ナタリー PowerPush - PAGE
苦悩と迷いが生んだ新曲「エクスペクト」
感覚的に自分がいいと思わないと進まない
──PAGEくんのラップって、自由なフロウでナチュラルかつタイトに韻を踏みますよね。これは間違いなくあなたの武器だと思うんですね。
ありがとうございます。
──自分のスキルについてはどう思ってるんですか?
でも、別に韻にそこまでこだわっているつもりもなくて。歌ってもラップしてもいいと思ってるんですよね。ラップだけがやりたいことじゃないから。どういう歌い方でもサウンドでもいい。ただ、とにかく感覚的に自分がいいと思わないと曲作りが先に進まないので。納得いくまで突き詰めて、言葉の響きと向き合ってますね。ホントに全部が感覚的なんですけど。だから……韻を踏むのが好きなんじゃなくて、韻を踏まないと気持ちよくないという感じなんです。
──普段から頭の中でラップしてるんですか?
いや、ぜんぜんないっす。曲作るときしか考えないですね。普段は昔言われたヒドいこととかを思い出して、誰かと頭の中でケンカしてることが多いですね(笑)。
──フリースタイルへの興味は?
フリースタイルはもうやんないですね。
──もう、ということは前はやってたの?
学校でやってましたね。でも、クラスのやつらにおちょくられてやめました。「ヘイ、ラップしろよ」とか言われて。
──うざったいな。
ホントそんな感じなんですよ。で、フリースタイルやったら初めはけっこうウケるんですけど、3日くらい経つとバカにされるみたいな。「お前イタいな」みたいなことを言われて。
──気にすることないでしょう。
いや、でも、確かにイタいよなって。それでラップする自分もカッコ悪いって思い始めちゃって。
──誰かに言われたことをダイレクトに受け止めちゃうんだね。
ですね。
──これだけスキルがあるんだから、堂々としていればいいじゃん。
ありがとうございます……。でも、そのときはぜんぜん自信が持てなかったし、言われたことを真に受けちゃう感じで。
ワン&オンリーであればジャンルはなんでもいい
──さっきPAGEくんは曲作りを憂鬱のはけ口って言っていたけど、でもあなたの作る曲はダウナーなモードに引っ張られていないし、むしろ今回の「エクスペクト」然り、ポップな感触に満ちた曲が多いですよね。光を求めているような言葉も散見しているし。
無意識にそれ(光)を求めているんだと思います。普段は「世の中はクソだ」とか「あいつら気持ち悪い」とか、そんなことばっかり考えているんですけど。でも、感覚だけを頼りに曲を作るとこうなるんですよね。
──「エクスペクト」のメロディにしたって、ものすごく開かれていますよね。
そうですね。明るいメロディですよね。でも、自分が作るメロディが明るいこともぜんぜん自覚してなかったんです。これが僕のデフォルトなんで。明るいメロディにしようと思ってこうなってないし、こうやって取材で指摘されて初めてわかったんです。ああ、俺の曲ってけっこう明るいんだなって。リスナーとしては、明るすぎる音楽は好きじゃないんですけどね。明るい曲で聴くのは、アニソンときゃりーぱみゅぱみゅちゃんくらいで。あとは日本語の曲が好きじゃないんです。
──自分も日本語で表現してるのに?
いや、響きのいい日本語詞しか聴きたくないんです。響きが悪いと妙に耳に引っかかって「俺なら絶対にこういう書き方はしない」って思っちゃうので。
──「エクスペクト」のメロディって、ちょっとメロディックパンク的な趣がありますよね。
メロコアはもともと好きで。ルーツではあるかもしれない。「エクスペクト」はラップじゃなくて、歌モノを作ろうと思って書いたんです。アニメ(「銀魂」)のエンディングテーマなんで、歌ったほうがいいと思って。それで一晩でメロディを考えて、次の日にスタジオに入って、ディレクターとエンジニアと先にテレビ用の89秒のバージョンだけ作ったんです。
──2番ではラップしてるけど、これはしたくなったからラップのパートも書いたってことなんですか?
いや、いきなり全部歌にしちゃうと、リスナーからブレてるとか言われるのもヤだなと思って。僕は全編歌でもよかったんですけど。歌モノでもブレない自信はあるので。ガチガチのラップ曲を作ってこいって言われたら作れるし。ただ、ヒップホップの人って言われたいわけでもないし、逆に僕はヒップホップって言わないでくださいって言ってるんですけど。
──じゃあ自分の音楽はどうありたいと思っているの?
うーん……ワン&オンリーであればそれでいいというか。ジャンルはなんでもいいんです。言ったら、J-POPでもいいし。ヒップホップって言ったら、ヒップホップの人たちに失礼ですよって思っちゃうから。
- ニューシングル「エクスペクト」 / 2013年2月13日発売 TOY'S FACTORY
- 期間生産限定盤 [CD] 1223円 / KSCL-2187
- 「エクスペクト」通常盤 [CD] 1223円 / KSCL-2186
期間生産限定盤収録曲
- エクスペクト
- ラストソング
- エクスペクト(TV SIZE)
- エクスペクト(Instrumental)
通常盤収録曲
- エクスペクト
- ラストソング
- からっぽな空の下で
PAGE(ぺいじ)
1995年生まれ、愛媛県松山市出身のラッパー。小学6年生のときに観たケツメイシのライブDVDに感銘を受け、音楽に目覚める。2008年からリリックを書き始め、2011年1月にマイクとインターフェイスを購入し宅録を開始。直後からニコニコ動画に「ニコラップ」と呼ばれるジャンルのラップを投稿し始める。同時期に10代限定のロックフェスティバル「閃光ライオット2011」に応募し、予選を勝ち上がる。同年9月に東京・日比谷野外大音楽堂で開催された決勝戦で見事グランプリを獲得(当時の名義はPAIGE)。「閃光ライオット」での一連のステージを現在のディレクターに見初められ、2012年7月にKi/oon Musicよりメジャーデビューシングル「You topia」をリリースした。2013年2月、2ndシングル「エクスペクト」を発表する。