やってみたいことをどんどん試せるような居場所

──「ドゥ シュビドゥバイン」のレコーディングはどんな感じでしたか？

今回はファンク寄りな曲を用意したり、私自身今まで試したことのないような歌い方に挑戦したり、いろいろ実験してみたんです。kemeちゃんも別の活動で忙しい状況だったから、けっこうドタバタな感じでしたね。

──前作「タイムスリラー」に引き続き、山口州治さんがエンジニア、ヤマサキテツヤさんがプロデュースを担当されています。

お二人とは「タイムスリラー」のレコーディングが終わったあとも、ものすごく仲よくさせていただいたんです。お互いに言いたいことを言える関係なので、今回はガンガンコミュニケーションが取れてやりやすかったですね。新しく担当される方だと、私は性格上身構えてしまって、ガツンと入っていけないところもあるので。

──今作ではyokoさんが作詞、たまきあやさん、Mr.Garlingtonさん、ヤマサキテツヤさんのお三方が作曲を担当しています。「シュビドゥバイン」「PVPHS」のたまきあやさんはお知り合いですか？

たまきさんはテツヤさんの奥さんです。スタジオにこもるときはご夫婦と一緒に作業しているんですけど、みんなでいろんな音を重ねていきながら曲を作っていきました。

──「アナボリック リアクション!?」「DASH」も、同じようなスタイル？

この2曲は私が大まかなメロディを歌って、テツヤさんにコードを当てはめてもらい、歌詞を重ねていきました。

──「Sweet Dreams」は非常にムーディなバラードで、今作の中でも異色な楽曲になっています。

歌うの、難しかったですね。ピギバンの楽曲って歌詞に英語が多かったり、言葉遊びを大事にしているものが多いんです。「Sweet Dreams」は最初すべて英語で書いていたんですけど、途中からあえて日本語メインに変えました。ベタな恋愛系の歌詞を書くのが恥ずかしくて何年も書いてなかったけど、ひさしぶりに恋愛を題材にしてみたら新鮮でした。昔ほど抵抗感はないですね。

──前作だとゾンビが出てくる「ゾンビーボーイ」だったり、SF的な世界が描かれた「タイムスリラー」はyokoさんが作詞していましたね。

SFとかワケわかんないものは私担当で、恋愛系はakkoちゃん担当なんですよ。

──「DASH」は本作で唯一の全英詞曲です。

「DASH」はライブの出囃子用に使ってたインスト曲に、アメリカの数え歌「Eeny, meeny, miny, moe」の歌詞の一節を引用して、そこから歌詞を膨らませていったんです。これまでのピギバンを聴いていた人からすると、「DASH」が一番ピギバンっぽい曲だと思うかも。今作を聴いてくれた知り合いも「アナボリック リアクション!?」「Sweet Dreams」で「今までのピギバンとは違うな」と思ったら、「DASH」で「やっぱり変わってない！」って感じたそうです（笑）。

──akkoさんがお休みしているこの状況で、あえて実験的な作品にしようと決めたのはなぜだったんでしょう？

ピギバンは今後も誰かが抜けたり、活動をストップせざるを得ない状況になるかもしれないんですけど、そういう局面だからできること、やってみたいことをどんどん試せるような居場所になったらいいなと思っているんです。ときにはkemeちゃんや高橋さんが歌う曲があってもいいだろうし。最初は「全然ピギバンっぽくないよね」って思われるような曲でも、実際にライブで演奏するときにピギバンらしさを打ち出せたらいいし、ジャンルとか関係なくやってみるのがいいのかなって思いましたね。

宇野亞喜良が描く「少女とブタ」

──ジャケットには宇野亞喜良さんによる描き下ろしのイラストが使用されています。

私もkemeちゃんも宇野さんのファンなんです。宇野さんの絵ってカラフルでかわいらしさがあるんですけど、どこかダークというか、引き込まれる怖さがあるじゃないですか。そんなイラストをジャケットに用いることで、作品の世界観がより際立つと思ったんです。宇野さんの絵は少女と一緒に、動物や何かが描かれることが多いんですよね。なので今回は女の子とブタを描いてほしいってお願いしました。

──「タイムスリラー」のジャケットもアメコミふうの絵柄でSFチックな世界観が描かれていて、カッコいいデザインになっていましたよね。アートワークに対するこだわりを感じます。

ピギバン以前の活動では、どの作品のジャケットも私が写ってる写真が使われていたんです。でもピギバンはバンドだし、メンバーが登場しないアートワークにしてみたいって気持ちが強くて。楽曲で私たちに興味を持ってもらえたら最高なんですけど、テレビとかラジオでガンガン流れてるわけじゃないからなかなか難しくて。だからこそ素敵なジャケットでも、バンドに興味を持ってもらえたらなと思うんです。

──リリース後には新たなツアーが始まりますが、今回のツアーはどのような内容になりそうですか？

ひさしぶりに九州に行きますし、北海道では3日間連続でライブを行うし、なかなかボリューム感のあるスケジュールになりました。対バンも今まで何度も競演してくれたTHE STEPHANIESやSu凸ko D凹koiのほか、THE BLUES ONE NIGHTSのような先輩バンドにも出演をお願いしました。ガールズバンドだけ呼んじゃうとお客さんが偏っちゃうし、先輩方の力ばかりに頼るのもちょっと違うなってメンバーと話したんです。今回はそのバランスを大事にしたので、楽しみにしていてください。akkoちゃんがいない状況ではあるけど、来てくれた人たちに「パワーアップしてるよ」って伝えられるライブにしたいですね。