saji|ピュアな思いに寄り添った「君は彼方」主題歌 松本穂香と瀬戸利樹のコメントも

無邪気にわがままに

──カップリング曲についての話も伺いたいです。先ほど「瞬間ドラマチック」は映画から想起された“蒼い”イメージがあったとおっしゃっていましたが、2曲目「アオイノウタ」も、その名の通りですよね。

ヨシダ そうですね。ただ、この曲に関しては、主人公は大人なんですよ。「夏色の青空」とか若さを感じさせる言葉を歌いながらも、歌い出しは「思い出ってどんな形なんだろうね」で。すでにいろんなことを経験している人が、昔のことを思い出しながら1つひとつのことをしゃべっている日記のような歌詞なんですよね。この曲は「戦国炒飯TV」という番組のタイアップなんですけど、「思うままに作ってください」と言ってもらったこともあって、だいぶ自由に書きました。すごく日記的であるという意味では、直近の曲の中で一番phatmans after schoolの頃に近い気がします。音もそうなんですよ。最近はもう、自分たちの出せる音や出すべき音がわかっている感じがあったけど、この「アオイノウタ」に関しては、サウンドメイクが若い頃に近くて無邪気なんですよね。最近の中では一番ギター大きいよね?

ユタニシンヤ(G)

ユタニ うん、そうだね。レコーディングは楽しかったね。ギターソロでは遊び心を入れて面白い音色にしようって試してみたり。弾いていても、音を作っているときも、楽しかった。

ヨシダ 「Jazz Chorus」というライブハウスに絶対にあるトランジスタアンプがあるんですけど、高いアンプじゃなくて、あえてそのアンプで録ってみようって試したり。高校生の頃って、新しいエフェクターを買ったらやたら使いたくなるものなんですけど(笑)、そういう感じの音の作り方をしていきました。

ヤマザキ 俺はあんまり覚えてないんだけど……。

──そうなんですか(笑)。

ヤマザキ この曲はドラムのパターンがどんどん変わっていくんですけど、そのリズムに乗らなきゃいけないし、ベース単体でもリズムを作っていかなきゃいけないし……その瞬間瞬間に一生懸命すぎて、自分が何をしたのかあんまり覚えていないんですよ(笑)。でも楽しかったですよ、夢中になれて。

──歌詞においても、サウンドにおいても、すごくリアルな感覚として「蒼さ」を表現することが今のsajiには必要だったということですよね。

ヨシダ 僕はバンドに人格を与えて“sajiくん”と呼んでいるんですけど、sajiくんに関しては「夢」「希望」「愛」を歌うと決めているので、歌詞にはそういうことをメタ的に落とし込んでいくことも多くて。そんな中で「アオイノウタ」は、駆け引きじゃない音になっています。ノイズが乗っていても構わないし、リズムが速くなっていても構わない。そういう無邪気さとわがままさが表現できたと思いますね。

卑屈な歌い出しのクリスマスソング

──3曲目「ベルが鳴ったら」はクリスマスソングですね。

ヨシダ ディレクターと話しているときに、このシングルは「夏の終わり」がテーマの曲が並んでいるけど、リリースは11月の下旬だし、「冬の曲も欲しいよね」とメンバー同士で話してクリスマスソングを入れることにしたんです。ライブで演奏することも想定すると「誰もが一瞬でクリスマスを思い浮かべるような曲じゃなきゃいけないな」とかいろいろ考え始めたんですけど、そこで僕も馬鹿なので、とりあえずベルを鳴らしたんですよ(笑)。

──クリスマスと言えば、ですもんね(笑)。

ヨシダ 僕、こういう作り方が多いんですよ。ビートと記号になるサウンドをずーっと鳴らしながら、メロディが思い浮かぶまで待つっていう。今回はクリスマスなので、ベルをシャンシャン鳴らしながら、BPMは120~130くらいだなって目処を付けて、延々、家の中でベルを流していたんです。そうすると、だんだんと頭の中が冬っぽくなってきて、雪が降ってきて、人を待っている人がいる、そんな情景が見えてきて……でも、どうやらその人は、待ち合わせをしているわけではないんです。この主人公は好きな人はいるけど、「好きな人の好きな人は俺じゃない」とわかっている。だから、クリスマスソングなのにすごく卑屈な歌い出しになったんです。「冬なんか嫌いだ」って。

