ナタリー PowerPush - さかいゆう×横山剣(クレイジーケンバンド)
“歌”についての語らい
CKBになってからですね、ライブ最高!と思ったのは
さかい 話戻るんですけど、高校生のときはどんな感じだったんですか?
横山 高校はですね。堀越高校というところへ。芸能系の学校だから、そこに行くと曲を斡旋してくれると思ってたんです。
さかい もう最初からそこの目的があったんですね。素晴らしいです。
横山 (笑)。でも芸能コースに入りたかったのに、芸能プロダクションに入っていないフリーは認めないということで、普通科の大学進学コースに入れられちゃったんですね。それだと行った意味がないので定時制に転校したんです。で、あれよあれよという間にクールスか。
さかい クールス……1981年ですね。
横山 そうですね。メンバーになるのは。詳しいですね(笑)。そうなる前、78年に古着の行商をやってて。友達がロサンゼルスに行ってたんでごっそり古着を持っていて、それを原宿で踊ってるロックンローラーや古着専門店に売っ払ったりしてたんですけど、その中にたまたまクールスのリーダーがやってる店があってですね。そこから親しくなって、クールスの周りをうろちょろしてるうちに、スタッフに1人欠員が出て「おまえ明日からツアーに来い」と言われたんですね。それで休学届を出してクールスのスタッフになりました。3年スタッフをやって、そのあとボーカル。
さかい へえ。そのときから歌激うまじゃないですか。今とはスタイルはちょっと違うけど。今みたいにビブラートはそれほどかかってないですよね。
横山 やりたかったんだけどできなかったんでね。
さかい なるほど。じゃあビブラートはいつからなんですか?
横山 スティーヴィーとかあのレベルになるにはどうすればいいんだろう?って歌い方をマネしてるうちにですね。それからミュージック・ソウルチャイルドの、コードに対してそっちのメロディいくんだ!?みたいなこぶしありますよね。ああいうのも気が付いたらつかんだっていう感じで。
さかい そっか。やっぱりけっこう耳から入ってるんですね。キャッチしたものをコピーして自分のものにして。
横山 うん、そうですね。まあその出来損ないが自分の味になったりもしてね。詰めの甘い感じ(笑)。
さかい いやいや。その後21、2歳くらいで歌ってたときの自分って覚えてます? どんな心境だったか。
横山 そのときはバンドをやってましたけど、コード進行の少ないバンドだったので、バンドをやってる時間よりも家で宅録やってるほうが楽しかったですね。僕はとにかくデモテープを作るのが楽しかったんですけど、なかなかそれを共有できる人がいなくて。
さかい じゃあ基本的にはレコーディング派なんですね。
横山 当時はそうですね。CKBになってからですね、ライブ最高!と思ったのは。
さかい そっかあ。だってやっぱり目の前で熱狂してる人を見たらまんざらじゃない感じになっちゃいますもんね。
横山 そうですよね。あとはやっぱりクオリティの問題で、レコードのクオリティを生演奏でなかなかできないっていう悔しさですよね。あの音のまとまった感じは、ある程度の腕の人が集まらないと出せないじゃないですか。だからライブでは、レコードで人の曲のインストゥルメンタルをかけながら、メロディを自分で勝手に付けたりしてやってましたよ。むしろそういうライブが燃えたりして。ただ問題は、レコードなんで好きな方向に進行しないこと(笑)。だからさかいさんみたいに全部自分でやるのが一番いいんですよね、本当は。
そういう声に生まれたかった
さかい でも不思議だな。ちゃんと宅録好きなオタク的部分も持ち合わせていつつも、やっぱり歌唱民族な感じもするんですよね。オペラとかどうですか?
