saji|ピュアな思いに寄り添った「君は彼方」主題歌 松本穂香と瀬戸利樹のコメントも

sajiで成功したい

──「瞬間ドラマチック」は、「君は彼方」サイドとどのようなやり取りがあって生まれた曲なのでしょうか?

ヨシダ 最初、僕とユタニのふたりが瀬名(快伸)監督とお会いしたんですけど、呼ばれたのが新宿のきれいな小料理屋で、僕らが行ったときにはもう、瀬名監督は酔っぱらっていて(笑)。

──ははは(笑)。

ヨシダタクミ(Vo)
ヨシダタクミ(Vo)

ヨシダ でも、そこでけっこう踏み込んだ話をしたんですよね。瀬名監督はこの映画を人生賭けて作ろうとしている、と。その理由について監督は「今まで自分は人前で威張りたいとか売れたいとか思ったことがなかったけど、40代になって世に出たいと思うようになった。それは、自分が世に出ることによって幸せにできる人が増えるかもしれないと思うようになったからなんだよね」と言っていたんです。思い返せば僕も、バンドを始めた頃は売れなくてもいいと思っていたんですよね。誰にも知られず、ただ音楽で慎ましく生活していければいいと思っていた。それはなぜかというと、僕らの音楽が広がることによって耳に入るであろう、いろんな人の声……好き嫌いとか、賛否とか、そういうものを受け取るのが面倒くさかったんですよね。僕が当時、表に立ちたくないなと思っていたことを監督に話したら「わかるよ」と言ってくれて……。

──すごく深い話をされたんですね。

ヨシダ まあ、そのあとは僕も相当酔っぱらって、お互い滑舌が悪くなっちゃって、何言っているかわからなかったんですけど(笑)。

──飲み会とは往々にしてそういうものですね(笑)。でも、そこで瀬名監督とはリンクできる部分があったと。

ヨシダ そうですね。心が通じ合った瞬間はありました。そこから「瞬間ドラマチック」は生まれていきました。

──瀬名監督にとって「売れなくてもいい」という意識から「世に出たい」という気持ちに変わったのが今回の「君は彼方」だったということですが、ヨシダさんが音楽で世間に認められたいと思い始めたのは、sajiになってからでしょうか?

ヨシダ そうかもしれないですね。バンドって、ほとんどが偶然集まった人たちの才能を寄り合わせて作っていくものだと思うし、「自分たちが好きだから」という理由でやっているものが、自ずと共感されていくものだと思うんです。phatmans after schoolもそういうバンドで、同じ学校出身の連中が集まってやっていただけで、顔を出さないというコンセプトを決めたのも僕ら自身ではなかったですし、よくも悪くも「売れる、売れない」みたいなことを気にしていなかったというか。でも、sajiになってから自分を取り巻く環境は一変して。所属していた事務所を辞めたし、そのちょっと前にドラムも脱退して3人になって。じゃあ3人で何をしようかとなったときに、みんな共通してあったのは「音楽で夢を見たい」という思いだったんですよね。そして、音楽で夢を見るには、音楽で成功しなければいけない。そういうことを再確認できたのは、sajiになったタイミングだったのかもしれないです。

──「君は彼方」のストーリーに対してはどのようなことを感じましたか?

ヨシダ 僕の率直な感想としては、この映画の感情の持っていき方は10代っぽいというか、若いんですよね。「思いを伝えなきゃ」という気持ちが物語の軸にあるんですけど、思いを伝えることをメインに物語を作れるのって、やっぱり子供のような純真な心があるからなんですよ。僕ら大人は、例えば誰かを好きだと思ったら、「付き合いたい」というゴールに向けてどう走るかを考えるわけです。でも子供たちは今生きることで精一杯だから、なかなか先を見据えた行動ができない。心の整理がついていない、未熟な時期ならではの恥ずかしさがそこにはある。そういうことを描いた映画だと思います。その未熟さって、もちろん僕も経験してきた未熟さであり、きっとこの映画を観ている人誰もが経験してきたであろう未熟さでもあるんですよ。

ユタニ 懐かしい感じがするよね。昔、アニメや映画を観ていて自分に響いてきた、そのときの気持ちがギュッと詰まっているというか。

ヨシダ そう。僕はこの映画を観て「蒼いな」と感じたんです。なので「瞬間ドラマチック」はさわやかなロックチューンに仕上がったんですよね。

saji

──先ほどのお話も踏まえると、そうした若さゆえの未熟さを描くことによって、瀬名監督は誰かを幸せにできるという思いがあったんですよね、きっと。

ヨシダ これに関しては直接話していないので憶測ですけど、瀬名監督は夢を見せたいんだと思いました。今まではきっと夢を見る側だったと思うんです。もちろん今も夢を見ているとは思うんですけど、「夢を見せることが夢」になったのかもしれないですね。時代をつなぐというか、次の世代にバトンを渡すような作品を作りたいと思ったんじゃないかなあ。映画監督にも「この作品を観て映画を作ろうと思いました」という作品がきっとあると思うんですけど、次の世代の映画監督がそう思える映画を作ろうとしたんじゃないかと思います。

忘れてしまった社会性

──今回、瀬名監督から皆さんに3つ質問を預かっているんです。ここからはその質問を皆さんに投げさせていただければと思います。

瀬名快伸

ヨシダ はい、お願いします。

──最初の質問です。映画では忘れものが重要なキーワードになっています。これまでの人生でしてしまった“トンデモな忘れもの”はありますか?

