音楽ナタリー Power Push - PLAGUES
何歳になっても「好きなもんは好き」でいい 深沼元昭が語るバンドと人生
林幸治はベーシストの域を超えている
──2010年の活動再開後は、オリジナルメンバーの後藤敏昭さん(Dr)に加え、TRICERATOPSの林幸治さん(B)が全面的に参加しています。深沼さんから見て、林さんはどういうベーシストですか?
そうだなあ。チームにとって必要なことをしてくれる人。スポーツとかでも「こいつがいるから最終的にチームが勝てる」みたいな人っているじゃないですか。
──全体が見えている?
うん、たぶん一番よく見えてるし、こうすればもっとよくなるっていうのを知ってる。でもそれを特にアピールしないで、自然とそうなるようにコントロールしてくれる感じ。「ここでベースソロがあったらいいと思うんだよね」とかいちいち言わずに、さりげなくそれっぽいフレーズを弾いて、俺が「あ、林くんそこソロにしよう」って言うパターン。リーダーの顔を潰さないプレゼンがうまい(笑)。
──プレイスタイルの面ではどうですか?
やっぱり3ピースバンド(TRICERATOPS)を20年間支えてきた人だからね。単なるベーシストの域を超えてるんですよ。ベース視点ではこう弾きたいけど、今アンサンブルに必要なのはこっちだっていう判断がすごい。
──3ピースバンドならではの音の作り方があるんですね。
そうそう。べースがたまにギターの一部にもなったりする。そこで「いや、ベースってこういうものだから」って言ってベースの枠内から出てこない人もいるのよ。でも林くんの場合は持ってるのがたまたまベースっていうだけで、なおかつ自分自身も華があるから。すごい男だなって思いますね。
後藤敏昭の中にある確固たるリズム像
──続いて後藤さんのドラムについても聞かせてください。
いろんなドラマーとやってるけど、後藤のプレイスタイルはやっぱり独特かな。
──どんなふうに?
当たり前なんだけど、あいつが叩くとすごくPLAGUESっぽくなるよね(笑)。バンドで演奏するとき、勢いで行っちゃいたくなる曲ってあるんだけど、そういうときもあいつの頭の中には確固たるリズムの像がある。曲のテンポはあいつが中心になって「これでいこう」って決めるし、あとから俺が「やっぱりこうしようかな」と言ってもそこは変えないですね。
──しかし深沼さんのデモの段階である程度テンポは決まってるのでは?
PLAGUESの場合はデモからテンポを変えるのは前提ですね。「これ生でやったら遅いんじゃねえの」とか、実際演奏してみて「速いな」って感じたりとかあるから。
──後藤さんにとって今のPLAGUESはどんな位置付けなんでしょうね。
あいつもいろいろやってたけど、長くやってるパーマネントなバンドはPLAGUESだけだから。だからある意味、PLAGUESをやるときだけバンドマンになるんだと思う。ドラムに関してもいまだに自分の中で考え続けてるんだろうし、ドラム道をずっと追求していくというか、武道みたいな感じで叩いてるんじゃないかっていう気がしますね。
──ここまでの話を聞く限り、林さんも後藤さんもすごくクレバーで、緻密なプレイをするタイプですよね。
うん。
──でも完成したアルバムはものすごく勢いのあるロックンロールになっている。そこが少し不思議なんですが。
ああ、緻密に考えてるのは準備段階の話なんで。このテンポでいこうとか、このアレンジでいこうって、走る前はすごく考える。でも走り出したら何も考えないし、レコーディングはどの曲も2回くらいしか録ってないですからね。
もうこういう人生でいい
──今のライブでは昔の曲もガンガンやっていますが、違和感を覚えることはないですか?
それは全然ないですね。全部ニュートラルで、何が新しいとか古いとかまったく考えずにやれてます。
──技術的に昔は大変だったけど、今弾くと簡単だったりする曲もありますか?
いや、もうそういう曲ばっかりですよ(笑)。昔は全部それなりに大変だったけど今は全然いける。20代のときは「こんなギターリフ主体の曲、弾きながら歌えるわけねえだろ」みたいな気持ちでやってたから(笑)。でも当時のライブを観た人はその必死さとか綱渡り感をいいと思ってくれてたんだろうっていうのもわかるんです。その気持ちが、今になって自分でもようやくわかるようになった。ギリギリのとこがよかったんだろうなって。
──PLAGUESのデビューからもうすぐ24年、再始動から数えても約7年が経ちます。今後はこのまま続いていくと思っていいんですよね?
うん、その気持ちは歌詞にも出てると思う。もうこれをやってくしかないし、こういう人生でいい。もうこういうもんだって思ってます。
──以前に比べて、50代60代のバンドマンも増えてますしね。
しかもみんなもっと大人っぽい音楽をやるようになるのかなと思ったら意外と同じことやってて、お客さんも同じように跳びはねたりして盛り上がるっていう(笑)。そういうのが面白いなと思って。好きなもんは好きなんだからいいじゃん何歳になっても、っていうね。
──これからのPLAGUESにも期待してます。
もうやめないんで。健康だけは気を付けて続けていきますよ(笑)。
DISC 1
- Fool on the freeway
- Knack
- Guiding star
- Bad gnome
- Free will
- 僕らは何度も
- Snow in the surf city
- 脈拍
- Buttonhole blues
- 名称未設定
- Goodbye doesn't mean we never be together again
- Wild goose chase
DISC 2(bonus disc)
- Guiding star(Acoustic)
- Fool on the freeway(Acoustic)
- Dream eater(Take2)
- Cinnamon hotel(独奏)
- 迷走(demo)
- Fool on the freeway(Instrumental)
- Knack(Instrumental)
- Guiding star(Instrumental)
- Bad gnome(Instrumental)
- Free will(Instrumental)
- 僕らは何度も(Instrumental)
- Snow in the surf city(Instrumental)
- 脈拍(Instrumental)
- Buttonhole blues(Instrumental)
- 名称未設定(Instrumental)
- Goodbye doesn't mean we never be together again(Instrumental)
- Wild goose chase(Instrumental)
PLAGUES "Free will" release one-man tour 2017
- 2017年3月4日(土)
愛知県 池下CLUB UPSET - 2017年3月5日(日)
大阪府 LIVE HOUSE Pangea - 2017年3月11日(土)
東京都 渋谷CLUB QUATTRO
PLAGUES(プレイグス)
深沼元昭(Vo, G)、岡本達也(B)、後藤敏昭(Dr)の3人により1990年に結成。1993年にインディーズより2枚のアルバムをリリースし、1994年にアルバム「シナモン・ホテル」でメジャーデビュー。1996年発売のメジャー3rdアルバム「センチメンタル・キック・ボクサー」がスマッシュヒットを記録する。翌1997年には日比谷野外大音楽堂ワンマンを含む全国16都市のツアーを成功させるが、その年の12月に岡本が突然バンドを脱退。その後は深沼と後藤の2人バンドとして活動を続けるも、2001年5月のインストアライブを最後にバンドとしての表立った活動を停止し、2002年2月に活動“休暇”を発表した。約8年間の沈黙を経て、2010年春に突如活動再開を宣言。サポートベーシストに林幸治(TRICERATOPS)を迎え、5月に都内ライブハウスにて復活ライブを行った。また、このメンバーで当時の楽曲を再レコーディングしたベストアルバム「OUR RUSTY WAGON」を8月にリリースし、2012年10月に11年ぶりのオリジナルアルバム「CLOUD CUTTER」、2013年3月に全曲新録のリテイクアルバム「Swamp riding」を発表。2017年1月にオリジナルアルバム「Free will」を発売した。