──美しい曲だけど、前提としては孤独感や満たされない思いがありますよね。

saji

ヨシダ 僕の歌詞に出てくる人って、だいたい最初は卑屈なんですよ。「夢なんて持っていません」と言うんだけど、自分の感情を言葉にしていくうちに「俺も本当は夢を持っていました」と気付く。そして「叶わないことが怖くて逃げていました」ということにも気付き、「もう1回やってみようと思う」というところで締めくくられる。こういう構成で歌詞を書いているのにも理由があるんです。僕、マンガや映画のバッドエンドが超嫌いなんですよ。アニメにしろ、マンガにしろ、音楽にしろ、創作物って現実ではないですから。僕は、せめて夢の中だけは幸せに終わってほしいと思うんですよね。世の中はもっとつらく厳しいんだから、僕の曲が救いなく終わることはほぼないと思います。それは自分のルールとして徹底しています。

目指すは大泉洋

──最後に、ユタニさんがとかち観光大使に就任されたことについてもお話を伺いたいのですが(参照:帯広市出身のsajiユタニシンヤ、とかち観光大使に就任)、率直にいかがですか?

ユタニ 地元が大好きですし、うれしいです。コロナがなければ、本当は実際に地元をドライブとかしながら自分の目で見た景色や食べものを紹介したいなと思っていたんですけど、今の状況だと難しいんですよね。だから両親にも協力してもらって、現地の野菜などをアピールできればいいなと思っているんです。僕も十勝のことをすべて知っているわけではないので、これから勉強していこうと思っていて。僕も地元を応援するし、地元からも応援されるようなバンドを目指したいですね。

ヨシダ 今のは政治家でいうところのマニフェストですから。本当に公約は達成されるんですかね? 嘘つくのと逃げるのはよくないって最近ニュースでよく見るでしょ?

ユタニ 大丈夫だよ!(笑) やっぱり責任があるので中途半端なことはできないです。

ヨシダ 北海道はアットホームな場所ですからね。僕もユタニと同じく帯広出身で、地元は好きなんですけど、郷土愛みたいなところでいうとユタニは僕らよりも強いなと思う。ヨッシーの地元(標津郡)は……Google Earthで見ると古代文明みたいなんだよね?(笑)

ヤマザキ そうだね(笑)。うちの周りには川と遺跡があるから。

ヨシダ ユタニは観光大使に任命される前から地元によく帰っていましたし、地元の友達とも今でも交流を持っているし、地元企業さんとも交流している。その熱意を発信していく方法をこれから模索していくんだと思います。

ユタニ やっぱり親孝行もしたいですからね。地元の新聞に載せてもらったりすると、おばあちゃんが喜んでくれたり、友達から連絡がきたりするので。そういうのもうれしいんですよ。

ヨシダ 北海道のスターになりたいんだよね?

ユタニ 目指せ、大泉洋さん!

saji

「君は彼方」キャストコメント

松本穂香

松本穂香

初めて聴いたとき、自分の中にすっと入ってくるような懐かしさと温かさを感じました。「細胞のすべてが 君を求めてんだ」のように、言葉では伝えられないようなストレートな表現がいいなと思います。澪と新がお互いを求め合う姿につながるなって。映画を観た人の心をすっと優しく包み込んでくれるようなエンドロールが待っているので、映画と合わせて主題歌も楽しんでいただければと思います。

瀬戸利樹

瀬戸利樹

すごく映画に合っているなと感じました。

冒頭の歌詞は僕が演じている新の心情なのではないかな、と感じながら聴きました。