海外公演は「鳥肌モノでした」
──楽曲制作のみならず、2022年3月以降はライブ活動も積極的に行っていますね。
1stワンマン(2022年3月に東京・WWW Xで開催された「れん 1st ONEMAN LIVE ~きみのうた~」)はさすがにめっちゃ緊張しましたね。そのときは僕が歌とアコギで、そこにピアニストさんが入るというシンプルな形だったんですけど、いきなり2人だけというハイレベルなメンバー構成だったので。もちろんめちゃくちゃ準備もしたし、当日もすごくいい経験ができたと思っています。何よりも「嫌いになれない」のリリースから半年しか経っていないというタイミングでたくさんのお客さんが来てくれたという事実がうれしくて、今でもすごく印象に残っているライブです。
──徐々にライブの規模が拡大していき、昨年はZepp Shinjuku(TOKYO)を含む全国ツアー「れん ONEMAN LIVE TOUR 2024 -Dulcet-」も成功させています。
僕自身、アーティストとして活動しているからには音源をいいなと思ってもらえたら、そのよさをライブでも発揮させたいという思いがあります。生で観たい、聴きたいと興味を持ってくれる人が増えている事実は、やっぱりありがたいですよね。なので、ライブは積極的にやっていきたいと思っています。
──今年の3月下旬には上海と杭州でワンマンライブを実施しました。この記事が出る頃にはすでに終了していますが、4月12日にはソウルでの公演があり、さらに27日には台北でのライブも控えています。
海外にまで自分の歌が届いていることに、めちゃくちゃびっくりしました。それ以前からTikTokやインスタのリールでは海外の方からコメントをもらったりしているので、聴いてくれている人が少しはいるのかなと思っていましたし、現地に行ったら100人くらい集まってくれたら大成功かなと思っていたんですけど、正直想像を遥かに超える人たちが来てくれたので鳥肌モノでした。しかも、日本のお客さんとは違った熱を持っていて、ライブが始まる前からコールをしてくれたり、曲が始まったらずっと一緒に歌ってくれたりして。驚きを通り越して感動しました。ライブをいろんな国でできるなんて、コロナ禍に家でギターを始めた頃は思ってもみなかったです。こうやってメジャーデビューしてインタビューをしてもらえるなんてことも想像していなかったので、今でもドッキリなんじゃないかと思ってます(笑)。
──そのメジャーデビューに関してですが、音楽活動を始めた頃はメジャーでの活動を意識していましたか?
いや、まったくしていなかったです。そもそも僕はただ楽しいから音楽を続けていただけで。音楽を作り続けていたら、気付けば海外でライブしてメジャーデビューが決まったという感覚でした。でも、潜在意識の中には多少なりとも「いつかはメジャーで」という思いもあったのかもしれない……というのも、TikTokなどのSNSで自分の音楽を広めるには限界がありますし。曲を届ける層や幅を広げていくきっかけとして、このタイミングでメジャーデビューするのは一番効果的なんじゃないかと思って、お話をいただいた際に快諾しました。
これはすごいことになった!
──にしても、メジャーデビュー曲「淡色の幸せ」がいきなりテレビドラマのテーマソングというのも驚きですよね。しかも「ソロ活女子のススメ5」という、人気ドラマの最新シリーズのオープニングテーマですから。
シーズン5まで続くということは、それだけ人気のある作品だということですもんね。母親からも「デビュー一発目で江口のりこさんのドラマ!」と連絡が来ましたから(笑)。ありがたいです。
──爽快感の強い「淡色の幸せ」はドラマの幕開けにぴったりだと思いました。
ありがとうございます。僕も拝見しましたけど、「自分の曲に合わせて江口のりこさんが動いてる! これはすごいことになった!」と笑っちゃいました(笑)。以前もNetflixの映画「ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~」に主題歌(「HoriZOM」)を担当したことがあったんですけど、今回は地上波で流れるわけですものね……僕の中では歴史的瞬間ですね。
──この曲はドラマのお話をいただいてから制作したものなんですよね。
そうです。まず、このお話をもらってすぐに前作のシーズン4を観ました。僕は「孤独のグルメ」シリーズが好きなんですけど、「ソロ活女子のススメ」シリーズはその女性バージョンみたいな印象を持ったんですね。ドラマを観るのは若い女性だけでなくもっと幅広い層だと思うので、いろんな人がこの曲を自分自身に当てはめながら共感してもらえるよう、抽象的な表現も取り入れています。かつ、ドラマのオープニングテーマということで、メロディ的には明るくて、聴いているだけでテンションが上がるような、かなり開けたものを意識しました。加えて、ドラマでは流れない2番はアレンジや構成にちょっとこだわりがあって。1番とは違うメロディにしたりとか、タイアップという枠にとらわれすぎることなく、楽しみながら作れました。
──先ほど、アニメをモチーフに曲を書くこともあるとおっしゃっていましたが、今回もこれまでの制作手法の延長線上にあるものだったと。
はい、そういう意味では今までの作り方とそこまで大きく変わらなかった気がします。
──個人的には、サビに登場する「淡色に輝くの」というフレーズが印象に残りまして。
自分で書いておいてなんですけど……「どういうこと?」っていう(笑)。確かに、「淡色に輝くの」って対照的な言葉が並んでいる印象を受けますよね。1番のAメロの「大きな夢などなくて 生き甲斐も特にない 無きゃだめなのかな 私らしくいたいの」じゃないですけど、夢とか生きがいがなくてもまったく問題ないし、そんなのはのちのち見つけていけばいいだけで。他人から見たら淡色のようにぼやけて見えていても、自分自身が輝けていればそれで十分、自分が思うままに生きてほしいというメッセージをこの曲には込めました。
卒業ソングを作りたい、武道館に立ちたい
──届けたいメッセージをメロディに乗せて歌う際、ご自身の中で意識することやこだわっているポイントはありますか?
