澤野弘之×JO1・河野純喜&與那城奨|JO1のメインボーカル2人が“澤野ワールド”へ、新たな出会いが生み出したものとは

作曲家・澤野弘之によるボーカルプロジェクト・SawanoHiroyuki[nZk]のニューシングル「OUTSIDERS」が5月25日にリリースされた。

シングルの表題曲は、現在TOKYO MXほかで放送されているテレビアニメ「群青のファンファーレ」のエンディングテーマ。ゲストボーカルには、アニメのオープニングテーマ「Move The Soul」を担当するJO1より河野純喜と與那城奨が迎えられた。JO1のメインボーカルとしてグループにおける歌の主軸を担ってきた2人は、今回のコラボでボーカリストとして新たな一面を見せ、澤野が音楽で描く壮大な世界をエモーショナルに彩っている。澤野自身も、異なるジャンルで活動する彼らとのコラボを経て「たくさん刺激をもらった」と話す。

音楽ナタリーでは新たな化学反応が生まれたこのコラボについて、3人に語り合ってもらった。

取材・文 / 岸野恵加撮影 / YURIE PEPE澤野弘之スタイリスト / 田名部敦士

世代が違ってもつながれる感覚があった

──先ほどの撮影、3人の間にとても和気あいあいとしたムードが流れていましたね。

澤野弘之 お会いするのはレコーディングのときとミュージックビデオの撮影、そして今日で3回目かな? もう、ひとえにお二人の人柄がいいからですよ。

河野純喜與那城奨(JO1) いえいえそんな!(笑)

左から澤野弘之、河野純喜(JO1)、與那城奨(JO1)。

左から澤野弘之、河野純喜(JO1)、與那城奨(JO1)。

──澤野さんは今回のコラボが決まる前は、JO1にどんな印象をお持ちでしたか?

澤野 テレビで何度も拝見していましたが、ボーイズグループということでダンスや歌の面を含め、すごくアグレッシブに活動されている印象でした。

河野 わあ……うれしいですね。僕は「進撃の巨人」とか、澤野さんが音楽を手がけられたアニメがめっちゃ好きなんです。今回お話をいただいたときは、その世界の中に僕たちが入って自分の声を入れられるなんて、ひたすらに「うれしいな」という気持ちでした。

與那城 澤野さんが音楽を担当されているアニメはダークファンタジーの印象が強かったので、最初は勝手に「怖い方なのかな」とイメージしていたんです。でも全然そんなことはなくて、とても優しくて話しやすい方で。

河野 僕も、1回でも音を外したりしたら怒られるんじゃないかなと思ってました(笑)。なので実際にお会いしてめっちゃ安心しましたね。

澤野 ははは! 僕もお二人のことを「どういう方たちなんだろう」と思っていたんですけど、いざお会いしたらすごく気さくに話しかけてくれて。僕はCHAGE and ASKAさんが大好きなんですが、ミュージックビデオ撮影のときに、河野さんがたまたま(CHAGE and ASKAの)「LOVE SONG」を口ずさんでいたんですよね。「その曲知ってるんですか!?」ってびっくりして。僕はひと回り以上歳が上だけど、世代が違ってもつながれる感覚があって、すごくうれしかったです。そして気さくだけど、パフォーマンスになるとまた顔つきが変わる。「これが女性を虜にする魅力なんだろうな」と思いましたね(笑)。

澤野弘之

澤野弘之

河野 (笑)。うれしいですね……本当に澤野さんは優しい方です。

楽曲の世界をより広げてくれている

──今回ゲストボーカルとしてお二人に白羽の矢が立ったのは、アニメ「群青のファンファーレ」のプロデューサーの提案だったそうですね。

澤野 そうですね。劇伴を担当する流れでエンディングは僕がやらせてもらうことになったんですが、JO1さんがオープニングテーマを担当することが決まり、エンディングにもJO1さんに参加していただくのはどうでしょうかとご提案をいただいて。僕としても「ぜひ」という形でした。

──SawanoHiroyuki[nZk]の楽曲にはこれまで、AimerさんやLiSAさん、西川貴教さん、ポルノグラフィティの岡野昭仁さん、岡崎体育さん、MAN WITH A MISSIONのJean-Ken Johnnyさんなど、多彩な面々がゲストボーカルとして名を連ねてきましたが、ボーイズグループのメンバーが参加するのはとても珍しいですよね。

澤野 初めてのことですね。僕が劇伴、そしてJO1さんがオープニングテーマを担当するという流れがなかったら実現しなかったと思うので、めちゃくちゃいい機会をいただいたなと思っています。20代の若い方とご一緒することはもちろん今までもあったんですけど、やる前からとても楽しみでした。

與那城 光栄です……ありがとうございます。

左から河野純喜(JO1)、與那城奨(JO1)。

左から河野純喜(JO1)、與那城奨(JO1)。

──「OUTSIDERS」の楽曲制作は、お二人の参加が決まってから進めていったんですか?

