だった子が、死んでしまう世界になるかもしれないわけで。だからこそ、やっぱり私は今の世界に対してちゃんと責任を持って生きなきゃいけないんだなって思いますね。

──なるほど。と言うことは、今を愛して生き続けていくことで、いずれは過去に対する後悔がなくなればいいという思いもあったりします?

左からさユり、伊藤智彦。

さユり いや、それがなくなればいいわけではないんです。例えば過去の匂いの記憶とか、そういうものが私にとってはすごく大事なんです。自分の音楽はほとんどが記憶から生まれるものでもあるので、そこがなくなると私はいなくなってしまうというか。後悔するのはつらいから過去と自分を切り離したいという思いもあるけど、同時にそれが一番の心のよりどころでもあるんですよね。自分自身を構成している大事なものだから、決して離れてはいけないもの、目をそらしてはいけないものなんだと思います。

伊藤 なるほど。いやー、立派な19歳ですね。昔の自分を叱ってやりたい気分でいっぱいですよ、それこそ過去に戻って(笑)。

──あははは(笑)。アニメ「僕だけがいない街」は、まだまだここからさまざまな展開を伴ってストーリーが進行していくと思います。楽しみにしているファンに監督から一言いただけますか?

伊藤 この作品の難しいところは何を言ってもネタバレになるところで(笑)。でも来週も絶対観たくなるようにお話を作っているので楽しみにしていただければと。あとは、作品中で説明されていますけど、過去に戻ったとしてもすべてを変えることはできないんですよ。せいぜいプラスマイナスゼロになるか、ちょっとマイナスになるっていう。だからこそ今が大事なんだよっていう。さユりさんの曲にも通じるメッセージを感じてもらえたらいいかなって思います。

──では、さユりさんの今後についても一言お願いします。

さユり 私はライブがすごく好きなんです。なので、1つひとつのライブを明日死ぬつもりでやっていく。それを積み重ねていきたいなっていう気持ちでいます。4月23日には渋谷WWWでワンマンライブもあるので、ぜひ観に来てください。

伊藤 その頃にはもうアニメの放送は終わってるんで大丈夫だと思います。さすがに放送中だとね、「どこに行くんですか?」「いやライブに……」とは言いにくかったりするので(笑)。大手を振って、喜んで観に行かせてもらいます!

さユり
ニューシングル「それは小さな光のような」 / 2016年2月24日発売 / アリオラジャパン
初回限定盤A [CD+DVD] 1599円 / BVCL-696~7
初回限定盤B [CD+DVD] 1599円 / BVCL-698~9
期間生産限定盤 [CD+DVD] 1599円 / BVCL-701~2
通常盤 [CD] 1000円 / BVCL-700
初回限定盤A CD収録曲
  1. それは小さな光のような
  2. 来世で会おう
  3. 光と闇-弾き語りver.-
初回限定盤A DVD収録内容
  • それは小さな光のようなMV(フルレングスver.)
初回限定盤B CD収録曲
  1. それは小さな光のような
  2. 来世で会おう
  3. スーサイドさかな-弾き語りver.-
初回限定盤B DVD収録内容
  • 来世で会おうMV(フルレングスver.)
期間生産限定盤 CD収録曲
  1. それは小さな光のような
  2. 来世で会おう
  3. ふうせん-弾き語りver.-
期間生産限定盤 DVD収録内容
  • それは小さな光のような-「僕だけがいない街」ノンクレジットED映像
通常版 CD収録曲
  1. それは小さな光のような
  2. 来世で会おう

Blu-ray /DVD「僕だけがいない街」 / アニプレックス / フジテレビジョン

上巻:第1話~第6話 2016年3月23日発売
Blu-ray完全生産限定版 19440円 / ANZX-12041~4
DVD完全生産限定版 16200円 / ANZB-12041~4
下巻:第7話~第12話 2016年6月22日発売
Blu-ray完全生産限定版 19440円 / ANZX-12045~8
DVD完全生産限定版 16200円 / ANZB-12045~8

※上下巻ともに本編DISC2枚+特典DISC2枚

さユり
さユり

福岡県出身、1996年生まれのシンガーソングライター。人とは違う感性と価値観を持つことにコンプレックスと優越感を抱き、生きることへの息苦しさを感じる自分を“酸欠少女”と表現している。中学生の頃に地元でライブ活動をスタートさせ、2013年に上京。2015年3月には東京・TSUTAYA O-nestでのワンマンライブを成功に収める。同年8月にフジテレビ系「ノイタミナ」枠のアニメ「乱歩奇譚 Game of Laplace」のエンディングテーマ「ミカヅキ」でメジャーデビュー。2016年2月24日に2ndシングル「それは小さな光のような」をリリースした。4月23日には東京・WWWにて、ワンマンライブ「ミカヅキの航海」を実施する。

さユりワンマンライブ「ミカヅキの航海」

2016年4月23日(土)東京都 WWW

伊藤智彦(イトウトモヒコ)

アニメーション監督・演出家。2001年、アニメーション制作会社マッドハウスに入社。2004年放送の「MONSTER」や2005年放送の「闘牌伝説アカギ~闇に舞い下りた天才~」といった同社を代表するテレビアニメ作品の絵コンテ、演出を手がける。2006年の「DEATH NOTE」、2007年の「魔人探偵脳神ネウロ」で助監督を務めた。劇場作品では2006年公開の「時をかける少女」、2009年公開の「サマーウォーズ」で助監督として活躍。その後、フリーとなり2010年に初監督作品「世紀末オカルト学院」を手がける。現在、監督を務めるアニメ「僕だけがいない街」がフジテレビ「ノイタミナ」枠にて放送中。