横山 自分でできるかとかはともかくとして、シャンソンとかオペラにはグッと来るものもありますね。
さかい オペラも剣さんもゴスペルも、ロングトーンがあるじゃないですか。
横山 はあはあ、歌い上げ。
さかい そう。歌い上げてその後ろでコード進行がちょっと変わったりして。僕はロングトーンに憧れる宅録のミュージシャンだから(笑)。
横山 でも歌めちゃくちゃうまいじゃないですか。声も最高に好きな声なんですよ。そういう声に生まれたかったです。
さかい はははは(笑)。
横山 自分の声ザラついてるのもすっごい嫌で。
さかい それは個性ですよ。
横山 今はもうそう思うしかなくなってるんですけど。ありますよね、コンプレックスって。
さかい ありますね。僕もトータルワークとしては悪くないなと思うんですけど、こと歌となると、もっとうまい人を日々見るから「全然歌えないわ」と思うし。まあ自分なりに気持ちいいポイントを探して、自分だったら何ができるだろうと思って歌ってますけど。
横山 それでいいんですよ。フィーチャリングの王様みたいになるより、変に混じんないで独自性があったほうがいいと思いますよ。規格外っていうかね、ちょっと寸法合わないみたいな。
さかい はははは(笑)。
歌がいい人って誰?
さかい 剣さんにとって、歌がいい人って誰なんですか? 今も昔も。
横山 僕が歌として好きなのは……やっぱりスティーヴィー・ワンダーですね。その前は演歌が好きだったんですけど、黒人で最初に「おお!」と思ったのはリトル・スティーヴィー・ワンダー。
さかい スティーヴィー・ワンダーに「おお!」って思わない人、世の中にいないですからね。僕の場合は西田佐知子さんとか、好きですね。ちょっとエロくて、でもピュアネスがあって。
横山 素晴らしい。「くれないホテル」とか最高ですね。
さかい とかね、「アカシアの雨がやむとき」も好きだし。朱里エイコさんとか藤圭子さんもめちゃくちゃうまいんだけど、うますぎてひたすら圧倒されるっていうんですかね。西田さんは歌ってて、なんかこうストーンと入ってきて足跡残してくれるような。剣さんもそっち系なんですよね。
横山 あー、ほんとですか。うれしい。
さかい けっこうそんなザラザラなのに(笑)。
横山 ははは(笑)。
さかい ポーズで「おまえは俺様を聴けばいいんだよ」っていう姿勢はするけど、実はそうじゃないみたいな。求められるからそういうキャラでいるけど、単に歌が好きで歌ってるだけのような気がするんですよね。うまいんだけど、ひけらかすよりポンと落としていく感じ。
横山 うんうん、全部合ってる(笑)。
さかい それはもうただの印象だから、もしかしたら本人は違う気持ちなのかもしれないですけど、歌の声色とそれが出す信号。そういう意味で、歌がすごいなって思う人なんですよね。これ説明しづらいなあ。
横山 霊(だま)だよ。言霊の世界だから。
──剣さん自身、歌に対するスタンスはどうですか?
横山 もう歌に関しては歌ってるだけです。この人みたいに歌いたいと思った頃、すでに生まれつきそういう声じゃなかったんで、なれないものに憧れはしましたけど。自分の声と同じタイプで目標とする人はいなかったんで、もうしょうがないなと。
さかい いやー、こんなに裏話をたくさん聞かせてもらったけど、声自体は俺ピカピカだと思います。すごいピュアで。
横山 逆に言うと一番意図してないとこだったと思います(笑)。「こうしたい」とかないので。
- 3rdアルバム「Coming Up Roses」/ 2013年1月15日発売 / アリオラジャパン
- 初回限定盤[CD+DVD] 3990円 / AUCL-146~71
- 通常盤[CD] 3059円 / AUCL-148
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収録曲
- She left(作詞・作曲・編曲:さかいゆう)
- 薔薇とローズ(作詞・作曲・編曲:さかいゆう)
- Life is feat. Emi Meyer(作詞:さかいゆう、Emi Meyer / 作曲・編曲:さかいゆう)
- きみなんだ(作詞・作曲・編曲:さかいゆう)
