ロイ-RöE-|ついに“羽化”したロイ-RöE-、野望とこだわりについて語る

“ロイ-RöE-”の由来

──ロイ-RöE-という名前にこだわりを感じます。この名前にはどんな意味が?

ロイ-RöE-って男か女かも、日本人かどうかもわからないじゃないですか。メールを返信するときに題名に付く“RE:”から“R”と“E”を取りました。“RE:”はラテン語で“◯◯について”みたいな意味らしいんですね。その真ん中に“ö”を歌うマークとして入れて、「自分のことについて歌ってますよ」っていう意味を込めました。まず最初にあったのはLOUIS VUITTONとかCHANELみたいにロゴにしたときにカッコいいのにしたい、なおかつ短めがいいっていう考えだったんですけどね。

──なるほど、“ö”は顔文字か。「Heart Beat*」の歌詞でも“o”には全部ウムラウトがついていますよね。

小文字の“o”には付けていこうと。大文字は付けないんですけど。

──本当だ、“Göing On”になってる。大文字だと顔っぽくないからですか?

大文字だと口がちょっと開きすぎですね(笑)。でも“ö”のパソコンでの出し方がまだわからないんですよ。iPhoneでの出し方はわかったんですけど。パソコンでは毎回Wikipediaでビョーク(Björk)を引いて“ö”をコピペしています。自分の名前やのに(笑)。

──記事に「ロイ-RöE-さんが“ö”の簡単な出し方を募集しています。パソコンに詳しい方はTwitterでつぶやいてください」と書いておきます。

いいですね、それ。ナタリーさんやったら絶対見つかる(笑)。

ロイ-RöE-

文字の形や記号にまでおよぶ見た目へのこだわり

──デビュー作のタイトル「ウカ*」は“羽化”のことですよね。

はい。漢字、ひらがな、カタカナ。いっぱいあるじゃないですか、日本語って。だから迷ったんですけど、この言葉はカタカナが一番よかった。“払う”方向が全部一緒なんですよ。歌詞を書くときもそうなんですけど、形が気に入ったものを厳選しているんです。

──文字の形なんですね。

そうです。「泡と鎖*」の歌詞では小さい“つ”を使ってないんですよ。中原中也さんの詩が好きなんです。すごく文字を選んでつづってると思うんですよね。角張ってて固いとか、丸くて柔らかいとか。そういう表現の仕方を私もちゃんとしたいなと思って。

──ということは、アスタリスク(*)も曲名の一部?

はい。いつも曲を作るときに題名から決めるし、題名が決まらないと書けないくらい、自分の中で大事な要素なんです。歌詞もいろんな解釈ができるようにちょっとわかりづらく書いてて、そのヒントや答えとして題名があるから、注釈みたいな意味でアスタリスクを付けていて。

──なるほど! 本では脚註や巻末註がある言葉にはアスタリスクが付いていますもんね。

中身はもちろん、見た目にもこだわっていきたいんですよ。自分が音楽を聴くときもジャケットで選ぶことが多いから。見た目は大事だなってつくづく思います。

──作詞するときも、例えばパソコンで「どこ」って入力して変換候補を見て、一番見た目がいい表記を選ぶとか?

そうです。あと、本を読んでて形のかわいい文字が出てきたらメモっといて、「この言葉を使うには前後にどんな言葉を並べたら引き立つかな?」と探っていく作り方も多いです。「Heart Beat*」はまさにそんな感じで作ってますね。“パレード”と“舞台袖”という言葉を使いたくて。ドライブソングを作ろうと思って、夜に似合う言葉をまず集めて、パズルみたいに作りました。

──抽象度の高い歌詞ですよね。

どうとでも捉えてもらえるように。意味はちゃんとあるけど、正解はないよ、みたいな。「Heart Beat*」はMVも撮ったんですけど、監督の解釈が自分と全然違って面白いなと思いました。自分だけの解釈で完結させるんじゃなくて、人の解釈も入れるのが楽しいんですよ。聴く人にも、共感よりも解釈の楽しさを味わってほしい。自分が聴くときも何言いよんかわからん曲が好きで「言葉遣いが上手だな」とか「ここにこれ入れるんや」とか、そういうところばっかり見てしまいますね。

──例えば?

菅野よう子さんが好きなんです。アニメの曲じゃなくて、サウンドロゴとかCMソングみたいな、商品を引き立たせるための曲とか言葉とか。自分もCMソングを作ってみたいです。