ナタリー PowerPush - レミオロメン

新たな一歩を刻む名バラード 信じる心が生んだ「Your Song」

自らと向きあうことで生まれた「Your Song」

──「Your Song」は2010年の1年間じっくりあたためてきたということですが、始まりはどういう感じだったんですか?

藤巻 「花鳥風月」を作り終えて、次のモードで新曲を作ろうと思ったときにバーッと書いた曲だったんです。メロディのダイナミズムにすごく手応えがあって。だけど、歌詞でつまずいて。「『Your Song』なのに誰に向けて歌っているんだろう?」という感じがすごくあったんです。「花鳥風月」でセルフプロデュースになってから、2人からも歌詞に対する意見が出るようになったんですけど、やっぱり「この歌詞はどこに向かっているのかわかりづらい」という意見をもらったんです。そのあとは自分自身と向き合うしかなかったですね。「Your Song」という歌詞を書くためには、自分の中にあるホントの気持ちに出会うこと、その気持ちを貫いて生きていくことこそが大切なんだと思って。そこから「Your Song」と「My Song」が時間をかけて重なっていったんです。

──そうやって何度も歌詞をブラッシュアップしたと。

藤巻 そうですね。「Your Song」と言いながらも、最初は抽象的で、いろんな状況を想定しているような歌だったから。それをグッとひとつの焦点に向かって光を集めていくような作業でしたね。

──歌詞には、藤巻さん自身の変われないこと、変わってしまうことを受け止めて、ありのままを歌にしていく覚悟が込められているように思います。それが「あなた」に向かっていくんだという。結果として、至近距離のラブソングにも、音楽をテーマにしたメッセージソングのようにも聴こえる。

藤巻 そうであったらすごく幸せですね。人って、誰もが生まれたときから細胞分裂を繰り返しながら、変化していく生き物で、それとともに心も感情も日々変化していくと思うんですよね。その中で変わらないものって、自分が決めた意志だと思うんです。そこに向かって、何をしたいのかという。それこそが移り変わる世の中で大事なことだと思ったし、それを信じるか信じないかでその先の未来も変わっていくと思いましたね、この曲の歌詞を書きながら。もしその先にリスナーの共感が生まれるなら、それを死ぬほど大事にしたいと思うし。

“楽曲主義”を貫き続けている

──お2人はこの曲が最初に藤巻さんから上がってきたときにどう受け止めましたか?

神宮司 最初に聴いたのが2010年の1月くらいで。第一印象は雰囲気のいいバラードだな、という感じでした。レコーディングするのがすごく楽しみで。夏までレコーディングはしなかったんですけど、それまでは曲を聴き込んで。プレイ的に今までと違う感じを出したいなと個人的に思ってたんです。すごく微妙なことなんですけど、これまでにないフレーズを取り入れたりもして。個人的にチャレンジの曲になりました。先にオケを録ってから、そのあとどんどん歌詞が変わっていったんですけど。それによって曲の力強さがグッと増したと思います。さっきも話していましたけど、曲がどこに向かっていくのか、どうなりたいのかがどんどん明確になっていったんですよね。それこそ「電話」や「ビールとプリン」みたいに、パーソナルな思いや情景がリスナー自身にも当てはまるような、そういう曲になったと思います。

インタビュー風景

前田 最初は僕も「誰に対して歌いたいんだろう?」って感じてたんですけど、歌詞のベクトルが定まってきてから人の肌触りを感じられるようになったんですよね。プレイ的には特に難しいことはしてなくて、とにかく曲に寄り添う感じで。自分のプレイが曲の中にどれだけ侵入できるかというのは、いつも課題ですね。

──アレンジはイントロから、アコースティックギターのアルペジオ、ピアノ、ストリングスが同じ強さで絡み合いながら、バンドサウンドと融合していくような感触が印象的です。レミオロメンは、当初3ピースのみで鳴らすミニマムなバンドサウンドからスタートしました。今ではこうして楽曲にピアノやストリングスが寄り添っていることが普通になっていますが、そのあたりでポイントに置いていることは何ですか?

前田 歌がそれを欲する瞬間があるんだったら、ピアノやストリングス、電子音でもなんでも乗せていきたいと思ってますね。デビューしてから長い時間をかけてそういう“楽曲主義”を育てていったというか。歌が欲するものに対してのアンサーとして、アレンジや楽器があるという感じですね。例えば「花鳥風月」では「ありがとう」「恋の予感から」、タイトル曲の「花鳥風月」という3曲のアレンジをトーレ・ヨハンソンと一緒にやったんですけど、“楽曲主義”の発想からすると、トーレ・ヨハンソンという存在もひとつの楽器だと思うんですよ。楽曲にかかわる人が変われば全然違うサウンドになるのが音楽の面白さでもあって。

──その面白さはメジャーデビュー以降に発見したものですか?

