佐咲紗花|愛と個性を詰め込んだ、本気のアニソン&特ソンカバー集

幼い頃からアニメソングや特撮ソングを好んで聴いて育ち、2009年に開催された「アニマックス presents we love anime 第3回全日本アニソングランプリsupported by J:COM」でグランプリを獲得したことをきっかけに歌手デビューを果たした佐咲紗花。2020年1月27日にデビュー10周年を迎えた彼女が、アニバーサリーイヤーの幕開けとしてカバーアルバム「SAYAKAVER.2」をリリースした。

この作品には、佐咲自身がセレクトした振り幅の広いアニソン&特ソンのカバー全12曲が収められている。音楽ナタリーでは各楽曲の選曲理由やレコーディング時のエピソードを軸に、アニソン&特ソンの魅力について話を聞いた。

取材・文 / 須藤輝 撮影 / 竹中圭樹(ARTIST PHOTO STUDIO)

佐咲紗花「SAYAKAVER.2」収録曲一覧
  1. AMAZING BREAK

    「テラフォーマーズ」OPテーマ(2014年)

    オリジナル:TERRASPEX

  2. 真赤な誓い

    「武装錬金」OPテーマ(2006~07年)

    オリジナル:福山芳樹

  3. Get Over

    「ヒカルの碁」OPテーマ(2001年~03年)

    オリジナル:dream

  4. ウィッチ☆アクティビティ

    「ウィッチクラフトワークス」EDテーマ(2014年)

    オリジナル:KMM団

  5. ダンバインとぶ

    「聖戦士ダンバイン」OPテーマ(1983~84年)

    オリジナル:MIO

  6. 空へ...

    「世界名作劇場」第21作「ロミオの青い空」OPテーマ(1995年)

    オリジナル:笠原弘子

  1. こころはタマゴ

    「鳥人戦隊ジェットマン」EDテーマ(1991~92年放送)

    オリジナル:影山ヒロノブ

  2. シュガーソングとビターステップ

    「血界戦線」EDテーマ(2015年)

    オリジナル:UNISON SQUARE GARDEN

  3. THE HERO!! ~怒れる拳に火をつけろ~

    「ワンパンマン」OPテーマ(2015年)

    オリジナル:JAM Project

  4. Super Driver

    「涼宮ハルヒの憂鬱」OPテーマ(2009年)

    オリジナル:平野綾

  5. Hands

    「ウルトラマンR/B」OPテーマ(2018年)

    オリジナル:オーイシマサヨシ

  6. Over The Future

    「絶対可憐チルドレン」OPテーマ(2008~09年)

    オリジナル:可憐Girl's

ガチオタの選曲

──佐咲さんがカバーアルバムをリリースするのは2015年3月発表の「SAYAKAVER.」以来、約5年ぶり2回目となります。ご自身にとってカバーアルバムを作る目的あるいは意味とは?

佐咲紗花

1枚目のときは、私の希望というよりはプロデューサーの意向が強かったんです。私はたくさん海外でライブをする機会をいただくんですけど、国によって人気の楽曲や作品が全然違っていて。その中でカバー曲も喜んでもらえる、というのも大きいです。それから、もともと私はアニメソングと特撮ソングが大好きでアニソンシンガーになったので「その思いをカバーアルバムを通して皆さんにお伝えできるんじゃないか」とも。

──なるほど。

実際に1枚目を出したときは、収録曲に年代的な幅を持たせたことで、いろんな世代の方から反響がありまして。で、今年デビュー10周年を迎えるにあたって、1年を通して皆さんも私も楽しめるように、まずはこの「SAYAKAVER.2」を皮切りにアニバーサリーイヤーをスタートさせましょうと。私は節目の年だから「ベストアルバムを出せるのかな?」と思っていたんですけどね(笑)。

──前作と同様に、今作も各方面に刺さりそうな選曲ですね。

ありがとうございます。私のことを知らない方がニュースで取り上げられた「SAYAKAVER.2」の収録曲を見て「これ選曲したの誰? ガチオタじゃん」みたいに言ってくださっていて、「そうなんです。ガチオタが選んだんです」と心の中でガッツポーズしました(笑)。

──その選曲の基準は?