自分で作ったメロディではあるけど、そこにアレンジャーさんが考えたトラックが重なることで、最終的にはアレンジャーさんの意図も加わるわけじゃないですか。なので、その意図を毎回汲み取りながら、どう歌ったら心地よく響くか、気持ちよく聴いてもらえるかということを考えて歌っています。特に今回は「本当に欲しい物は、簡単には得られない」で始まるDメロがすごく好きで。1曲を通して聴くと、ここだけちょっと異質かもしれませんけど、一番僕らしさが出せているんじゃないかなと思っています。
──なるほど。れんさんがおっしゃる2番のメロディのちょっとした変化やDメロ以降のドラマチックに盛り上がるパートは、ドラマで使われるショートバージョンでは聴けないので、ドラマでこの曲を知った方もリリース後にフルコーラスで聴くことで新たな発見がたくさんありそうですね。
そうそう。そういう驚きを与えたくて2番以降にはこだわりをいろいろちりばめているので、ドラマでこの曲を知って気になった人はまた違った雰囲気を楽しめると思います。ぜひフルコーラスを聴いてほしいです。初めてのタイアップなのに、こんなに好き放題しちゃってもいいのかなと思いましたけど、結果的にすごくいい形に仕上がったんじゃないかな。
──「淡色の幸せ」が、昨年11月にリリースされたEP「Dulcet」をはじめ、過去の楽曲にも触れてもらえるきっかけにもなりそうですし、大きなチャンスを得られましたよね。ここからさらに活動の幅も広がっていくのかなと思いますが、メジャーというフィールドで今後チャレンジしてみたいことはありますか?
以前もちょっとだけ経験があるんですけど、ほかのアーティストの楽曲にフィーチャリングボーカルとして参加する機会が増えたらいいなと思っていて。知名度とか関係なく、自分とは違うタイプの声のシンガーさんと一緒に歌ったとき、僕の歌声がどう響くのか、相手に対して自分がどういうアプローチで歌うのか、いろいろ得られるものがたくさんあると思うんです。
──音楽的に挑戦したい楽曲やジャンルはありますか?
卒業ソングは一度作ってみたくて。僕自身、来年の春で大学卒業なので、そこに合わせて1曲作れたらなと、ちょうど思っていたところです。
──6月には新たなツアー「れん ONEMAN LIVE TOUR 2025 -Molt-」が始まりますが、ライブにおいて何か目標は持っていますか?
日本武道館には5年以内に立ちたいと思っていて。武道館って天井に日本の国旗があるじゃないですか。ああいう日本を代表する大きな会場で、国旗を背負ってライブができたら……日本を代表するアーティストになれたと実感できる気がしますし、ファンの皆さんも喜んでくれるんじゃないかなと思っています。もちろん、そこがゴールではないので、実現したあとも今みたいに楽しみながら音楽を作り続けていけるのが一番ですね。
公演情報
れん ONEMAN LIVE TOUR 2025 -Molt-
- 2025年6月14日(土)広島県 Live space Reed
- 2025年6月15日(日)福岡県 BEAT STATION
- 2025年6月21日(土)愛知県 THE BOTTOM LINE
- 2025年6月28日(土)石川県 金沢GOLD CREEK
- 2025年7月4日(金)宮城県 darwin
- 2025年7月6日(日)北海道 PLANT
- 2025年7月11日(金)東京都 LIQUIDROOM
- 2025年7月12日(土)大阪府 BIGCAT
プロフィール
れん
2003年6月生まれ、21歳の現役大学生シンガーソングライター。SNS総フォロワー数は150万人、ストリーミングサービスでの楽曲総再生回数は1億1000万回を突破。2021年9月に自身初のオリジナル楽曲「嫌いになれない」を配信リリースした。最新曲は2025年4月リリースのテレビドラマ「ソロ活女子のススメ5」のオープニングテーマ「淡色の幸せ」。6月から7月にかけてライブツアー「れん ONEMAN LIVE TOUR 2025 -Molt-」を行う。