- EMERGENCY(作詞:横山剣 / 作曲・編曲:さかいゆう)
- オトコFACE feat. KREVA(作詞・作曲:さかいゆう、KREVA / 編曲:さかいゆう)
- 愛するケダモノ(作詞・作曲・編曲:さかいゆう)
- キミのいない食卓(作詞:谷穂ちろる / 作曲・編曲:さかいゆう)
- イバラの棘(作詞:岡本定義 / 作曲・編曲:さかいゆう)
- ピエロチック feat. 秦 基博(作詞:さかいゆう、秦基博 / 作曲・編曲:さかいゆう)
- 僕たちの不確かな前途(作詞:森雪之丞 / 作曲・編曲:さかいゆう)
- 時季(とき)は巡る(作詞:谷穂ちろる / 作曲・編曲:さかいゆう)
初回限定盤DVD収録内容
「Sakai Yu Best of Clips」- ストーリー
- まなざし☆デイドリーム
- train
- Room
- AHEAD
- 君と僕の挽歌
- 僕たちの不確かな前途
- 薔薇とローズ
- ピエロチェック feat. 秦 基博(Shooting the Recording Session on 2013.8.19)
- さかいゆう TOUR2014 "Coming Up Roses"
- 2014年4月10日(木)
宮城県 darwin
OPEN 18:30 / START 19:00 - 2014年4月12日(土)
北海道 札幌KRAPS HALL
OPEN 17:30 / START 18:00 - 2014年4月22日(火)
福岡県 福岡DRUM Be-1
OPEN 18:30 / START 19:00 - 2014年4月24日(木)
愛知県 APOLLO BASE
OPEN 18:30 / START 19:00 - 2014年4月25日(金)
大阪府 サンケイブリーゼ
OPEN 18:30 / START 19:00 - 2014年4月27日(日)
高知県 X-pt.
OPEN 17:00 / START 17:30
- さかいゆう TOUR2014 "Coming Up Roses" SPECIAL
- 2014年6月15日(日)
東京都 渋谷公会堂
OPEN 17:30 / START 18:00
※ゲストあり
さかいゆう
高知県出身の男性シンガーソングライター。20歳で上京し、独学で音楽を始める。2001年に単身渡米しロサンゼルスでストリートパフォーマンスを行いながら、ピアノを習得。帰国後の2004年頃よりソロ活動を本格化。2009年10月にシングル「ストーリー」でメジャーデビュー。胸を打つ歌詞、透明感あるハイトーンボイスが年齢や性別を超え厚く支持されている。また客演も多く、これまでにマボロシ、KREVA、RHYMESTERなどさまざまなアーティストとコラボレーションを行っている。2014年1月には、シングル「僕たちの不確かな前途」「薔薇とローズ」を含む3rdアルバム「Coming Up Roses」をリリース。4月からは全国ツアー「さかいゆう TOUR2014 "Coming Up Roses"」を行う。
横山剣(よこやまけん)
1960年横浜生まれ。クレイジーケンバンドのリーダーで、作曲、編曲、作詞、キーボード、ボーカルを担当。小学校低学年の頃より「脳内にメロディーが鳴り出し」独学でピアノを弾き作曲を始める。中学2年生でバンド活動を開始して以来、地元横浜を中心に数多くのバンドで活躍し、1981年にはクールスRCのコンポーザー兼ボーカルとしてデビューを果たした。以後、ダックテイルズ、ZAZOU、CK'Sなどのバンドを経て、1997年春にクレイジーケンバンドを発足。作曲家としては、堺正章、和田アキ子、藤井フミヤ、SMAP、TOKIO、関ジャニ∞、一青窈、グループ魂、ジェロほか数多くのアーティストに楽曲を提供している。さらにm-flo、RHYMESTER、MIGHTY CROWN FAMILYらとジャンルの壁を超越したコラボレーションを実現するなど、その音楽活動は多岐にわたる。2009年にはユニバーサルミュージック・ジャパン内に新レーベル「ダブルジョイインターナショナル」を設立。2013年5月にはクレイジーケンバンドの14thアルバム「FLYING SAUCER」を発表した。