「私が大好きだから」という1点のみですね。とにかく私がライブで歌いたい曲を30曲くらいリストアップして、プロデューサーさんをはじめとする制作チームの前で全曲プレゼンして、12曲に絞ったんです。この「SAYAKAVER.」というタイトルはダブルミーニングになっていて、1つは当然“紗花によるカバー(COVER)”なんですけど、もう1つは“紗花バージョン(VER.)”なんです。なので、私が歌うことで原曲のよさを再認識してほしい、あるいは原曲に別の角度から光を当てたいという気持ちも込めています。

愛情のあるギミック

──“紗花バージョン”ということで、どの曲もアレンジが凝っていますよね。

今回のアレンジャーさんは、ほとんど私が指名させてもらいました。そのうえで「この曲は原曲の雰囲気をそのまま生かしたい」といった要望をお伝えして。例えば1曲目の「AMAZING BREAK」だったら、「ここは遊んでもいいけど、このキメだけはキープしてください」とか。私のこだわりを一番細かくお伝えしたかもしれません。

──「AMAZING BREAK」はボーカルも非常にアグレッシブですね。

「私バージョンにしなきゃいけない」と思いつつも、原曲が持つ荒々しさも大切にしたくて。「テラフォーマーズ」という作品自体が、生きるか死ぬかの瀬戸際を描いているじゃないですか。実は最初にできあがったアレンジはもう少しポップだったんですけど、「いや、この歌詞の意味と作品世界のことをもう一度考えていただけないでしょうか」といったやり取りをして。あの「殺られる前に殺る」みたいなギリギリのラインを歌で表現したかったんです。

佐咲紗花

──個人的に面白いと思ったのは「シュガーソングとビターステップ」で。こちらはソウルフルな仕上がりで、佐咲さんのボーカルも肩の力が抜けていますよね。

「シュガーソングとビターステップ」は原曲がものすごく強いし、リスナーの皆さんもあのテンションになじんでいると思うんです。だから私バージョンにするためにも、そして皆さんの耳にも別物として響かせたいという狙いもあって、あえて1980年代のディスコ的なファンキーな感じに。ボーカルにしても、最初は声を張って歌うつもりでレコーディングに臨んだんですけど、アレンジャーの三宅博文さんから「お前はお前で原曲に対する思い入れとか愛情とか観念とかあると思うけど」とおっしゃってくれて。アレンジャーの立場からボーカルもディレクションしてくださって、結果的にこうなりました。あと、この曲のイントロにはボコーダーで何かを言っている男性の声が入っているんですけど、トラックダウンが終わってから三宅さんが「これ、なんて言ってるかわかる?」って。

──なんと言っているんですか?

実は「SAYAKAVER.2」と言っているんですけど、私はそれがわかっていなくて、三宅さんから「お前、気付けよー!」って(笑)。そういう愛情のあるギミックを入れてくださったのもすごくうれしかったです。

「そんなんじゃオーラロードは開かないよ!」

──オリジナル曲とカバー曲、歌うときの意識の違いはありますか?

カバー曲を歌うときは“自分らしさをどこまで出すべきか”という線引きに悩みますね。原曲に対するリスペクトと、自分らしさの折り合いをどう付けるかってジャッジが難しいんです。それこそ「シュガーソング」のレコーディングのようにディレクターさんの意見を参考にしたり、ときには委ねたりしています。

──単純にプレッシャーはないですか? 原曲を歌われている方々も優れたボーカリストばかりですし。

佐咲紗花

それはありますね。特に「ダンバインとぶ」は不安が大きかったかもしれません。やはりMIQ(2001年にMIOから改名)さんのあのソウルフルな歌声を聴いて育ったファンが多いので「私のボーカルで足りているかな?」と。MIQさんは尊敬する大先輩でもありますし……。

──なるほど。僕は「聖戦士ダンバイン」の放送当時は5、6歳だったと思うのですが、佐咲さんの歌を聴いて作品の記憶がよみがえってきました。

うれしいです。アレンジは須藤賢一さんにお願いしたんですけど、あまり現代風にしすぎず、でも上モノとかは今っぽいという絶妙なラインを突いてくださって。しかもギターが“ジェットフィンガー”横関敦さんだったりと盤石な布陣を敷いていただいたので、その中で歌えたのもよかったです。

──レコーディングでは思った通りに歌えた?

いえ、やっぱり苦戦はしましたね。先ほどの三宅さんもそうなんですけど、今回はできるだけ各アレンジャーさんにボーカルディレクションもお願いしているんですよ。で、私が原曲に引っ張られてしまったり、何か雑念が入っときは須藤さんが「そんなんじゃオーラロードは開かないよ!」って。

──はっはっは(笑)。

すごくスポ根的な現場でした(笑)。

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