Sakurashimeji「明日を」特集|10年の歩みのその先へ “まだ何者でもない”2人が願い進む明日

Sakurashimeji(さくらしめじ)が8月23日にシングル「明日を」を配信リリースした。

今年6月に結成10周年を迎えたSakurashimeji。新曲「明日を」は10周年を記念して発表された楽曲で、このリリースを機に田中雅功と髙田彪我はグループ名の表記を「さくらしめじ」から「Sakurashimeji」へと変更した。

リリースを記念して、音楽ナタリーは2人にインタビュー。「明日を」に込めたSakurashimejiの“今”と“これから”について、じっくりと話を聞いた。さらに、特集後半には田中と髙田のソロインタビューをそれぞれ掲載。2人で歩んできた10年と“相方”についての思いを語ってもらった。

取材・文 / 三橋あずみ撮影 / 須田卓馬

今までで一番「どうじゃい!」という気持ちで

──まずは、6月に行われた結成10周年の記念ライブ「さくらしめじ 10th Anniversary Live -しめたん-」を振り返れたらと思います。今年の「しめたん」はいかがでしたか?(参照:さくらしめじ10周年 10年前と同じ彪我の泣き顔を、雅功は10年前と変わらぬ笑顔で見守っていた

髙田彪我 10年目だろうが11年目だろうが、誕生日ってうれしいものですね!

田中雅功 (笑)。

髙田 何よりも、この日はお客さんの熱を特に感じたというか。すごく“ライブ”だったなって。僕たちも気合いが入っていましたけど、それに応えてくれる熱気があったと思います。

田中 当たり前のことかもしれないけど、僕ら年々自信が付いていってるんですよ。ライブに対しても音楽に対しても。だから今までで一番「どうじゃい!」という気持ちで演奏したんですけど、それが伝わったのかお客さんの勢いもすごくて、めちゃくちゃパワーがあった。なんだか一歩ずつ、僕が思っている“理想のライブ”に近付いている感覚があって、「先が見えるな」と思えた1日でした。

Sakurashimeji

Sakurashimeji

Sakurashimeji

Sakurashimeji

──10周年という節目のタイミング、ライブではどんな自分たちを表現しようと思っていたのでしょうか?

田中 今回に限った話ではないんですけど、特に10周年の今年に関しては、より“これから先”が見えるものを作っていきたいと思っていて。だから、振り返ってセンチメンタルでエモい気分になって……という内容を見せるより、この先の20周年、30周年が見えるものにしたいなという思いがありました。

──そうだったんですね。ではその中で、特にこだわりを持って取り組んだことを挙げるなら?

田中 サウンド的には、今年が一番“バンドしてたな”という感じがあります。彪我もほとんどエレキだったしね。

髙田 そうだね。

田中 結成当初の「フォークデュオ」というコンセプトは微塵も感じられないようなバンドアレンジで(笑)。この2、3年、弾き語りで全国を回る「桜ツアー」をやって、2人で改めて音楽にちゃんと向き合う作業をしてきたということもあって、今後自分たちがどういう音楽をやりたくて何を伝えたいのかを最大限表現したかったんです。だからサウンドとかバンド感みたいなものは、めちゃくちゃこだわりました。

髙田 今まではアコギがメインだったので、バンドメンバーを引き連れて、かつ僕がエレキをメインで持って……という形はほとんど初めてでした。今までと違う曲の見せ方ができたと思います。

ホント悔しい。僕は何も変わってなかったんだ

──当日、取材をさせてもらいましたが、本当に「これがさくらしめじの今の音です!」みたいな圧というか、パワーを感じて。2人がこれまでに培ってきた力強い音と歌声、確かな実力をダイレクトに感じられるようなライブでした。

田中 うれしい!

──それに加えてやっぱり、最後の彪我さんの涙には触れずにはいられないかなと……。

田中 あれ笑ったわあ、マジで! あんな面白い話ないよ(笑)。

髙田 何かありましたっけ……?

──本編ラストの「さんきゅう」でビジョンに映し出された10年前の彪我さんの涙と、今目の前で涙を流している彪我さんの表情が完全にリンクするという……。

田中 すごいですよね。10年前って、「これからも一緒にいよう」と歌うときにお互いのほうを向き合おう、みたいな打ち合わせをやっていたんですよ。実は今回もライブ前にスタッフさんから「あそこ、向き合ったほうがいいよ」と言われていたんですけど、もう絶対にやだ!と。

髙田 あはははは! そうそう、言われた(笑)。

田中 そんなことするためにライブやってんじゃないんだよと。昔の僕たちと動きをシンクロさせるとか、演出めいたことは本当にしたくないですと言ってたのに、もう、まるで演出のような。台本に「彪我、ここで泣く」って書いてあるかのような……(笑)。

髙田 いやあ、全然記憶にないっすね……。

田中 泣いてるから、僕も思わず彪我のほう向いちゃうじゃないですか。そうしたら結果的に後ろの自分たちと動きがリンクしちゃうし(笑)。

髙田 あはははは!

田中 だから目撃した人全員に、僕は「本当に演出じゃないよ」ということを伝えたいです。

田中雅功

田中雅功

──あまりにもできすぎだったばかりに(笑)。

田中 本当にできすぎ!

──彪我さんは、そろそろ記憶がよみがえってきましたか?

