ロイ-RöE-|ついに“羽化”したロイ-RöE-、野望とこだわりについて語る

“ディストピア系”シンガーソングライターロイ-RöE-が10月19日、配信限定の3曲入り作品「ウカ*」でワーナーミュージック・ジャパン内のunBORDEからメジャーデビューした。

ちゃんMARI(ゲスの極み乙女。)をサウンドプロデューサーに迎え、ロイ-RöE-が昨年1月から時間をかけて作り上げたのは2月にミュージックビデオが公開された「泡と鎖*」をはじめ、ロイ-RöE-流のドライブソング「Heart Beat*」、古風な言葉遣いが面白い「そそらるる*」といったナンバー。本作でロイ-RöE-はちゃんMARI(Piano, Key)に加え、木下哲(G)、雲丹亀卓人(B / SAWAGI)、吉田一郎(B / ex. ZAZEN BOYS)、伊吹文裕(Dr)、山下賢(Dr / MOP of HEAD)という強力なメンバーに支えられ、のびのびと歌っている。音楽ナタリーではロイ-RöE-にインタビューを実施。ぶっきらぼうな口調の合間にこぼれる、福岡訛りがチャーミングなロイ-RöE-のこだわりの美学に耳を傾けてみよう。

取材・文 / 高岡洋詞

ダウンタウンに会いたくて

──16歳のときに曲を作り始めたそうですが、きっかけはなんですか?

すごい音楽が好きで……とかではなくて、ふわっとした感じでした。周りのみんなが夢に向かってがんばっているのに自分はずっと遊んでいたから、何かしようと思って。ずっとダウンタウンが好きやったから「HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP」(フジテレビ系で2012年まで放送されていた音楽番組)に出たら会えるかなと思って、「じゃあ、音楽をしよう」って始めたんです。それで1万円のアコギのセットを買ってひたすら練習して、17歳のときにオーディションを受けました。

──ダウンタウンに会いたいという理由でミュージシャンを志した?

ほぼそうです(笑)。あとはとにかく人に何か指示されたりするのが苦手だったから。自分でモノを作る仕事ならそういうことが少なくなるだろうと思って、マンガ家とシンガーソングライターが浮かびました。マンガを書くには最初にいろいろと道具をそろえなきゃいけないじゃないですか。やけ、音楽だったら道具がなくても作れるっちゃ作れるし、そういうことも考えて。

──マンガと音楽は前から好きだった?

読んでいたマンガは「ドラゴンボール」くらいでしたね。音楽もダンスをしていたから違う意味で聴いてはいたんですけど、“やるもの”ではなくて“ノるもの”と言うか、ほぼBGMみたいな感じでした。

──曲を作るときにお手本にしたアーティストはいますか?

いや、いないんです。音楽を始めた頃に聴いていたのはヒップホップだったけど、なぜか買ったのはギターやし、「何を手本にしたらいいんやろ?」みたいな感じでした。その頃の音源を聴いたら「ようこんなメロディ浮かんだな」って思います(笑)。「無知って素晴らしいな」って逆に感心するみたいな。だんだんいろいろ聴くようになって、吸収していきましたけど。

“番長”が染み付いてる

──デビュー前に100曲以上作ったそうですが、オーディションを受けたときは何曲ぐらい持ち曲があったんですか?

「20曲できたらオーディションを受けよう」と思って、20曲作りました。送ったのは確か3曲ぐらいで、受かってから「こんなのもあります」っていろいろ送ったんですよ。オーディションでも2曲ぐらい歌った気がします。「もう1曲歌って」って言われて、ギターに自信がなかったけ、弾けるかなあとか思いながら(笑)。

──それまでにライブ経験はあったんですか?

ダンスのコンテストには出たりしましたけど、人前で歌うのは初めてでした。エレアコのギターをオーディション用に買って行ったんですけど、ギターとアンプのつなぎ方もわからんし、(シールドを)「どこへ刺したらいいんですか?」みたいな。アンプにあった穴にコードの先を挿して一応音は出たけど、アンプから出よんかここ(サウンドホール)から出よんかわからんかった(笑)。

──歌は好きでした?

好きでしたね。カラオケでもうみんな飽きて寝てるのに自分1人で歌ってるみたいなことがよくあって。ORANGE RANGEさんの「おしゃれ番長 feat.ソイソース」で全国ランキング1位になったことがあります。

──すごいじゃないですか。

「おしゃれ番長」は歌うのが難しいんですよ。Aメロがあんまり歌っぽくなくて、いかに上手に読み上げるか、みたいな(笑)。

──「そそらるる*」に歌とラップの間みたいなくだりがありますよね。

ありますね。自然に出てきたけ、染みついてるんでしょうね。“番長”が(笑)。

──オーディションで審査員の方たちにどんなことを言われましたか?

「好きな歌手は誰ですか?」と聞かれて、歌手を聞かれているのに「ORANGE RANGEの『おしゃれ番長』です」って答えたのを覚えてます(笑)。

──オーディションでは緊張しましたか?

エレアコへの戸惑いが大きすぎて、緊張する余裕がなかったです(笑)。こなさないけん、みたいな。あと照明がすっごい強くて、歌い終わったあともずっと目の中に白いのが残ってて、審査員たちの顔がようわからんみたいな感じでした。

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“ロイ-RöE-”の由来