澤野 いえ、お二人を迎えることが決まったときには、メロディもアレンジも完成させた状態でした。そこから、普段JO1の楽曲をディレクションされている方が歌割りなどを考えてくださいましたね。

──競馬用語で「outsider」は「人気が薄い馬」という意味があるようですが、もがきながらも挑戦していくという強い意志が込められている楽曲だと感じました。どのようなテーマで制作されていったんでしょうか。

澤野 「群青のファンファーレ」は競馬というスポーツを扱う青春物語なので、エンディングテーマではあるけれども、「バラードにするのではなく勢いがあって前向きな楽曲がいいかな」と考えて作っていきました。

──なるほど。レコーディングに臨むにあたり、まず河野さんと與那城さんのことをどんなボーカリストだと感じましたか?

澤野 ボーカルディレクションはいつもJO1をやられている方にお任せしたので、僕は横で「カッコいい!」と言ってただけなんですけど(笑)。聴いていて、お二人の声のコントラストがすごくいいなと思っていましたね。河野さんのエッジの効いたボーカルに対して、與那城さんは声の太さと優しい部分が魅力的で。特にサビでの勢いの出し方はそれぞれの個性が出ていたので、「楽曲の世界をより広げてくれているな」と思いながら拝見していました。

──ではレコーディングで澤野さんからは、そんなに細かくオーダーはされなかったんですね。

澤野 そうですね。「サビは勢いある感じで強めにお願いします」というようなリクエストをディレクターの方経由でお伝えしたりはしましたけど、基本的には1回目に歌ってもらったものがイメージから離れていなかったので、「このままブラッシュアップしていければよさそうだな」という感覚で見ていましたね。お二人が曲に対して感じたことを表現してくれたらといいなと思っていました。

左から澤野弘之、河野純喜(JO1)、與那城奨(JO1)。

左から澤野弘之、河野純喜(JO1)、與那城奨(JO1)。

これ、俺たちに歌える?

──河野さんと與那城さんは楽曲を受け取ったとき、まずどのような印象を受けましたか?

河野 「群青のファンファーレ」という作品にぴったりな楽曲だなと思いつつ、今までのJO1の楽曲にはない雰囲気というか、あまり歌ったことがない曲調だったので、「歌いこなせるかな」という不安は正直ありました。

河野純喜(JO1)

河野純喜(JO1)

與那城 澤野さんの作り上げる世界に僕たちの歌声がしっかり溶け込めるのか、というプレッシャーも正直ありつつ、11人ではなく2人で歌うとなるとどんな感じになるのかという楽しみもあって。最初は本当にドキドキしていましたね。最初にいただいたデモ音源では、仮歌が女性の方だったんですよ。

澤野 そうそう。作詞のcAnON.さんにお願いしたんです。

與那城 だから最初は、「これ、俺たちに歌える?」ってなってましたね(笑)。

澤野 ははは。

河野 いい意味でエンディングっぽくないというか、壮大で、オープニングテーマだったとしてもしっくりきそうな曲だなと思いました。放送前に公開された「群青のファンファーレ」のPVでは「Move The Soul」より先に「OUTSIDERS」が流れるんですけど、それを観た方が「こっちがオープニングテーマなんじゃないか」と言っていて、それはそれでうれしかったんですよね。「実はエンディングなんだぜ」って(笑)。

──確かにオープニングテーマだったとしても違和感がなさそうな壮大さがありますよね。AメロBメロとサビで、静と動のコントラストが印象的だなと感じたんです。ABは抑えて抑えて、サビでパーンと世界が開けていく感じがあるというか。

澤野 そういう展開、僕はよくやりがちなんですよね。だいたいABが静かで、サビでドーン!とさせてしまう(笑)。お二人にはその抑揚をいい感じに出してもらえたので、すごくありがたかったです。

與那城 抑揚は意識しましたね。全体的に英語の歌詞が多くて、サビも始まりから英語なんですけど、JO1の曲は日本語が多いので、発音のし方とかが全然違って。そこは細かい部分まで注意しました。

澤野 JO1の楽曲だと、分量的に英語の歌詞は少ないんですか?

與那城 そうなんです。「OUTSIDERS」は今まで自分が歌った曲の中で一番英語の分量が多いと思いますね。

與那城奨(JO1)

與那城奨(JO1)

澤野 そうだったんですね。聴いた感じでは「こういうのは歌い慣れているんだろうな」と思ってました。英語のアプローチもカッコよかったので。

──澤野さんの楽曲は英語の歌詞が多く、以前からインタビューでも「言葉の意味より響きを重視している」とおっしゃっている通り、一聴して日本語か英語かわからない響きの表現になっている部分も多いですよね。

澤野 そうですね、作詞を依頼する方には、いつもリズムやグルーヴにどう乗るかを第一に考えて詞を書いてもらっています。

與那城 確かに日本語で歌うところも、しっかり言葉として発音することよりもリズムのよさを優先して歌ったので、そこは面白かったですね。自分のパートだと「Spotlight 誤魔化せない 切り取る日常」という部分は、普段のJO1の曲だったら言葉をしっかり聞かせるように歌うんですけど、自然と音節を強調したような表現になっていました。

──意識したわけではなく、自然とそうなったんですか?

與那城 はい。澤野さんの曲に乗って思うがままにやっていたらそうなってました。

澤野 さすが! めっちゃカッコよかったですよ。日本語も英語っぽく聞こえました。