ナタリー PowerPush - Salley

カラフルポップな1stアルバム「フューシャ」

「fuchsia」は初めてテーマありきで作った曲

──「あたしをみつけて」は初期の頃の曲ということですけど、アルバムの中で一番新しくできた曲はどれになるんでしょう?

うらら 「fuchsia」ですね。

上口 フューシャって花の名前なんですけど、見た目がスカート履いた女の子みたいな印象を受けたんです。今にもバレエとか踊り出しそうなイメージが浮かんだので、3拍子で素朴な曲にしたいなっていう。ギターをつま弾いて、歌っているだけで成り立つ楽曲にしたいと思って作りました。

うらら 私も3拍子が好きなので、それほど苦労することもなく歌詞を書き上げることができました。歌録りも気負いもなく、サラッとできましたね。

──Salleyの楽曲って、壮大なアレンジで聴かせる部分がひとつ魅力としてあると思うんですけど、この曲はすごくシンプルですよね。

上口浩平(G)

上口 歌詞がすごく好きやったんで、アコギと歌だけでその世界観が出せると思って。ただアルバムの中で“ケルト感”を出すというか、そういう色が入った楽曲を1、2曲入れておきたいと思って、途中からティンホイッスルとかを入れています。

──この曲をアルバムの表題曲にしようと思った理由は?

うらら アルバムタイトルが先にあって、せっかくだから「fuchsia」っていう曲を作ろうという話になったんです。だから先にテーマがあって、そこから曲と歌詞を付けるっていう作業をSalleyとして初めてやって。2人で「fuchsia」についてイメージを出し合いながら作る工程がすごく楽しくて、これからもっとこういう方法で曲作りしてみたいと思いました。

──そうだったんですね。実はなんでこの曲が表題曲になったのか気になっていて。

うらら わかります。ラジオとかで「じゃあ、聴いてください。アルバムからタイトル曲で『fuchsia』です」って言って、すっごい静かな曲が流れてくるっていう(笑)。

上口 ははは(笑)。

──それこそ「カラフル」みたいなキャッチーな楽曲がくるのかと思ったら……。

うらら そうですよね。「カラフル」のデモを上口くんからもらったとき、私もキラキラしているイメージが浮かびました。

上口 「カラフル」はライトな感じの楽曲が欲しいなと思って作った楽曲で。「その先の景色を」とイメージ的には似ていて、ストレートなロックで、躍動感があって駆け抜けている感じというか。

──「カラフル」の歌詞はどういうイメージで書いていったんですか?

うらら 自分が歌っている姿を想像したときに、“カッコいい”というよりは“かわいらしい”イメージが浮かんできたんです。ガーリーというか……。

──“女の子”っていうワードも出てきますよね。

うらら はい。で、曲のテーマをシンプルに言うと“おしゃれすると楽しい”っていうことなんですけど。ファッション雑誌とかでブランドの広告が載っているようなビビッドなページがあるじゃないですか?

──モデルの人たちが着飾っている華やかな……。

うらら はい。街中スナップとかではなくて、「おしゃれのためならなんだって惜しまないわよ」っていうテンションが伝わってくるようなページ。でも、男の人って「そういう服は男ウケが悪いよ」みたいなこと言ったりしません? 「その格好はモテないよ」とか。それってなんか違うって思っていて。好きな人にカワイイって言われたい気持ちはもちろんあるけど、それよりももっと大事な自分のポリシーを持って女の子はおしゃれをしているから。

──誰かのためにじゃなくて、その服を着ている自分がテンション上がるから。

うらら そうそう。私も全然“モテ服”っていうのを着ないし、実際モテないし……(笑)。でもそこだけは譲りたくないっていうか。“自分らしく”っていう姿勢があるほうがカッコいいと思うし、すごく大事にしたいですね。

感情に左右されずに作ることができた

──「青い鳥」ってメーテルリンクの童話ですよね? デビュー曲の「赤い靴」しかり、「あたしをみつけて」のカップリングに収録されていた「カムパネルラ」しかり、うららさんは童話からインスピレーションを得ているのかなって思ったんですがいかがでしょう?

うらら うーん、確かにあるかもしれないですね。小さい頃に親がショッピングセンターで買い物している間、私はずっと本屋さんで童話や児童書を読み続けたりしていて。ちょっと怖い世界観の作品とかも、怖いと思いながら読んでましたね。ビビりすぎて家に帰ってから自分の部屋のドアを閉められなくなるんです。一度閉めて次開けたら、違う世界に行っちゃう気がして、ちょっとだけ開けておくっていう(笑)。

──そんな思いをしても読みたいんですね。

うらら 見ちゃってましたね(笑)。もともと本を読んで空想にふけるのが好きなんだと思います。自分が生活している日常から別の世界に行くっていうのが。それは本だけじゃなくて、マンガでもゲームでも映画でもそうなんですけど。

──あと思ったのが、“色”がよく出てくるなっていう。「青い鳥」「赤い靴」「green」はもちろん、「カラフル」も色に関するワードですよね。

うらら そうみたいです。いろいろな人に言われて自分でも気付いて、途中から開き直りました(笑)。

──それってあえて自己分析するに、なぜなんでしょう?

