ナタリー PowerPush - 指田郁也
山下達郎が認めた大型新人 ピアノと歌で世界を揺らす
自分が出演する武道館ライブのチケットを買っていた
──で、指田さんはワーナーミュージック・ジャパン主催の「VOICE POWER AUDITION」に自ら応募し、約1万人の中からグランプリを獲得。デビューのチャンスをつかみます。
応募する動機の一番は山下達郎さんがいるレコード会社だからっていうことでしたね(笑)。オーディションのタイトルも全然知らない状態で応募したので、まさか受かるとは思ってなかったんですけど。最終審査発表の日は元々夜にバイト入れてたんで、花束持ってそのままバイト行きました。みんなに「おまえどうしたんだよ!」とか言われて(笑)。
──昨年10月には日本武道館で開催された「WARNER MUSIC JAPAN 100年 MUSIC FESTIVAL」のステージにも立って、堂々としたパフォーマンスを披露されてましたね。
グランプリを獲ったら武道館でライブするなんてことも知らなかったんですよ。だから実は、その日のチケットを知り合いの人に頼んで取ってもらってたんです。山下達郎さんが出るイベントがあるからっていうことで。そうしたらそこに自分が出ることになったんで、その知り合いに「僕、出ることになったんでそのチケットいりません」って(笑)。
──アハハ! 「どういうこと!?」って感じですよね(笑)。
めちゃめちゃビックリしてましたね(笑)。でもライブ自体はすごく気持ちよくできました。最初は緊張してたんですけど、出た瞬間お客さんからすごく温かい拍手をもらえて、「bird」のプロローグを弾いたときにはもう自己陶酔できていて。ライブの楽しさも勉強できたなって思います。
──そこから1年でついにメジャーデビューを果たすわけですが、今の気持ちは?
とにかく今は1人でも多くの人に自分の音楽を知ってもらうことだと思ってますね。なのでライブも1つ1つ丁寧に、大切にやっていきたいなって。
おじぎが長いのはライブのときに雨が多いから
──指田さん音楽性の幅が垣間見える2曲を収録したデビューシングルもすごくいい仕上がりだと思います。転機になったという「bird」は本当に爽快で開けた曲だし、一方の「夕焼け高速道路」は切なさたっぷりですよね。
「bird」はとにかく空間のある曲にしたくて、今回はバンドアレンジなんですけど、デモの段階からどんどん音を削っていって、歌を邪魔しないように心がけました。もう1曲の「夕焼け高速道路」は旅の帰り道に書いたので独特の寂しさみたいなものが出てると思います。主人公のイメージを決めつけない曲にしたいと思っていたので、聴く人それぞれの感情でその人なりの景色が見える曲になってるかなって。
──指田さんの曲を聴いていると、そのメロディや歌詞や歌やピアノをご自身がものすごく愛しているということが伝わってくるんですよ。それはつまり自らから生まれたものに対しての責任でもあるのだろうし、引いては自信ということにもなるんじゃないのかなって思うんですけど。
あ、それはあると思いますね。全部自分から出てきたものを歌ってるんで、やっぱりそのことに対する自信もあるだろうし、そういう責任感っていうか、そういうものは大事にしながら歌ってます。
──同時に聴いてくれてる人への愛もしっかり持っているような気もします。ライブのときのおじぎがめちゃくちゃ長いですもんね(笑)。
アハハ。そうですよね。僕のおじぎが長いのは、僕のライブのときに雨が多いからっていうのもあるんですけど。
──そういえば僕が観たライブは台風の日でした。
武道館のときも台風だったんです。いっつも「足元のお悪い中……」って言ってるような気がする。なので、そういうのも込みのおじぎの長さですね(笑)。
指田郁也(さしだふみや)
1986年東京生まれ。ワーナーミュージック・ジャパンが主催する「VOICE POWER AUDITION」で約1万人の応募者の中からグランプリを受賞。2010年10月に日本武道館で開催された「WARNER MUSIC JAPAN 100年MUSIC FESTIVAL」にオープニングアクトとして出演し、新人とは思えない堂々としたパフォーマンスを披露した。2011年10月にシングル「bird / 夕焼け高速道路」でデビュー。