ナタリー PowerPush - レミオロメン
新たな一歩を刻む名バラード 信じる心が生んだ「Your Song」
結成10周年、原点回帰作ともいえるアルバム「花鳥風月」、47都道府県を回った全64本のロングツアー。レミオロメンにとって2010年は、実り多きメモリアルイヤーとなった。
2011年の幕開けを飾る配信シングル「Your Song」は、明らかに「花鳥風月」以降を感じさせた上で、レミオロメンが鳴らすバラードの本質を浮き彫りにする1曲だ。また「Your Song」は小説+CDのスペシャルボックス(書籍扱い)としてもリリースされる。小説は「粉雪」と「3月9日」が起用されたことでも知られるドラマ「1リットルの涙」の脚本を手がけた大島里美の書き下ろし。CDには「Your Song」とともに、その「粉雪」と「3月9日(10th Anniversary Ver.)」が収録される。
ナタリー初登場となる今回、バンドの現在をメンバー全員にたっぷり語ってもらった。
取材・文/三宅正一 撮影/中西求
「花鳥風月」で取り戻した本当の自分たち
──まず2010年はバンドにとって結成10周年であり、アルバム「花鳥風月」のリリースや47都道府県を回った全国ツアーなど、かなり重要な1年だったと思います。
藤巻亮太(Vo, G) いろいろあった1年でしたね。やっぱりその中で象徴的だったのは「花鳥風月」で。自分たちの足元をもう一度見つめ直すようなアルバムだったんです。さらにツアーで47都道府県、計64本も回れたこともかなり大きかったです。それとともにこの「Your Song」という曲も、2010年の1年をかけて作ったという感じで。
──じっくり作りたいと思った結果としてそうなったんですか?
藤巻 というよりも、歌詞が書けなかったんですよね。
──なるほど。「Your Song」の話の前に聞きたいのが「花鳥風月」のことで。藤巻さんもさっき「自分たちの足元をもう一度見つめ直した」っておっしゃいましたけど、今のレミオロメンにとってやはり「花鳥風月」というアルバムが大きなポイントになっていると思うんです。
藤巻 そうですね。
──とことん自らの日常を見つめるという藤巻さんのソングライティングの核が改めて明らかになったし、その藤巻さんの歌に強いポピュラリティを宿すのがレミオロメンというバンドなんだということを強く実感することができたアルバムでした。
藤巻 自分たちで自分たちの歌をちゃんと見つめなくちゃいけない、バンドがそういう時期に差し掛かってきているなと思っていたんですよね。そういうこともあって、「花鳥風月」は初めてセルフプロデュースで制作して。曲作りに関しては、まず僕は言葉を書こうと思ったんです。言葉を書いたところに、それを描く音を乗せていこうと。どんな言葉を書こうと思ったかというと――ホントに何気ない、ただ生きているということ。そこにあるいつも見過ごしていること。当たり前すぎて意識の上にのぼってこないようなことの中に、実はすごく大事なことがあるということ。ちゃんとそこと向き合って、自分たちはこういう日常の中に生きているんだって再認識しないといけないと思ったんです。
──うん。
藤巻 「粉雪」以降にバーッと広がっていった何かとか、そのあとバンドがどこに向かっていくかを見失ったカオスな時期とか、いろいろあったけど……。また生活の空気みたいなものを音楽にしようと思えたのが大きかったし、レコーディングも自分たちのベクトルを取り戻すような大事な時間でしたね。
パーソナルな思いが共感に変わる
──何度も言うようだけど、それが藤巻さんの歌を書く原点だと思うし。
藤巻 そうなんですよね。これは「Your Song」にも通じるんですけど、生きてる上でのリアリティって一人ひとり違うじゃないですか。その中で公約数みたいなところが共感につながると思うんですけど。表現することっていうのは、自分のリアリティが大切な気がして。でも、少し前までは多くの人の共感を呼ぶことを前提に曲を書いていた時期もあって。その中で誰に向けて曲を書いているのか、歌っているのか、自分の中で散漫になっていたんですよね。そこから「今自分が生きてる日常にこそリアリティがあるんだ」と思って作ったのが「花鳥風月」というアルバムで。「花鳥風月」で自分の心と向き合うことが、誰かに届けることの原点でもあるなと思えたところから、「Your Song」につながっていったんです。
──それを取り戻せたのは本当に大きいですね。ソングライターとしても、バンドとしても。
藤巻 それって最初は無自覚、無意識に持っていた考えだと思うんですけど。デビューしてから多くの人に僕らの音楽を求めてもらえるようになって、それに応えたいと思った。で、広がっていくことがテーマになったときに、1回見失ったと思うんですよね。
──それはやはり「粉雪」以降ですか?