うらら なぜなんだろう。うーん……。なんで色なのかって難しいですね。でも「赤い靴」は真っ赤な世界が浮かんだっていうことではなくて、真っ暗闇の中に自分が独りきりでいて赤い靴が脱げないってイメージが浮かんだんですよね。「green」もただ緑がパッと浮かんだっていうよりは、草原とか初夏の並木道とか、そういうものが浮かんだりしているので、色そのものが浮かんだっていうわけではないかもしれないです。

──色ありきではなくて、風景や情景が浮かんできて、結果として象徴的な色が抽出されたっていう。

うらら そうですね。

──「青い鳥」はどういうイメージで?

うらら 「青い鳥」は曲調から、何かが吹っ切れたような明るさみたいなものを感じたんです。「いろいろあったけど、あなたのところに行くよ」っていう歌を書きたいと思って出てきたフレーズが「青い鳥」だったんです。

──なるほど。

左からうらら(Vo)、上口浩平(G)。

うらら 小さい頃に「青い鳥」を読んで、長い物語だなって思ったんですよ。青い鳥めっちゃ探したじゃん、みたいな(笑)。

──いろんな国に行って、捕まえるけどどれも偽物で。

うらら そしたら家にいたじゃん、みたいな(笑)。でも単純に「青い鳥は実はすぐ近くにいる」って言うのは、なんか抵抗があるというか、つまらないなって思って。逆に家の中にいた青い鳥のことじゃなくて、それまで捕まえようとしていた青い鳥に焦点を当てたかったんですよね。それで「逃げていった青い鳥は追いかけてあげない」っていう歌詞になりました。

──上口さんは曲作りはいかがでした?

上口 この作品は曲が先やったんですけど、メロがいい曲を書きたいのに、変なスランプになってなかなか書けないときがあって、作るのにすごく苦労しました。そういうときって大概、自分でも理由はわかってるんです。そのときの自分のムードが書いている曲と合っていないというか。

──本当はバラードが書きたい気分だけど、無理やりアップテンポな曲を書いているとか?

上口 そうですね。こういう楽曲があったほうがアルバムの中でバランスがいいだろうなっていうところから「青い鳥」を作り始めたんですけど、なかなか作れずにいて。サビのフレーズはパッとつかめるけど、それから集中力が切れちゃって結局ダメだったってときが何回かあって。ただ、今までもそういうことはあったんですけど、この曲に関しては最後までメロディをつなぐことができて。自分自身でも鳥肌が立つ楽曲ができたので、結果としてすごく好きな曲になりました。

──それって何かひとつ山を越えられたというか、大きな経験ですね。

上口 そうですね。やっぱり長く音楽生活を続けていきたいんで、そのときの感情に左右されずに自分の思った楽曲を高いクオリティで作れるようになりたいと思っていて。今までスランプみたいになったときは失敗してきたことが多かったんですけど、今回はいろいろ学ぶことができました。

──今回最後まで完遂できた一番の要因ってなんだと思います?

上口 うららの声ですね。やっぱりイメージがあると、想像しやすさが全然違うというか。サビの頭のメロディをつかんで、そこからうららが歌っているのを想像して音をつなぐことができました。

うらら ふふ(笑)。でも最初に曲作ったときから、上口くんがある程度私の声とかをイメージしながら作ってくれると、自分が歌ったときに「あっ、こんないい曲になるんだ」っていう感動がすごくあったので。それはそのときからお互いにずっと変わってないことなのかな……って思います。

ニューアルバム「フューシャ」/ 2014年4月9日発売 / Victor Entertainment
初回限定盤 [CD+DVD] 3780円 / VIZL-649
通常盤 [CD] 3240円 / VICL-64145
CD収録曲
  1. その先の景色を(album mix)
  2. Agreed Greed
  3. green
  4. カラフル
  5. リセットの呪文
  6. fuchsia
  7. 赤い靴
  8. 青い鳥
  9. プレゼント
  10. 愛の言葉(album mix)
  11. 各駅停車
  12. あたしをみつけて
  13. My little girl
初回限定盤DVD 収録内容
  • Salley Diary 2012-2014
  • MUSIC VIDEO
    (赤い靴 / green / その先の景色を / あたしをみつけて)
  • LIVE (Live at SHIBUYA CLUB QUATTRO on December 30, 2013)
    (赤い靴 / Down by the Salley Gardens / その先の景色を / green)

iTunes Storeにて配信中!

レコチョクにて楽曲配信中!

Salley「Live Tour 2014 Spring」
  • 2014年4月18日(金)
    愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
  • 2014年4月20日(日)
    大阪府 梅田CLUB QUATTRO
  • 2014年4月26日(土)
    東京都 LIQUIDROOM ebisu
Salley(さりー)
Salley

大阪出身のうらら(Vo)と福井出身の上口浩平(G)により2012年に結成された男女デュオ。2013年5月にフジテレビ系アニメ「トリコ」のエンディングテーマ「赤い靴」でデビュー。透き通るようなうららの歌声と哀愁を帯びたロックサウンドで描くオリジナルの世界観が話題になり、同作は「2013上半期USEN HITランキング」のJ-POP部門で1位に輝いた。その後「green」「その先の景色を」「あたしをみつけて」と3枚のシングルをリリースし、4月9日に1stアルバム「フューシャ」を発表。4月18日から4月26日にかけて初のワンマンライブとなる東名阪ツアーを実施する。