佐咲紗花「SAYAKAVER. ~triangle~」インタビュー|歌、ピアノ、バイオリンのみで届ける“一発勝負”のアニソンカバーアルバム (3/3)

JAM Projectと「牙狼」シリーズへの暑苦しい愛

──9曲目、BLUE ENCOUNTの「ポラリス」はCDへの収録と音源の配信のみで、映像はないんですね。

はい。今回は完全なるバンドアーティスト曲がなかったのと、「ヒロアカ」という作品の中でのこの曲の持つパワーが彩りを加えてくれると思って選曲しました。「ポラリス」は一連の「ヒロアカ」主題歌の中でも特にまっすぐに言葉を紡いでいる曲だと思っていて。語弊があるかもしれないんですけど、専業作詞家さんの書く歌詞とは違う、アーティスト本人が書く歌詞特有の熱量を感じるというか、ストレートに思いを吐き出している曲なんですよね。そういうタイプの曲はラインナップになかったので、ぜひ入れたいなと。

──佐咲さんの緩急を付けたボーカルからも熱量を感じました。

ありがとうございます。ただ、聴く側に伝わりやすい、響きやすいメロディと歌詞だからこそ、ブルエンの田邊駿一さんのボーカルスタイルに寄りすぎないようにする必要もあって。ファンの方が聴いたら「違うよ」となるかもしれないんですけど、私と田邊さんは、例えばしゃくり方や語尾の切り方といったボーカルの癖が似ていると勝手に感じているんですよ。だから私の歌がシンクロしすぎてコピーにならないように、別個のものとして聞こえるように特に気を付けた曲でもあります。

──それってものすごくテクニカルな話なのでは? 佐咲さんが佐咲さんらしく歌うと自動的に似てしまう部分があるということですよね?

そうです(笑)。自分がジャンルとしてもともとバンドロックな曲が得意なのもありましたし。でも、いろいろな挑戦をしながら進んできたプロジェクトではあるので、じゃあ自分と近い感性だったり特徴だったりがある曲とどう向き合うのかというのは、楽しい課題としてありました。

──最後の曲はJAM Projectの「牙狼~SAVIOR IN THE DARK~」で、ラスボス感ありますね。これはいい意味で言うのですが、JAM Projectの曲はどんなにアコースティックでおしゃれにアレンジしても、暑苦しさは抜けないのかなと。

いや、それは私のJAM Projectと「牙狼」シリーズへの愛が暑苦しいからだと思います(笑)。この曲は、実は1枚目のカバーアルバムから候補に出しては、ほかの曲との兼ね合いなどで泣く泣く却下されていた曲なんです。「牙狼」シリーズはシンガーとしてアニメでも実写でも楽曲を担当して、そしてアニメでは声優、実写では女優としても関わらせていただいた思い入れの深すぎる作品で。そして「牙狼~SAVIOR IN THE DARK~」は「牙狼」シリーズの原点とも言える「牙狼」ファンのアンセム的な曲でもあるので、私の中では「満を持して……」みたいな勝手な満足感があるんですけど、この曲はアコースティックアレンジで歌う意味が特に大きかったですね。

──と言いますと?

この音数の少ない中で、私1人の歌で表現することによって、楽曲の厚みというよりは楽曲の芯の部分をちゃんとお伝えすることができたんじゃないか。そういう手応えを感じていて、紗花バージョンとして、自分でも納得できる形になりました。あと私は、カバーアルバムには必ず1曲は特撮ソングを入れたかったので、それも実現できてよかったです。

一発勝負ならではのアドレナリンがすごく出ていた

──リスナー側としては映像付きで毎月楽しませてもらっていましたが、ここまでお話をお聞きして「挑戦をしながら進んできたプロジェクト」だということがよくわかりました。

私はストレートなバンドの形態でばかり歌っていたので、そもそもアコースティックに対して苦手意識があったんです。しかも今回はそれぞれの曲にそれぞれの挑戦があって、技術的に大変だったのは「廻廻奇譚」だし、アプローチが難しかったのは「Stay Alive」だし、肺が苦しかったのは「徒花ネクロマンシー」だし(笑)。でも、その挑戦を通して「苦手だな」という気持ちが「楽しいな」に変わっていったプロジェクトでもありますね。

──一発撮りだからこそ生まれた歌という側面もありますよね。

大いにあります。自分1人で練習していたときとは違うパワーが出た瞬間もたくさんあって、例えば練習では「ここは息継ぎしないとダメだろうな」と思っていたパートが、本番では息継ぎなしでするっと歌えてしまったり。火事場の馬鹿力的な、一発勝負ならではのアドレナリンがすごく出ていたんじゃないかなと思いますね、3人とも。

佐咲紗花

佐咲紗花

──その3人で、4月にライブが予定されています。どんなステージになりそうですか?

パスタくんも星野さんも、毎回カチッと演奏を固めてくるというよりは、その時々の感性で弾いてくれるタイプなんですよ。今回の収録でも2人がいい意味で予想を裏切って、素敵なフレーズをたくさん投げ込んでくれたので、私もそれに刺激を受けながら楽しく歌うことができたんですけど、きっとライブではもっともっと素敵な演奏を見せてくれるんじゃないかな。2人とも超ライブミュージシャンなので、皆さんの反応だったり表情だったり、視界に入るものに呼応するようにして、間奏のソロバトルとかもどんどん熱を帯びていくと思います。勝手に2人のハードルを上げてしまいましたけど(笑)、この日だけのアレンジや即興を楽しみにしていただきたいです。

──パスタさんと星野さんはもっともっと素敵な演奏を見せてくれるとして、佐咲さんは何を見せてくれるんですか?

私は、2人を見て楽しそうにしていると思います(笑)。いつものバンドとはまた違った、より自由度の高いスタイルで音楽をやるのが楽しくて仕方がなくて。なので、私が音楽に染まっているところを見て「楽しそうだね。よかったね」と思ってもらえるはずですし、そのうえで収録以上のものをお見せします。

ライブ情報

SAYAKAVER. LIVE triangle

2022年4月17日(日)東京都 STAR PINE'S CAFE
OPEN 17:00 / START 18:00
<出演者>
佐咲紗花 / パスタ / 星野沙織
ゲスト:atsuko(angela)

プロフィール

佐咲紗花(ササキサヤカ)

2010年1月にテレビアニメ「戦う司書 The Book of Bantorra」の第2期オープニング主題歌「星彩のRipieno」でデビュー。その後も「日常」「カードファイト!! ヴァンガード」「閃乱カグラ」「ガールズ&パンツァー」などさまざまな作品のテーマソングを担当。2015年にはアニソンカバーアルバム「SAYAKAVER.」シリーズをスタートさせた。2022年3月にはその第3弾となる「SAYAKAVER. ~triangle~」を発表。4月17日に東京・STAR PINE'S CAFEでアニソンカバーライブ「SAYAKAVER. LIVE triangle」をピアノとバイオリンによるアコースティック編成で開催する。