NOISEMAKER主催のイベント「KITAKAZE ROCK UNITY」が5月30日にジャパンミュージックシステムのYouTube公式チャンネルで生配信される。
北海道の魅力を全国に伝え、全国の音楽を北海道に届けるべく、2018年より主催フェス「KITAKAZE ROCK FES.」を行ってきたNOISEMAKER。彼らは2020年に初めて野外でこのフェスを開催する予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を鑑みて中止を決断。そのリベンジ公演として、2021年5月29、30日に北海道・札幌芸術の森 野外ステージで「KITAKAZE ROCK FES.2021」を開催すべく準備を進めていたが、北海道内への緊急事態宣言の発令などを受けて再び中止に。本公演には主催のNOISEMAKERをはじめ、coldrain、SiM、MONOEYES、ROTTENGRAFFTYら計15組の出演が予定されていた。この状況を受け、次回の「KITAKAZE ROCK FES.」に向けてNOISEMAKERが企画した配信イベントが「KITAKAZE ROCK UNITY」だ。
音楽ナタリーではNOISEMAKERのAG(Vo)、2020年2月に愛知・ポートメッセなごやで初の大型主催フェス「BLARE FEST. 2020」を成功に収めたcoldrainのMasato(Vo)、2010年にフェス「DEAD POP FESTiVAL」をスタートさせ、2015年からは野外で本公演を実施しているSiMのMAH(Vo)に、フェス主催をするうえでの苦労やコロナ禍でフェスを行うことに対しての思いを語ってもらった。なお、この取材は北海道内へ緊急事態宣言が発令され「KITAKAZE ROCK FES.2021」中止が決定する前の4月下旬にリモートで実施されたが、この記事では3人のトーク内容をそのままに掲載する。
取材・文 / 西廣智一
同世代で珍しい音を奏でるバンド
──まず3人の出会いについて聞かせてください。AGさんはMAHさん、Masatoさんに初めて会ったときのことを覚えていますか?
AG(NOISEMAKER) もちろん。SiMと初めて会ったのは確か2009年ぐらい、札幌のCOLONYだったと思います。当時、札幌で「KEEP IT LOUUUD!!」というラウド系のバンドが出演するオールナイトのDJイベントがありまして、そこで初めてSiMと出会って対バンして。僕らがライブをしているとき、MAHがフロアでSHOW-HATE(SiM)か誰かに耳打ちをしているのが見えて、「何しゃべっているんだろう?」と思ったことをよく覚えています。で、ライブが終わったあとに「ライブよかったよ。(電話)番号教えてよ」というところから付き合いが始まって。同世代でそう言ってくれるバンドも少なかったので、うれしかったですね。
MAH(SiM) NOISEMAKERのことは「KEEP IT LOUUUD!!」の前に、YouTubeに上がっていた映像を観てカッコいいなとメンバーと話していたので、ライブを観るのをすごく楽しみにしていたんですよ。たぶんそのときに耳打ちしていたのは、「やっぱりカッコいいね」ということだったんじゃないかなと思います。そのこと自体は記憶にないですけど(笑)。
AG まあそうだよね(笑)。
MAH NOISEMAKERみたいなニューメタル / ラップコアバンドは年上の先輩たちには多かったんですけど、だんだん減ってきたタイミングでNOISEMAKERが登場したので、同世代でそういう音楽をやっているバンドが珍しくて。すごくカッコよかったなというのを覚えていますね。
AG で、coldrainはそのあとかな、同じくCOLONYでのツアーで。そのときにMasatoがすごく悔しがっていたことが記憶に残っていて。特にSiMとcoldrainはライブがすごく衝撃的だったので、よく覚えています。
Masato(coldrain) あの頃はどのライブも悔しかったので、それは通常運転だったと思います(笑)。SiMが先にNOISEMAKERと会っていて、AGは1つ年上なんですけど「MAHともタメ口って決めたし、もうタメ口でいいよ。仲よくやろうよ」と言われたのをよく覚えていて。当時のAGは今とは違って、クリクリ頭でロック畑にいるラッパーみたいな見た目だったのがすごく印象的で。今よりもっと、何か隠しているな、みたいな雰囲気を感じたかな。
