音楽ナタリー PowerPush - 平井拓郎(QOOLAND)×ニコ・ニコルソン

どん底からの上京物語とそれぞれのマンガ道

自分の曲は読み返さない日記に近い

──平井さんは音楽もマンガも普段からチェックしてるんですか?

平井 自分の曲ってあんまり聴き返さないんですよね。

ニコ そうなんですか。マンガ家さんにインタビューすると、多くの方が自分の作品は読み返さないって言うんですよね。

平井 鳥山明先生も確か「ドラゴンボール」の連載終わってかなり経ってからようやく読み返したって話を聞いたことがあります。

ニコ・ニコルソン

ニコ 理由を聞くと、自分にとってできあがった作品は過去のものだし、そこには未熟な自分しかいないから読み返すのが嫌っていう人が多いみたい。

平井 CDの場合、できあがるまでに時間がかかるんで、デモの段階ではたくさん聴くけど、そのあとはそんなに……って感じですね。もちろん自分の中で大事な曲もありますけど、基本的に音楽はインスタントな娯楽であって、新しいものをポンポン作っていくものだと思ってるんです。

ニコ そのときの気持ちがそのときの曲に入ってるってことですか?

平井 そうですね、読み返さない日記とか写真のアルバムに近いんです。だけどライブでやる曲っていうのは常に変化してますね。気持ちの入り方が変わって、グルーヴが攻撃的になっていったりとか。「Download」の一部は「毎日弾こうテレキャスターagain」にも入ってますけど、約260本分のライブを経て録り直してるので、全然雰囲気が違います。単純に演奏が上手になってるっていうこともありますけど、やっぱり応援してくれてる人のパワーが乗り移ってることはあると思います。

平井画伯、ペンネームは“山田ゴンザレス”

ニコ 平井さんはいろいろマンガを読んでますけど、描きはしないんですか?

平井 一応マンガクラブだったんで描いたことはあるんですけど、人間の体とか横顔もまともに描けないくらい壊滅的に絵が下手なんですよ。

ニコ へえ、どんなストーリーだったんですか?

平井 仲間が宇宙人にさらわれたところを助けに行くっていう大長編で、アニメ化もしやすい話にして「週刊少年ジャンプ」での連載を意識してたんですけどね。

ニコ いろいろ先のことまで考えてたんですね。あ、平井画伯の絵が見たいです! 将来の“ジャンプ作家”ですから。

平井 じゃあ宇宙人の話の主人公描こうかな。ヤスシっていうんですけど(絵を描き始める)。あと、ゆでたまご先生大好きなんでキン肉マンと……こっちにコナンも描きます。青山剛昌先生の絵は目が難しいんですよね。

ニコ (絵を見ながら)ちょっと……。ははは。やっぱ画伯ともなると迷いもなく下描きなしでいくんですね。コナンくんのメガネは似てますね。うーん、平井さんの絵の特徴は「耳がない」っていうところですね(笑)。

平井 あ、耳ないですね確かに! でも目の横に耳描くと変になりません?

ニコ 耳なかったらメガネもかけられないじゃないですか。いや、これはもう個性だ。ペンネームはあるんですか?

平井 一応、山田ゴンザレスっていうのがあるんです。武論尊先生みたいに漢字でもいいかなと思ったんですが、小さい子供が読めないと困るんで。うーん、でもヤスシだとメディアミックスが弱いかなって……。

ニコ 考えすぎです(笑)。平井さんの絵を見てると小学校の放課後思い出しますよ。私のマンガに平井さん出してもいいですか?

平井 そしたら名前は山田ゴンザレスでお願いします。親に「マンガ家になるかもしれない」って話したことがあって、そのときに「ペンネーム必要だね」って言われて決めたのがこの名前なんで、実現したら親も喜んでくれそうです。

ニコ じゃあ山田ゴンザレスっていうマンガ家を登場させて、彼はこういう耳のないキャラクターのマンガを描いているが、実はそこには誰にも言えない深い理由があり……っていう意味深な話で考えておきます(笑)。

平井拓郎が描いたイラスト。

秋にミニアルバム発売、1位を獲りたい

左から平井拓郎、ニコ・ニコルソン。

──前回のインタビュー(参照:QOOLAND「毎日弾こうテレキャスターagain」インタビュー)では、年内に4タイトル出すことを目標として掲げてました。あと1タイトルのリリース予定はもう決まってるんですか?

平井 はい、秋にもう1枚ミニアルバムを出します。インディチャートで1位を獲りたいっていう目標はあるんですが、発売日にどのアーティストがリリースするかっていう組み合わせにもよるんですよね。例えば槇原敬之さんが出てきたら敵わないですし(笑)。

ニコ “鳥山明がコミケに来ちゃった”みたいな感じですかね(笑)。平井さんは企画マンだから面白いことをやってくれそう。今後の活動、いろいろ楽しみにしてます。

QOOLAND(クーランド)
QOOLAND

2011年9月結成。平井拓郎(Vo, G)、菅ひであき(B, Cho)、タカギ皓平(Dr)、川崎純(G)からなる4人組ロックバンド。平井と川崎によるタッピング奏法を駆使したギターサウンドや、マンガ、アニメなどのフィクション作品、日常生活をモチーフにした歌詞を特徴とする。2013年5月に初の全国流通盤となるフルアルバム「それでも弾こうテレキャスター」を自主レーベル・下高井戸レコードからリリース。同年アマチュアバンドコンテスト「RO69JACK 2013」で優勝し、8月に「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013」への出演を果たす。精力的なライブ活動を続け、2013年は115本のライブを敢行した。2014年2月に6曲入りCD「教室、千切る.ep」を発売し、3月に大阪と東京で初のワンマンライブを実施した。4月にミニアルバム「毎日弾こうテレキャスターagain」を発表。8月に1004枚限定シングル「片道4,100円」をリリースし、同月以降「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2014」など多くのライブイベントに出演する。

ニコ・ニコルソン
ニコ・ニコルソン

宮城県亘理郡山元町出身のマンガ家兼イラストレーター。専門学校卒業後「東京で就職が決まった」と嘘をついて実家を飛び出し、東京で半年間のニート生活を送る。バイトとして出版社で働いていたところ、ひょんなことからイラスト制作を任されるようになり、やがてフリーイラストレーターとして本格的に活動を開始。2009年にイラストエッセイ「上京さん」をエムオン・エンタテインメントから発表する。その後、月刊誌・デジモノステーション(エムオン・エンタテインメント)で「ニコ・ニコルソンのオトナ☆漫画」、ヤングアニマル(白泉社)で「ニコ・ニコルソンのマンガ道場破り」、デジキス(講談社)で「ニコニコ妖画」、ぽこぽこ(太田出版)で「ナガサレール イエタテール」を連載。2014年4月からは、ぽこぽこで「でんぐばんぐ」のWEB連載も行っている。