ヤマザキヨシミツ(B) 忘れもの……社会性じゃないですか?

一同 (爆笑)

ヨシダ 間違いない! これ以上の答えはないです(笑)。

ヤマザキ 僕はそもそも正しい社会性がわからないので。どういう姿が社会性のある人間と言えるのかわからないんです。だって、きっと今僕らを見ても、社会性ないですよね?

ヨシダ 僕“ら”……? あまり、君と僕たちを一緒にしないでほしいけど(笑)。

ユタニ うんうん。

ヨシダ (ヤマザキに向かって)社会性がないことも許される職業でよかったね(笑)。

ヤマザキ うん(笑)。

──(笑)。2つ目の質問です。今回、ティザービジュアルでも「どうして思い出せないの?」というキャッチコピーがある通り、主人公の澪は“世の境”で大切な思い出がどんどん薄れていってしまいますが、皆さんが最近どうしても思い出せなかったことはありますか?

一同 うーん……。

ヤマザキ 思い出せなかったこと……思い出せないから、今も思い浮かばないんでしょうね、きっと(笑)。

──確かに(笑)。

ヨシダ じゃあ僕が真面目なことを言うと(笑)、僕は音楽が好きでこの仕事を始めたけど、一番音楽を好きだった時期って、間違いなく音楽を始める前なんですよ。これは多くのアーティストが言うことなんですけどね。「バンドやる前が一番音楽が好きだった」って。バンドが好きだからバンドを始めた人間が、音楽を始めた途端に音楽を一番好きでいられなくなるっていうのは、恐らくその頃に持っていた憧れや根拠なき自信を忘れてしまうからなんでしょうね。僕も「俺でもなれるかもしれない!」「この仕事は自分でも取柄にできるかもしれない!」と思って音楽を始めたんですけど、あの頃の自信や憧れは10年以上やってきて思い出せなくなりました。でも、だからといって後悔しているわけではないんです。あの頃の、一番音楽が好きだった頃の自分に届けたいから、今も音楽をやっているんだと思うので。

──今のお話に関して、ユタニさんとヤマザキさんはどうですか?

ユタニ 楽しさの質は変わってきたよね、確かに。

ヤマザキヨシミツ(B)

ヤマザキ わかる。ある程度自信は持ち続けているし、純粋に楽しい瞬間もあるんですけど、達成感や満足感を得ることが楽しさにつながることは多くなりました。昔は単純に音を出すだけで楽しかったんですけどね。今は気持ちが変わってきたような気がします。

──では、瀬名監督からの最後の質問です。「今回、sajiさんとは初めてお仕事をさせていただきましたが、主題歌のレコーディングに行きましたし、MVも僕が撮影して……と多方面でご一緒できて楽しかったです。そこで、正直、僕とのお仕事どうでしたか?」とのことですが。

ヤマザキ 瀬名監督は……「よくしゃべる人だなあ」と思いました。

一同 (笑)。

ヤマザキ 俺が初めて会ったのは、メンバー3人と瀬名監督で一緒にインタビューを受けたときなんですけど、タクミもよくしゃべるほうなのに、そのタクミが聞き手になるくらいにしゃべっていて、すさまじいなと(笑)。でも、すごく場を和ませてくれる人で。

ユタニ そうだね。瀬名監督は場を和らげてくれるんですよね。自ら話してくれるから、変に緊張したりすることもなく、楽しく、いい意味で落ち着いた空気でレコーディングも撮影もできましたね。

ヨシダ 橋渡しというか、人との調和を取るのが上手なんですよね、監督は。あと、本当にいい意味で、瀬名監督は少年だなと思います。純粋さがあるんですよね。すごく子供っぽい表情をされることが多くて。それは初対面のときからすごく感じました。「夢を叶えたいんだよね」とちゃんと言える人だし、なおかつ夢を語るだけだったら子供でもできるとわかっていて。瀬名監督はきっとその人生経験の中で、夢を叶えることの責任もわきまえている方だと思います。だからこそ、自分の夢の叶えるためにいろんな人を動かしたわけで。そういう意味で、瀬名監督は「実行力を持った少年」という感じの人ですね。

──「実行力を持った少年」。素敵な表現ですね。

ヨシダ あと付け加えると、監督、次もあれば、ぜひ!(笑)

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