メンバーの音楽性は違うほうがいい

──逆に卓球さんはRIZEに対してどういう印象がありますか？

石野　申し訳ないんだけど、プライベートで自分でお金を払ってCDを買う、って感じでRIZEを追ってたわけじゃなかったんで、リミックスをすることになってこの機会にまとめて聴いたんです。で、ミクスチャーって言っていいのかわかんないけど、いわゆるそういう音楽の中では、ほかのバンドと比べてさらにいろいろ混ざってるっていうか。

KenKen　RIZEは来年で結成20年目なんですけど、始めた当時はミクスチャーとは言ってなかったんです。いろんなもんが混ざって当然だと、バンドってのはそういうもんだと思ってたから。

石野　それで「あ、この人たち本当に音楽好きだな」って思った。やっぱ「この人にとって音楽は手段だな」みたいなことは聴けばわかるじゃないですか。RIZEの雑種犬感覚の混ざり具合って、音楽好きな人じゃないとできないものだから。

KenKen　そうですよね。ライブを観たり演奏を聴いてれば、人生賭けてる奴はすぐわかるというか。

石野　ほかにできることが何もないからね。そういう人は音楽やってないとコレ（両手を前に出して手錠をかけられるポーズ）かコレ（後ろ手で縛られるポーズ）だから。

KenKen　こういうやつ（両手を胸の前でクロスして拘束衣のポーズ）ですよね（笑）。

石野　そういう人が作る曲のほうがやっぱ面白いよ。音楽が好きな人が作ったものって、ジャンルに関係なく聴いてて楽しい。どういうバックボーンがあって、どんなふうに音楽に接してるんだろうっていうのが、音を聴くだけでわかるからさ。

KenKen　いろいろ混ざってる理由としては、メンバーそれぞれ聴く音楽が全然違うからっていうのもあると思う。でもみんながカッコいいと思う共通のポイントが何か1個あって、それを集まったときにやればいいって感じになってるんです。昔みたいにRIZEだけってわけじゃなくて、今はみんなソロ活動もしてるし。

石野　それは理想的だよね。違う音楽性をどうにかしてすり合わせて何かを作るのがバンドの面白さだと思う。

KenKen　RIZEに「音楽性の違いで解散」とか絶対ないですからね。あっくん（金子ノブアキ）とはガチで兄弟だし、JESSEも生まれる前からの仲みたいな奴だから、解散とか意味ないんで。

石野　うちなんか、もう1人がミュージシャンじゃないから音楽性の違いがないんだよ。音楽性がないんだもん。

KenKen　あはは（笑）。バンドやるならメンバーの音楽性はむしろ違うほうがいいですよ。バンドの解散ってたいてい人間関係が原因ですからね。なのにそれを音楽のせいにする感じがね、音楽にすごく申し訳ないですよ。

石野　お金絡みで解散とかね。あと妬み。

KenKen　女が被るとか。

石野　そうそう（笑）。

ちゃんと音楽を好きな人がRIZEを聴いてるんだろうな

──卓球さんは今回のオファー受けてどう感じました？

石野　最近ロックバンドのリミックスをすることはけっこう多いんです。ダンス系の曲をリミックスするときってある程度やれることの幅が決まってるんだけど、バンドの曲だと逆に、特に指定がない限りは好きにやれるんですよ。だからオファーがあったらまず1回曲を聴かせてもらって、こっちでやれることがあれば受けるって感じなんだけど、これは「ぜひやりたい」って気持ちになった。曲を聴くだけで「遊び慣れてるなあ」って思ったし、オファーが「もう好きにしてください」って感じだったんで。

KenKen　いやあ、ホントうれしいっす。

石野　リミックスって言っても、例えば「歌は全部残したうえで、こんな雰囲気にしてほしい」みたいなオファーだったら、それはリミックスっていうよりアレンジなんで。それだとこっちもあんまりやりがいがなくて。

KenKen　今回のリミックスは頭の2分くらいでJESSEの歌詞が全部出ちゃったから、初めて聴いたときは「え？ これからどうなるんだ？」って驚いた（笑）。あと、自分が考えたギターのリフが使われてたから、それが卓球さんっぽい感じになってたのがすごいうれしかったです。でも実は、最初は「PARTY HOUSE」のリミックスを頼もうって話してたんですよね。

石野　そう、でも曲があがってなかったんだよね。「リミックスをお願いします。まだ曲はできてないんですけど」ってさ、それじゃイエスともなんとも言いようがない（笑）。で、「NOTORIOUS」をもらったからそっちに手を付けてたんだけど、あとになって「曲ができたんで、こっちじゃダメですか？」って（笑）。

KenKen　あ、そんな無茶なこと言ってたんですね、すいません（笑）。でも結果として「NOTORIOUS」をやってもらってよかったなって、ホント思います。

石野　うん、やりやすかったし、楽しかったですよ。細かく考えるより一筆書きみたいに作ったほうがいいなと思って。3時間くらいでベーシックができたんで。

KenKen　すげえ。

石野　リミックスって、いじくり回してると大抵よくならないんですよ。結局着地点を見失っちゃうっていうか。やってるうちにいろんな可能性が見つかって、寄り道してるうちに「あれ？ どこ向かってたんだっけ？」みたいになるんだけど、今回はスタートから着地までまっすぐ行けたんです。俺はけっこうリミックス作るの速いほうなんだけど、その中でも今回はかなり速かった。

KenKen　「難産でした」とか言われなくてよかった（笑）。

石野　例えばメロディアスで展開がある曲だとリミックスってけっこう難しいんだけど、「NOTORIOUS」はラップだし、ワンコードの曲が基本的に好きなんで。

KenKen　やっぱリミックスって、一番楽しいのは作ってもらった本人たちですよね。「やべー！ 俺たちの曲が！」って、今回はひさびさに興奮しました。

石野　ありがたいです。でも俺にとっても今回はすごくいい機会だったな。RIZEのお客さんに自分の音楽がどう伝わってるのか、全然わかんなかったから。自分が好きなアーティスト以外は認めないし聴こうともしない、みたいな音楽ファンもいるわけじゃない？ でもRIZEはバンド自体にいろんな要素が混ざってるからか、ファンも凝り固まってないっていうか。ちゃんと音楽を好きな人がRIZEを聴いてるんだろうなと思った。