MAH(SiM)が語る「アウトレイジ 最終章」|信念を貫く男が、命を懸けるとき

信念を貫く人は残っていく

──仲間と協力して目的を達成することだったり、知らぬ間に権力争いに巻き込まれていくことって、形は違えどどんな世界にも起こり得るものだと思うのですが、MAHさんご自身の活動を振り返ってみるといかがですか?

MAH

俺がいるのは音楽業界の中でもさらにバンド社会なので、かなり義理を大事にすると言うか、それこそ人情の世界なので。電話じゃなくて直接会いに行くとか、金の問題じゃないとか、わかるなと思う部分は結構ありました。簡単に寝返るやつがいるのも似てるし(笑)。大友は誰にも曲げられない信念を貫いているから、信頼とはまた別ですけど、誰もが一目置く存在ですよね。やっぱりバンドでもそういう人たちは残っていくし、媚びへつらっていた人たちは自然といなくなっていく。その辺は同じだと思います。

シャウトしたくて作る曲ってないんです

──SiMの楽曲には、一見すると暴力的な表現が多いと思うんです。でも、その中には苦しみや願いなど、さまざまな感情が込められていて。冒頭でMAHさんは「『アウトレイジ』は暴力だけを扱っているわけじゃないと思う」とおっしゃっていましたが、ご自身が表現するうえで気を付けていることなどはありますか?

MAH

俺らの楽曲で言うと、シャウトをしたくて作る曲ってあんまりないんです。怒りを歌う曲だとシャウトが入りやすいってことはあるけど、それもただ闇雲に叫んでいるわけではなくて。例えば何かを悲しんでいることを歌う曲があったとして、悲しみが沸点に到達した結果、そこに必然性があるから叫んでしまうとか、そういうイメージですね。叫びたくて音楽をやっているわけではないし、大事なのはそこじゃないので、「シャウトが嫌い」と言う人にも聴いてもらえる音楽にしたいなとは思っています。監督の真意はわからないけど、「アウトレイジ」に関しても必然性があるからこそのバイオレンスシーンだと感じたんですよね。SiMの音楽や表現とつながる部分があるとしたら、そういうところかもしれないです。

3作観るために6時間使う価値はある

──ところでMAHさんは「アウトレイジ」シリーズ以外の北野映画はご覧になっているんですか?

昔「HANA-BI」を観たんですけど、当時はあまりピンとこなくて。「BROTHER」って誰が出てましたっけ?

──真木蔵人さん、寺島進さんらが出演されてますね。

あ、「ファッキン・ジャップ」!

一同 (笑)。

思い出しました。確か中学生の頃に見たのかな。当時好きだったZeebraさんが「BROTHER」にインスパイアされた楽曲(2001年リリースの「Neva Enuff featuring AKTION」)を発表していたので。さっき「ソナチネ」には「アウトレイジ 最終章」と重なるシーンがあると聞いて、古い作品も観ていきたいなと思って。両作品を観ればきっとより楽しいですよね。イースターエッグ的な裏設定とか、意味のないつながりが好きなんです。

──最後に、これから「アウトレイジ」シリーズにトライする読者にメッセージをいただけますか?

映画「アウトレイジ 最終章」より、左からビートたけし演じる大友、大森南朋演じる市川。

もちろん「最終章」だけでも1本の映画として楽しめますけど、やっぱり1作目から脈々と続いてきた人間関係がわかるとより面白いですよね。まずは今作を観てから、徐々に遡っていくのもいいと思います。どちらにしろ、3作観るために6時間使う価値はあるんじゃないかな。基本的にヤクザ映画とかドンパチが嫌いな俺がシリーズを通して楽しめたので、バイオレンス系が苦手な人でも……そんなにキツいですかね? まあでも、カッターで顔面を滅多斬りにされたりしますからね。痛いですよね(笑)。ただ、それでも観るべきストーリーなので、1作目だけを観た人とかはもったいないなと思います。ちゃんと今作を観ておかないと、締まらないんじゃないですかね。

MAH
「アウトレイジ 最終章」
2017年10月7日(土)全国ロードショー
「アウトレイジ 最終章」
ストーリー

元はヤクザの組長だった大友は、日本東西の二大勢力であった山王会と花菱会の巨大抗争のあと韓国に渡り、歓楽街を裏で仕切っていた。日本と韓国を股にかけるフィクサー張のもとで働き、部下の市川らとともに海辺で釣りをするなど、のんびりとした時を過ごしている大友。そんなある日、取引のため韓国に滞在していた花菱会の幹部・花田から、買った女が気に入らないとクレームが舞い込む。女を殴ったことで逆に大友から脅され大金を請求された花田は、事態を軽く見て側近たちに後始末を任せて帰国する。しかし花田の部下は金を払わず、大友が身を寄せる張会長のところの若い衆を殺害。激怒した大友は日本に戻ろうとするが、張の制止もあり、どうするか悩んでいた。一方、日本では過去の抗争で山王会を実質配下に収めた花菱会の中で権力闘争が密かに進行。前会長の娘婿で元証券マンの新会長・野村と、古参の幹部で若頭の西野が敵意を向け合い、それぞれに策略を巡らせていた。西野は張グループを敵に回した花田を利用し、覇権争いは張の襲撃にまで発展していく。危険が及ぶ張の身を案じた大友は、張への恩義に報いるため、そして山王会と花菱会の抗争の余波で殺された弟分・木村の仇を取るため日本に戻ることを決めるが……。

スタッフ

監督・脚本・編集:北野武
音楽:鈴木慶一

キャスト

大友:ビートたけし
西野:西田敏行
市川:大森南朋
花田:ピエール瀧
繁田:松重豊
野村:大杉漣
中田:塩見三省
李:白竜

白山:名高達男
五味:光石研
丸山:原田泰造
吉岡:池内博之
崔:津田寛治
張:金田時男
平山:中村育二
森島:岸部一徳

※「アウトレイジ 最終章」はR15+作品

SiM(シム)
SiM
MAH(Vo)、SHOW-HATE(G)、SIN(B)、GODRi(Dr)の4人からなる湘南で結成されたレゲエ・パンクバンド。2004年11月に結成され、数度のメンバーチェンジを経て2009年に現編成となる。パンク、ハードコア、スクリーモをベースとする轟音サウンドにスカやレゲエのエッセンスを取り込んだ“レゲエパンク”サウンドで頭角を現す。ライブハウスシーンを中心に活動し、2011年「KiLLiNG ME」のMUSIC VIDEOの視聴回数がインディーズバンドとしては異例の再生回数を記録(現在1600万回以上再生)。同曲を収録したアルバム「SEEDS OF HOPE」もスマッシュヒットを記録した。メジャー10社以上が獲得に乗り出す中、ユニバーサル・ミュージックをパートナーに選び、2013年4月に4thシングル「EViLS」、10月に3rdフルアルバム「PANDORA」を発売。その後も着実にリリースを重ね、2015年11月には日本武道館公演も完売させた。2016年4月には4thフルアルバム「THE BEAUTiFUL PEOPLE」を発売。同アルバムのリリースツアーでは全国26公演すべてがソールドアウトとなる。野外開催2年目となる自身主催イベント「DEAD POP FESTiVAL」を大成功に収め、10月にツアーのグランドファイナルとして行った神奈川・横浜アリーナでのワンマンライブも即日の完売となった。2017年3月から4月にかけて実施したワンマンツアー「THE BEAUTiFUL PEOPLE TOUR -season II- "ONEMAN SHOWS 2017"」では全国10カ所で28000人以上を動員。7月には「DEAD POP FESTiVAL 2017」を主催した。

2017年10月6日更新