藤巻 今思うとそうですね。何かがひとり歩きしたし、ひとり歩きしたものに対して自分たちも「それがレミオロメンなんだ」って後付けで肯定していくような時期があって。それは表現の本質と向き合うことではなかったと思います。その本質を「花鳥風月」で取り戻せたのかなって。
──まさに。例えば昔の曲でいうなら、「電話」や「ビールとプリン」といった、超個人的な生活感にスポットを当てているんだけども最終的にポピュラリティの高いものに昇華されている曲。あの感じを「花鳥風月」では感じることができて。それを経て「Your Song」があるというのはすごくわかりますね。
藤巻 自分の中のリアリティをよどみなく表現して、そこでリスナーとつながれる尊さを大事にしたいから。そう思えるようになったときに、表現者として欲張らなくなったんですよね。そこから「Your Song」にも続く道が見えました。
──神宮司さん、前田さんはそのあたりどうですか?
神宮司治(Dr) 「花鳥風月」はホントに“近い”アルバムができたなあと思っていて。作品の匂いとしては「朝顔」に通じるものがあるかなと思います。歌の情景もそうですし、細かいことを言えば楽器もビンテージものを多く使うとか。「朝顔」もビンテージの楽器を結構使っていて、音色的に近いものがあると思いますね。プレイも、派手さとかではなくて、しっかりと地面を歩くようなどっしりとした感じを出せたと思いますし。全体を通して背伸びしていない感覚を表現できたのはすごく良かったと思います。
前田啓介(B) 「HORIZON」を作ってから見失ってしまった生活の中の大切さというのが確かにあって。でも、あそこで見失ったからこそ「花鳥風月」も「Your Song」もあると思うんですよね。すべてがバンドにとって大切なプロセスだったと思います。
レミオロメン SPECIAL CONCERT
"Your Songs" with Strings
- 2011年3月9日(水)神奈川県 横浜アリーナ
OPEN 18:00 / START 19:00 - 2011年3月10日(木)神奈川県 横浜アリーナ
OPEN 18:00 / START 19:00 - 2011年3月26日(土)兵庫県 神戸ワールド記念ホール
OPEN 17:00 / START 18:00 - 2011年3月27日(日)兵庫県 神戸ワールド記念ホール
OPEN 15:00 / START 16:00
レミオロメン
2000年12月に藤巻亮太(Vo, G)、前田啓介(B)、神宮司治(Dr)という山梨県出身の3人で結成。群馬・前橋を中心にライブ活動をスタートさせ、後に都内に拠点を移動。2003年にミニアルバム「フェスタ」、シングル「雨上がり」をインディーズからリリースし好セールスを記録。同年8月リリースの2ndシングル「電話」からメジャーに活動の場を移す。2005年11月にはドラマ挿入歌に起用された「粉雪」が100万枚を超えるセールスを記録し、その人気を確かなものにする。2009年には「NHK紅白歌合戦」に初出場を果たし、多くの視聴者を魅了。結成10周年を迎えた2010年には、セルフプロデュースアルバム「花鳥風月」をリリースしたほか、全国47都道府県を回る全国ツアーを敢行した。
スタイリスト:和田真教
ヘアメイク:杉本和弘
- 藤巻亮太
- ブルゾン/コルベット バイ イグジット フォーディス(イグジット フォーディス インク)
- カットソー&パンツ/リチウム オム(リチウム オム)
- 前田啓介
- カーディガン/レステロッズ(ストックス)
- カットソー/マックレガー バッジドラゴン(双日インフィニティ)
- パンツ/スーパーファイン(エリミネイター)
- 神宮司治
- シャツ&ストール/ディスカバード(ディスカバード)
- Tシャツ/ホワイト ライン(アドナスト)
- パンツ/リチウム オム(リチウム オム)
<問い合わせ先一覧>
- アドナスト/03-5428-2458
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- 双日インフィニティ/03-3669-7437
- ディスカバード/03-3463-3082
- リチウム オム/03-3499-8873