ロイ-RöE-|“血まみれ”ドラマOPテーマで示した鋭い美意識

ロイ-RöE-が5月22日にニューシングル「VIOLATION*」を配信リリースした。

昨年10月に3曲入り作品「ウカ*」でデビューしたロイ-RöE-。新曲はフジテレビ系ドラマ「ストロベリーナイト・サーガ」のオープニングテーマで、ドラマの内容に寄り添うかのように、清と濁、正と邪を目まぐるしく往復するようなインパクトのある楽曲に仕上がっている。

音楽ナタリーではロイ-RöE-にインタビューを実施。ぶっきらぼうで人懐っこい、独特の福岡訛りの語り口で「VIOLATION*」制作秘話を明かしてくれた。

取材・文 / 高岡洋詞

「血まみれ」と「大衆」をどうつなぐか

──新曲はフジテレビ系ドラマ「ストロベリーナイト・サーガ」のオープニングテーマとして書き下ろされた楽曲ですね。

そうです。今回は2月に作り始めたんですけど、ひたすらこのことばっかり考えて、スマホの待受も「ストロベリーナイト・サーガ」にするぐらいでした(笑)。10曲ぐらい作ってみたんですけど、自分でいいって思う曲はできても、大衆が観るドラマのオープニングで流れたら……と考えると難しいんですよね。ドラマの内容に沿った“血まみれ”な楽曲のイメージと“大衆”をどうつなぐか悩んで悩んで。

──その悩みにはどう決着をつけたんですか?

決め手は歌詞やったかもしれん。この曲は最初にサビを作ったんですよ。まずトラックを作って、そのあとドラマのヒロイン・姫川玲子の心情と自分の思いをどうリンクさせるかっていうところでいろんな言葉を乗せて試行錯誤してたんですけど、“VIOLATION”っていうサビの歌詞がまず出てきて。考えてこねくり回すより降りてきたものを優先したいから、これで行こうと決めて、そこに足していきました。

──サビからできたというのはわかる気がしますね。

私はCM音楽が好きなんですけど、オープニングってそれに近いじゃないですか。短い時間でどれだけ覚えてもらえるかみたいな。“VIOLATION”じゃなくてもよかったかもしれんけど、まず何か言葉をパッと言う曲にしたくて。そのあとの「鏡越しの君とわたし、共犯して」「道を塞ぐ縫い目を今こじ開けてよ」という歌詞は、最後の最後まで悩みました。ちょっとレコーディングまで間があったから、その間もずっと考えて。

──「VIOLATION」って違反とか侵犯という意味ですよね。その言葉が出てきたのは?

「ドラゴンボール」の人造人間18号が好きで、映画とか死ぬほど観たけん常に頭にあるんですよ。それで、考えてたときにふとバイオブロリー(映画「ドラゴンボールZ 超戦士撃破!! 勝つのはオレだ」に登場する強敵)が浮かんで、「バイオ」って3文字がいいなと思って。歌詞を考えるときは言葉の響きを大切にしているんですけど、「バイオ……バイオ……バイオレーション!」って、バイオつながりで。ブロリーが助けてくれた感じですね。全然関係ないけどそれが事実です(笑)。

──確かに意味はまったく違うけど、関係ないようであるんですよ、きっと。

観たものはずっと頭に残ってますからね。面白いのだけやけど。

ロイ-RöE-

アートとしてこだわりたい

──Aメロの「汚したくなっちゃうよね」「濡らしたくなっちゃうよね」は、ほかの箇所とは言い回しが違いますね。

歌詞が全体に重いから、くだけた感じがほしくて。フレンドリーさみたいなものはいつも考えますね。上からでも下からでもなく、親しみを込めて語りかけるみたいな。

──歌詞カードに“空白”と書く代わりに“「 」”と表記したり、「凍えているんだ」と書いてあるけど「凍えてんだ」と歌っていたりするのもユニークです。

かしこまりすぎてるところはくだけさせたいし、雑に見えるところはちゃんとしたいんですよ。“「 」”のところは最初、文字で“空白”って書いてたんですけど、別の表現ないかなと考えて思いつきました。

──「汚したくなっちゃう」のもそうだけど、加工したい人なんですね(笑)。

そのままじゃ物足りなくて、どうかしたくなるんです。だけんアドリブとかイヤなんですよ。ちょっと武装しないと、スッピンを見せるみたいな感じで恥ずかしい。歌詞は特にそうじゃないですか。時が経っても恥ずかしくないものにしたいし、厚化粧して剥がされていくのがいいんです(笑)。

──字面の表現を歌とは別物としているのもロイ-RöE-さんらしいなと。

字面は大事にしていて、行数とか文字数とかにもこだわってますね。ひらがな、カタカナ、漢字、英語を織り交ぜて、美しい見た目を工夫します。歌詞はデザインみたいな感じ。

──ロイ-RöE-って表記からしてそうですもんね。だから「終(つい)に」とか「粧(めか)したくなっちゃうよね」みたいな今どき使わない表記も出てくると。

「粧(めか)したくなっちゃうよね」のとこやったら、「美化し」でも「飾り」でもよくて、自分の中にいっぱい候補があるんですよ。その中から一番いいのを選びます。文字数は同じだから、あとはデザイン性で(笑)。前の行が「痛みを、暗やみを」やけ、次はどれがいいかな……みたいな。「美化し」やったら漢字2個になっちゃうから、重かったんですよね。「“飾り”でもいいけど、もっといいのあるな」と思って探して探して、最終的に「粧し」にしました。

──いいと思います。耳を捉えるのってちょっとした違和感ですからね。

一応アートとしてこだわってやりたいんです。普通でいいんやったら、わざわざ歌やなくてもいいやって思って。自分でホントめんどくさいなって思いますけど、アレンジも「これでもいいんやけど、まだありそう……」って延々やっていつになっても終わんないんですよ。止めてくれるのは締め切りだけみたいな(笑)。

──わかる。僕も同じです。

ね。そこでやっと踏ん切りがつくっていうか。なかったら一生やると思う。

──これが仕事になってよかったですね。

ホント。ほかのこと何もできん(笑)。