髙田 そうですね。いやー……リハの時点で、後ろの映像を観たら確定で泣くなとは思ってたんで(笑)、気を付けて観ないようにはしてたんですけどね。ちょっと悔しいですねえ。

田中 コイツ、簡単だなあ~と思った(笑)。

髙田 ホント悔しい。僕は何も変わってなかったんだ……って(笑)。

田中 (泣きマネをしながら)「さんきゅう~!」の歌い方も変わってなかった。同じ言い方してた!

髙田 あはははは!

田中 さんきゅう、さんきゅう~!

髙田 うわっ。もう、最悪だ……(笑)。

未来を見据えた今の僕たちを歌うこと

──ここからは新曲「明日を」のお話を聞かせてください。

田中 「明日を」は「10周年だしシングル出そうぜ」というところから制作が始まりました。もともと曲があってリリースを決めたわけではなく、「リリースしようか! じゃあ作ろう」という流れでしたね。

──制作の出発点というか、曲を作るうえで設定していたテーマはあったのでしょうか。

田中 「これから」を10周年イヤーのテーマにしたいという話をずっとしていたので、「しめたん」と同じように、未来を見据えた今の僕たちを歌うことをテーマに作り始めました。タイトルの「明日を」も、そこにつながるんですけど。

髙田 そうね。そこからお互いに5曲ずつくらいデモを持ち寄って、それをみんなで聴いて。その中にあった雅功のデモをベースに、制作を進めていきました。

髙田彪我

髙田彪我

田中 デモを作るとき、普段はピアノを入れてドラムを入れて、曲によってはストリングス入れて……っていう作業を全部したうえで持っていくんですけど、今回はそういうのをなしにして、全部弾き語りで作ることにして。何年ぶり?という感じで、ただ歌ったものをボイスメモに記録して提出したんです。だからアレンジもイチからスタートという感じでした。メロディや歌詞は彪我とブラッシュアップしながら作っていったんですが、デモの時点でサビの「心を」というフレーズはあって、そこだけはしっかりと残ってます。それ以外はけっこう、紆余曲折あって……。

──何度も書き直しながら、という感じだったんですね。

田中 いやあ。実は半年かけました。

髙田 かかっちゃいましたね。

田中 こんなに1曲に時間をかけたの、初めてかな?というくらいなんですけど。10周年のタイミングで出す曲ということで、やっぱりいろいろ意味が乗っかってきちゃうから。曲を構成する1つひとつの意味と向き合いながら「違うな、違うな」と、ずっと書き直していましたね。めちゃくちゃ難しかったです、今回。

髙田 そうだね。

まだ正解があるんじゃないか?

──中でも特に難しかったところは?

田中 サビの歌詞かな。「心を」だけ残っていると言いましたけど、このフレーズに行き着くまでにめちゃくちゃ変えてるんですよ。どの言葉が乗るのがいいのか、どれが一番意味が伝わるか。ひたすら考えました。

髙田 サビねえ。

田中 あの時期さ、本当にその話しかしてなかったよね? 歩いてるときも「昨日の夜考えてたんだけど、この言葉のハマりどう?」とか。

髙田 あはははは! そうね。バスケの試合観ながら曲の話してるときもあったよね?(笑)

田中 そう! 招待いただいてバスケの試合を観に行ったんですけど、ハーフタイムに「でも俺、やっぱりここはこうだと思うんだよなあ」とか、もうずっと(笑)。

髙田 あはははは! ずっと話してた時期、ありましたね。

──それほどまでに推敲を重ねたのは、2人が目指している“ゴール”が明確にあったからなのでしょうか?

田中 それもまたすごく難しくって。

髙田 そうねえ。

田中 すごく漠然としていたんですよ。大きなテーマとしては「これから」と、あと1つ「傷」をテーマに書くという前提があったんですけど、はっきりとしたゴールはなくて。だから「まだ正解があるんじゃないか? もっとほかにいい表現があるんじゃないか?」という思いがずっとあった。

──言葉を研ぎ澄ませる作業に終わりを設けずにいたら、ずっと考え続けていたと。

田中 そうなんです。だから歌詞が書き上がったのは、この曲を初披露した「しめたん」の前日でした。

Sakurashimeji

Sakurashimeji

髙田 前日までかかるとは思わなかったよね。

田中 落ちサビの歌詞なんか、前日にガラっと変わっているんですよ。

髙田 覚える時間はほとんどなかったので……これまでのライブの中で、一番緊張した瞬間でした。落ちサビを間違えずに歌えるかどうかが(笑)。

──そんな裏話があったんですね。

髙田 だからこそじゃないけど、最後に歌詞がハマった落ちサビの「怖がって進めない今日を 剥がしたい 間違いでも」は、本当に一番伝えたいことを言えられているなと思います。それまで紆余曲折があったけど、最終的にこの歌詞が出てきて、すんなりまとまった感じもしました。落ちサビの歌い出しって一番強く歌詞が入ってくるポイントだと思うので、このフレーズはすごく気に入っています。

田中 僕はDメロが好きかな。Dメロに関しては、思いついたときに「ここはもう絶対に変えないな」と思いました。実際変わってないよね?

髙田 うん。

田中 メロディと歌詞がほぼ同時に仕上がったパートでもあるので。自分的にはここがお気に入りですね。