自分たちの手の届く範囲を大切にしたい

──なるほど。先ほどはデビュー後も不安な日々を過ごしていたとおっしゃっていましたが、「銀魂.」という大型タイアップが決まったことで「メジャーというフィールドで活動している」実感も出てきたんじゃないですか？

Ryoko　はい、やっと実感が出てきました。「銀魂.」のオープニングを観るたびに「ホントに自分たちの曲が流れてるんだな」って思うし、SNSの反応もすごいんですよ。「ЯeaLやばい」とか「新しい『銀魂.』のオープンニング曲、カッコいい」とかね。ミュージックビデオの反響も大きいし。

Ryoko　そうそう。「カゲロウ」で私たちのことを知って、過去の作品にさかのぼってくれる人もけっこういるみたいで。ずっと不安を感じていたけど、「今までやってきたことは間違いじゃなかった」と思える1つのきっかけになりましたね。

──セールスやライブ動員を含め、活動状況も変わっていきそうですよね。

Ryoko　そうなるのはもちろんうれしいんですけど、いい意味で「変わらずにいたい」という気持ちも強いんです。「カゲロウ」の中で「私たちはずっとみんなのそばにいる」ということを歌っているし、この先バンドがもっと大きくなったとしても、これまで通りライブハウス中心の活動をしてきたいと思っていて。やっぱりライブハウスが好きだし、自分たちの手の届く範囲を大切にしたいんですよ。たくさんの人にЯeaLのことを知ってほしいけど、「みんなのすぐ近くで歌う」という気持ちは持ったままでいたいなって。

──常にリスナーの気持ちを意識している？

Ryoko　だって、応援していたバンドに置いていかれるのって寂しいじゃないですか。ずっと応援してくれている人たちは私たちのこういう考え方をわかってくれていると思うし、そういう思いもこのシングルを通して伝えたいですね。

Aika　うん。タイアップだけじゃなく、そういう意味でもすごく大きな意味を持つシングルだと思います。

「カゲロウ」演奏中は顔つきが違うんです

──「カゲロウ」のサウンドについても聞かせてください。バンド感、ライブ感がリアルに伝わるという点では「秒速エモーション」「仮面ミーハー女子」と共通していますが、「カゲロウ」はよりストレートなアレンジですよね。

Ryoko　各パートとも1st、2ndに比べるとシンプルですね。難しいフレーズやリズムを入れるよりも、聴いている人が入り込みやすい、ノリやすい曲にしたかったので。最初は「2番はもうちょっと複雑なアレンジにする？」という話もあったんですけど、それもやめて。今回はとにかく言葉を伝えたかったんです。

──今までは「10代のガールズバンドがこんなに高度な演奏をやってる」というインパクトがありましたが、「カゲロウ」はそういうスタンスではないと。

Ryoko　はい。デビューのタイミングでは「ちょっと難しいことをやっておかないと、バンドとして舐められる」と思っていたんです。今回はシンプルにカッコいいサウンドを表現できたので、自信につながりますね。年末からライブでも披露してるんですけど、演奏するたびに曲が成長している感じもあります。

──イントロのギターの絡みから「来た！」っていうインパクトがあって。

Fumiha　そこがこの曲の命ですね。

Yurika　プレッシャーがすごいんですよ。「1音でも外したら撃たれる」みたいな怖さがある。イントロがうまくいけばあとはノッていけるんだけど、そこでミスすると……。

Ryoko　「殺される！」みたいなね（笑）。あとからライブの映像を観ると、「カゲロウ」の演奏中だけメンバー全員の顔つきが違うんですよ。

Aika　悪い言い方をすると、ちょっと殺伐としてる（笑）。

Fumiha　シンプルはシンプルなんですけど、演奏自体はけっこう難しいんです。BPMが160くらいで、ちょっと苦手なテンポだし。

Aika　私たちにとっては遅いテンポなんですよ。ЯeaLの曲ってだいたいBPM180とか190が大半なので。

──速いですね！

Fumiha　頭おかしいんですよ（笑）。

Ryoko　あはは（笑）。「カゲロウ」は楽しい曲なので、ライブでももっと盛り上がるように演奏もがんばりたいですね。

タイミング的にはギリギリな「ひらり舞う」

──カップリング曲についても聞かせてください。「ひらり舞う」はノスタルジックな卒業ソングです。

Ryoko　この曲はもともと、デビューシングルのカップリングに収録する予定だったんです。でも表題曲の「秒速エモ—ション」が春ソングだったから、「じゃあ、『ひらり舞う』は来年の春にしよう」ということになって。10代のための卒業ソングなので、タイミング的にはギリギリなんですけど。

Fumiha　今19歳なので、来年だったら無理でした（笑）。

Yurika　ずっと好きな曲だったから、こうやってリリースできるのはうれしいですね。出せないまま終わるんじゃないかと思ってたので。

Ryoko　曲を書いたのは高校生のときなんですけど、そのときにできることを精一杯詰め込んだ感じですね。等身大の1曲というか。

──和テイストのメロディも印象的でした。「カゲロウ」にも和の要素が入っていますが、こういうメロディは得意なんですか？

Ryoko　なんでも好きなんですよね、私。シングルのリード曲は和テイストの曲が続いてますけど、メタルっぽい曲もあるし、ラップの曲もあるし、もっとポップに振り切った曲もあって。

Fumiha　幅は広いよね。