MAH (笑)。
Masato NOISEMAKERは当時あまり日本にいない音を出すタイプのバンドだったし、ガッツリ洋楽から影響を受けたバンドが札幌にもいることに衝撃を受けて。洋楽に影響を受けているバンドは僕らの周りにもたくさんいたんですけど、NOISEMAKERが目指している洋楽っぽさというのはそことは全然違って。みんなと違う憧れのバンドをチョイスしているみたいな雰囲気があって、それを自分たちらしく消化したスタイルがカッコよかった。だから、初見の頃からずっと一緒にやっていきたいなと思っていましたね。
──これまでも3組が共演する機会は何度かあったかと思いますが、個人的に印象に残っているのが2013年3月に行われた「MONSTER ENERGY OUTBURN TOUR 2013」大阪BIG CAT公演でして。
MAH・Masato あー。
MAH 「OUTBURN TOUR」はSiMとcoldrainがダブルヘッドライナーで、各公演に好きなラウドバンドを呼ぼうというツアーだったので、Masatoも俺もそれだけNOISEMAKERと一緒にやりたいと思っていたんですよ。スリーマンはそれ以降、ほとんどないかもしれないですね。
Masato うん、やってない気がする。
AG 俺、そのときドラマの「半沢直樹」についてのMCをして、めっちゃSIN(SiM)に怒られたの覚えてるわ(笑)。
Masato なんだそれ(笑)。
AG ドラマのオチを言っちゃったらしくて、SINに「俺まだ観てないんだぞ!」って楽屋で文句を言われたのを覚えてますね。
Masato それは最低だ(笑)。
チャンスをくれたSiMとcoldrainへの恩返し
──SiMとcoldrainに「KITAKAZE ROCK FES.2021」への出演をオファーした理由を聞かせていただけますか?
AG 間違いなくリスペクトしている2バンドですからね。彼らと出会う前は田舎の小さいコミュニティで活動していて、あまり北海道から出たこともなかったから「うちみたいなバンドは、日本にはほかにいないんだろうな」と思っていた。そんなときに出会って衝撃を受けた2バンドなんです。今までもいろんなチャンスを、フェスやツアーを通じてもらってきたし、俺らがちょっとずつ大きくなれたのはSiMとcoldrainの力もすごくあると思うので、ちょっとクサイですけど恩返しという意味も含まれていて。自分たちのターニングポイントや大事なタイミングに絶対に呼びたいバンドだったので、今回声をかけさせてもらいました。
──本来なら昨年、初めて野外フェスという形で開催する予定でしたが、コロナの影響で中止に。今年は開催日を2日に増やして臨むということで、AGさんやバンドの皆さんの思いがより強まっているんじゃないかと感じました。
AG 去年はコロナという、今まで経験したことのないものの影響でツアーも3回ぐらい延期して、ちょっとよくわからない感じになってしまって。まだまだ情勢も安定していませんが、それでも今「KITAKAZE ROCK FES.」を開催できたら喜んでくれる人も多いんじゃないかなという思いもあるし、ライブ業界がいい方向に向かうきっかけにならないかなという思いもすごくあります。
──「KITAKAZE ROCK FES.」には「全国の音楽を北海道に届ける」という大きなテーマが掲げられていますし、こういう状況下でもフェスという形で北海道に音楽を届けることができるのは、確かに大きな変化のきっかけにもなりそうですよね。
AG そうですね。ちょっと前に新しくなった札幌のKLUB COUNTER ACTION(参照:札幌KLUB COUNTER ACTIONが一時閉店)に行ってKO(SLANG)さんとも話したんですけど、「最近、若くていいバンドっていますか?」と聞いたら、バンドマン自体が少なくなってきているみたいで。それもあって、北海道の若い子たちが楽器を持ってバンドをやりたいという流れをもう一度起こせないかなという思いもあるんですよね。
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出演者、お客さんの両方に対してケアが必要