前田 まさにそうですね。「南風」という曲で小林武史さんにプロデュースをお願いするようになって、ストリングスを初めて入れてみたんですよね。それが大きなきっかけでした。

「粉雪」「3月9日」を超えなきゃいけない

──今回の新曲「Your Song」は、配信のほかに小説+CDのスペシャルボックスという形態でもリリースされます。

藤巻 小説を書いているのは、大島里美さんという方で。大島さんは「粉雪」が挿入歌として使用されたドラマ「1リットルの涙」の脚本家でもあるんです。今回の話をスタッフからもらったときにちょうど僕も「Your Song」の歌詞を書き切る前で。実は「Your Song」の歌詞を書いているときの感覚って、「粉雪」の歌詞を書いているときとすごく近いものがあったんです。それから実際に大島さんとお会いして、会話の中から刺激もいただいたりして。大島さんの小説となら、こういう新しい作品のあり方もあるなと思えましたね。

──スペシャルボックスのCDには、「Your Song」のほかに「粉雪」と「3月9日(10th Anniversary Ver.)」が収録されています。「粉雪」と「3月9日」は、「1リットルの涙」をきっかけにレミオロメンの代表曲として多くの人に届いて。いまだにバンドのパブリックイメージにもなっていると思います。イコール、今後バンドが超えなきゃいけない2曲でもあると思うんですけど、だからこそ「Your Song」とこの2曲が並ぶことはバンドにとっても大きな意義があるのではないかと。

インタビュー風景

藤巻 そういうところはありますよね。どの曲も自分たちの子供みたいなものだから大事ではあるんですけど、この2曲は特に超えなきゃいけない何かがあると思います。そういう意味でも「Your Song」という自信のある1曲と並ぶのはすごくいいことですね。

神宮司 今「なるほど」って思いました(笑)。「粉雪」と「3月9日」がパブリックイメージとしてあって、その上での「Your Song」。レミオロメンっていうと「粉雪」と「3月9日」しか知らないという人もたくさんいると思いますけど、「Your Song」はそういう人たちにも今のレミオロメンを知ってもらえる曲だと思うので。最初はこの並びに悩んだ部分もあったんですけど、結果的に良かったと思います。

──ちなみに小説の内容は?

藤巻 主人公が20代の都会に住む男女で。恋人だったその2人が、別れて何カ月か経ったところから物語が始まるんです。お互いが自分の心と向き合ったときに、もう一度新しく相手を心のなかに描けるのか、それともまた違う道があるのか。そこで生まれる葛藤も含めて「Your Song」と共鳴するような内容になっています。

──3月には横浜アリーナと神戸ワールド記念ホールで「レミオロメン SPECIAL CONCERT "Your Songs" with Strings」と題されたスペシャルライブも決定しています。最後にこのライブに向けた意気込みを聞かせてください。

前田 「花鳥風月」のツアーで、お客さんの近くでしっかり音楽を鳴らすということをやってきて。今回も根本にある気持ちは同じだけど、もう少しフォーマルなアプローチで音楽的挑戦ができたらなと思ってます。ステージングも含め、こういうレミオロメンもいるんだ、という新たな発見をしてもらえると思いますので、楽しみにしていてほしいです。

インタビュー風景

ニューシングル「Your Song」 / 2011年1月18日発売 [CD+小説] 980円(税込) / 宝島社 / ISBN:978-4-7966-7944-2

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CD収録曲
  1. Your Song
  2. 粉雪
  3. 3月9日(10th Anniversary Ver.)

配信シングル「Your Song」2011年1月19日配信開始

レミオロメン SPECIAL CONCERT
"Your Songs" with Strings
  • 2011年3月9日(水)神奈川県 横浜アリーナ
    OPEN 18:00 / START 19:00
  • 2011年3月10日(木)神奈川県 横浜アリーナ
    OPEN 18:00 / START 19:00
  • 2011年3月26日(土)兵庫県 神戸ワールド記念ホール
    OPEN 17:00 / START 18:00
  • 2011年3月27日(日)兵庫県 神戸ワールド記念ホール
    OPEN 15:00 / START 16:00
レミオロメン

2000年12月に藤巻亮太(Vo, G)、前田啓介(B)、神宮司治(Dr)という山梨県出身の3人で結成。群馬・前橋を中心にライブ活動をスタートさせ、後に都内に拠点を移動。2003年にミニアルバム「フェスタ」、シングル「雨上がり」をインディーズからリリースし好セールスを記録。同年8月リリースの2ndシングル「電話」からメジャーに活動の場を移す。2005年11月にはドラマ挿入歌に起用された「粉雪」が100万枚を超えるセールスを記録し、その人気を確かなものにする。2009年には「NHK紅白歌合戦」に初出場を果たし、多くの視聴者を魅了。結成10周年を迎えた2010年には、セルフプロデュースアルバム「花鳥風月」をリリースしたほか、全国47都道府県を回る全国ツアーを敢行した。

スタイリスト:和田真教
ヘアメイク:杉本和弘

藤巻亮太
  • ブルゾン/コルベット バイ イグジット フォーディス(イグジット フォーディス インク)
  • カットソー&パンツ/リチウム オム(リチウム オム)
前田啓介
  • カーディガン/レステロッズ(ストックス)
  • カットソー/マックレガー バッジドラゴン(双日インフィニティ)
  • パンツ/スーパーファイン(エリミネイター)
神宮司治
  • シャツ&ストール/ディスカバード(ディスカバード)
  • Tシャツ/ホワイト ライン(アドナスト)
  • パンツ/リチウム オム(リチウム オム)
<問い合わせ先一覧>
  • アドナスト/03-5428-2458
  • イグジット フォーディス インク/03-3714-3816
  • エリミネイター/03-3464-8144
  • ストックス/03-5768-3168
  • 双日インフィニティ/03-3669-7437
  • ディスカバード/03-3463-3082
  • リチウム オム/03-3499-8873