思うがままに出た「イヤー」
──「海月」の平メロ部分のキーはかなり低いですよね。
岡野 たぶん今までで一番低かったのは「デッサン#1」だと思うんですけど、これはそれよりも下をいってると思う。この曲の世界観的には、レンジを広く取って極端な自分の声を入れたほうが似合うと思ってそういうメロディを呼んだんでしょうね。
──最後のところでは英語っぽいフレーズを繰り返し歌ってますよね。
岡野 「イヤー」ですよね。あれはもう出てきちゃったんですよ、フェイクとして。意味はないんですよ。「嫌ー」でもなく、「いやあ」でもなく、「year」でもないんだけど(笑)、出てきちゃったからその発想を大事にして入れようと。
──そうなんですね。僕はあそこが「We are」に聴こえたんです。歌詞で描かれているメッセージをまとめる意味で最後に「僕らは」と歌っているのかなって。そう捉えると曲の深みがより増す気がして。
新藤 ああ、確かにそうだね、うん。
岡野 じゃそっちにしとこうかな。そうしとけばよかったなー(笑)。まあでも全然そういうことではないです。「思うがままに」っていうのがこの曲を作るうえでのテーマだったので、思うがままに出た「イヤー」を入れました、はい(笑)。
ここからもいい感じで進んでいけそうな自信がある
──わかりました(笑)。もう1曲のカップリングの「ライラ」は晴一さんが作詞・作曲したナンバーで、とにかくもう「みんな楽しんでるな!」っていう曲ですね。
新藤 そうっすね(笑)。ここ最近、「カメレオン・レンズ」もそうだし、打ち込みの曲をいくつかやってたので、その反動と言うかね。人力だけで完結する曲をやりたいなと思ったんです。しかもクリックを使わずにやろうと。「人らしくテンポが揺れてもいいじゃない!」っていうのが大きなテーマでしたね。
──じゃこれは一発録りで?
新藤 そう。広いスタジオ借りてもらって、「せーの」で録りました。イメージではもっと下手くそな感じでもいいかなと思ってたんだけど、参加してくれたミュージシャンはみんなさすがに上手だから、かなりうまくできちゃってますね(笑)。でもクリックを聴くことなく、みんなの音で曲が進んで行ってる雰囲気はちゃんと出ているからよかったなと。
──ガヤもたっぷり入っていて楽しいですよね。
新藤 みんなで歌い踊ってる酒場のイメージがあったんで、コーラスはミュージカルをやられている方にお願いしたんですよ。「酒場の踊り子ふうに」とか「ちょっと雑な感じで」とか、そういうリクエストにもさっと応えてくれるのはさすがですよね。曲のいいアクセントになってると思います。
──間奏には「コロブチカ」のメロディが使われています。この曲のイメージはロシアってことなんですね。
新藤 そうそう。これが難しいところなんですけど、こういうサウンドの曲をポルノがやると全部ラテンって言われちゃうんですよ。でも今回やりたかったのはロシア民謡なんだよっていう。それをわかってもらうために「コロブチカ」も入れたし、コーラスの方にロシア語を叫んでもらったりしてるっていう。間違いなくロシアだぞと(笑)。
──そんなロシア民謡の上で昭仁さんは長セリフを披露されていて。ここも大きな聴きどころだなと。
岡野 この曲では新藤がいろいろ遊ぼうとしていることが伝わってきたので、僕もそこに乗っかっていきましょうっていうね。長セリフがあるんならやりましょう!っていう(笑)。面白かったですよ。今までやったことのないことだったので。ただね、セリフの中にある「唾」のイントネーションを何回も周りのスタッフに注意されて。どうやら広島だとちょっとニュアンスが違うみたいなんですよね。何度も「おかしい」って言われて、それが心外だった。ものすごい田舎者扱いされた気がしますよね。そんなんね、広島のイントネーションでええじゃないかと。そっちに合わせてよって言ったんですけど。
──まあでもそこで広島弁を生かすと、晴一さんこだわりのロシア民謡という設定がまたよくわからなくなっちゃいますから。
新藤 あはははは(笑)。
岡野 そっか。あんだけロシアだって言ってたのに、急に広島出てきたぞみたいな(笑)。いやあ、この曲はほんとに楽しかったな。クリックなしの一発録りってある意味、音楽の原点に帰る感じがありますよね。そこには枠に縛られないよさがある。でも一方では「ブレス」のように枠に思いっきりハマって作り切る楽しさもあって。今回のシングルはその対比がすごく面白かったですね。
新藤 タイプは違うけど、それぞれ濃い3曲になったからね(笑)。
──20周年に向けて、非常に意味のあるシングルになった気がしますね。
岡野 うん。前回のツアー(「15thライヴサーキット“BUTTERFLY EFFECT”」)がとても満足のいくものになったので、それを経た今はすごくニュートラルな気持ちで音楽に向き合えている実感があって。ここからもいい感じで進んでいけそうな自信がありますね。
新藤 今はちょっとスケジュール的にゆとりがあるから、ちょっとリラックスしてるところはある。でもここからはまたいろんなことに対して集中して、気持ちをしっかり作っていくことになると思うんでね、期待していてください。
- ポルノグラフィティ「ブレス」
- 2018年7月25日発売 / SME Records
-
初回限定盤 [CD+DVD]
2000円 / SECL-2307~8 -
通常盤 [CD]
1300円 / SECL-2309 -
期間生産限定盤 [CD+DVD]
1600円 / SECL-2310~1
- 初回限定盤、通常盤CD収録曲
-
- ブレス
- 海月
- ライラ
- 期間生産限定盤CD収録曲
-
- ブレス
- 海月
- ライラ
- ブレス instrumental
- 初回限定盤DVD収録内容
-
- 「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017」ライブ映像
- 期間生産限定盤DVD収録内容
-
- 「劇場版ポケットモンスター みんなの物語」 short movie with 「ブレス」
- ライブ情報
ポルノグラフィティ「しまなみロマンスポルノ'18~Deep Breath~」 -
- 2018年9月8日(土) 広島県 広島県立 びんご運動公園
- 2018年9月9日(日) 広島県 広島県立 びんご運動公園
- ポルノグラフィティ
- 岡野昭仁(Vo)と新藤晴一(G)からなるロックバンド。1999年9月にシングル「アポロ」でメジャーデビューし、2000年7月のシングル「ミュージック・アワー」がポカリスエットCMソングに採用され大ヒットを記録する。続く「サウダージ」は初のミリオンセールスとなり、一躍トップアーティストの仲間入りを果たす。その後も「アゲハ蝶」「メリッサ」「ハネウマライダー」などヒット曲を連発する。2014年9月には結成15周年の集大成となるスタジアムライブ「神戸・横浜ロマンスポルノ'14 ~惑ワ不ノ森~」を開催し、さらに2016年にも横浜スタジアムライブを行い2日間で6万人を動員するなど精力的にライブやリリースを重ねる中、2017年には初の台湾ワンマンライブを開催。夏には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」を始めとするフェスや野外ライブイベントに参加した。同年10月に通算11枚目のオリジナルアルバム「BUTTERFLY EFFECT」をリリースし、11月より「15thライヴサーキット“BUTTERFLY EFFECT”」を開催。2018年3月にシングル「カメレオン・レンズ」を、7月に「劇場版ポケットモンスター みんなの物語」の主題歌「ブレス」を含む同名シングルを発表した。9月には地元の広島・広島県立びんご運動公園にて野外ライブ「しまなみロマンスポルノ'18~Deep Breath~」を行う。