ナタリー PowerPush - RINKO

過去を乗り越えて見えた“自分の歌”

ヒップホップシンガーRINKOが1stアルバム「NAKED LIFE」をリリースした。本作にはRINKO自身の過酷な体験をリアルな言葉で歌った6曲と、全楽曲のPVを収めたDVDが収録されている。今回ナタリーでは、ファンに監禁された経験やDVを受けた過去があるというRINKO本人にインタビューを実施。歌を通して自分の過去を受け入れ、性犯罪や暴力などの被害者を巡る現在の社会の環境を変えたいと強く語る彼女の半生に迫ることで、「NAKED LIFE」に込められた思いを探った。

取材・文 / 伊藤大輔 撮影 / 小原啓樹

なんでこんなにつらいんだろう

──資料を見ると、RINKOさんは過酷な家庭環境で育ったとありますね。

RINKO

ええ。父親が働かなかったので、母親が働きながら私のことを育ててくれたんです。でもそのしわ寄せと言うか、ストレスのはけ口が私。いつも母親につらく当たられました。そういうこともあって、物心ついたときから“なんでこんなにつらいんだろう”って思っていて。

──そうだったんですね。

でもそれでグレたりすることもなくて、常に冷めてる感じでした。

──そんな冷めた状況で、何か好きだったものってありましたか?

音楽ですね。小学校のときからいつもラジオを聴いていて。マイケル・ジャクソンとかマドンナが好きでした。

──学生時代、部活などはやっていたんですか?

はい。中学生のときはテニス部でした。高校になると演劇をちょこっとやってみたりしていて。

──では、自分で何かを表現したいと思ったのは高校生くらいの頃だったんですね。

うーん、でも友達が言うには、私は小学校の頃から歌ったり踊ったりしていたらしくて。だから小学校くらいなのかな。高校の演劇部では大会で優勝したこともありましたけど、なんかつまんなかったんです。それで「他人を演じるんじゃなくて、自分の言葉で何かを表現したいのかな?」って考えるようになったと思いますけど。

──資料には“ポールダンスが特技”とありますけど、ダンスはいつ頃から?

上京する前からヒップホップダンスやジャズダンスを少しやっていました。地元が田舎だったからダンススクールなんてなくて、街中でヒップホップダンスの練習をしている人に弟子入りして(笑)。でも、弟子入りしたのも高校を卒業する間際のことだったので、長い期間はやっていないです。

──ヒップホップやR&Bが好きになったのは?

本格的に好きになったのは高校卒業後ですね。上京してクラブで遊ぶようになって、外国人のヒップホップイベントによく出入りしていたんです。汗だくになって朝まで踊るうちに、ヒップホップのビートやグルーヴのどこが気持ちいいのか、どういう音がどのポイントで鳴ったら踊りたくなるのかがわかるようになって。それでどんどん好きになっていきました。

──ちなみに、どんなアーティストが好きなんですか?

ミッシー・エリオットは歌とかフロウがカッコよくて好きです。プロデューサーだったらティンバランドやスウィズ・ビーツですかね。

遠回り自体は悪いことじゃない

──上京したのは、親元を離れたかったからですか?

それよりも、エンタテインメントに関わる仕事がしたくて。まあその結果として親元を離れることができたのはうれしかったですけど。

──シンガーとしてエンタテインメントの世界に関わりたかったということですか?

いや、上京したときはまだシンガーになれるとは思っていなかったんです。だからモデルの仕事をやったり……上京して間もなかったこともあり、無鉄砲にいろんなことに挑戦していました。そして、そういった活動と並行して歌のレッスンも受けていたんですね。いろいろやっているものの1つという感じで。

──歌はそれからずっと続けているんですね。

そうですね。歌を始めた頃、クラブのステージで歌ったりイベントを主催したりしたんですが、その間も自分が本当にやりたいことは何なのかを模索していて。その頃は今よりももっとヒップホップというジャンルにとらわれていたし、もっと黒人っぽいシンガーになりたいって思っていたんです。だから当時は“歌を通して何を伝えたいのか”ということがあまりわかっていなかったと思います。

1stアルバム「NAKED LIFE」/ 2014年4月9日発売 / GREENLAND LTD / GXXXX-001
[CD+DVD] 1620円 / GXXXX-001
CD収録曲
  1. What You Gonna Do?
  2. Stand Up feat. YOKE
  3. 100万ドルの夜景
  4. I Don't Wanna Be Like You(2014)
  5. I Should Be Happier
  6. Take A Break
付属DVD収録内容
  • What You Gonna Do? ビデオクリップ
  • Stand Up feat. YOKE ビデオクリップ
  • 100万ドルの夜景 ビデオクリップ
  • I Don't Wanna Be Like You(2014) ビデオクリップ
  • I Should Be Happier ビデオクリップ
  • Take A Break ビデオクリップ
RINKO(リンコ)
RINKO

鹿児島県出身の女性シンガー。高校卒業後に上京し、モデル活動やイベントの主催、テレビ出演など幅広い活動を始める。また同時に音楽活動もスタートさせ、2008年にはD. Focisが手がけたコンピレーションアルバム「New Tokyo Mixtape 2」に唯一の女性アーティストとして参加した。さらに同年にはFOX TVのMCに抜擢され、テレビやラジオでの活動が本格化。2012年以降はアーティストとしての活動に力を入れ、2014年4月に、幼少期の過酷な家庭環境やファンに監禁された過去などを赤裸々に歌った1stアルバム「NAKED LIFE」をリリースした。